いまだ再開してない地域も 「3才児健診は集団生活に入る前に絶対に受けてほしい健診」専門医

1才6カ月健診から約1年半後にあるのが3才児健診。「1才6カ月健診で問題がなかったし、新型コロナウイルスの感染が怖いから、3才児健診は受けなくてもいい?」と考えているママ・パパはいないでしょうか。しかし、みくりキッズくりにっく院長の本田真美先生は、「3才児健診は集団生活に入る前に絶対に受けてほしい健診」だと言います。同クリニックでは、新型コロナウイルスの拡大防止のために乳幼児健診を中止した自治体に住む子どもを対象に、2020年5月5日から乳幼児健診を無償で実施。それほど、乳幼児健診を重視しているのです。そこで本田先生に、3才児健診で診るポイントと、3才児健診の大切さについて聞きました。
3才児健診は病気や運動機能の検査に加え、子どもの自立と社会性も診ます
――みくりキッズくりにっくでは、3才児健診はどのように行われていますか。
本田先生(以下敬称略)3才児健診は「集団生活で苦労しないためにフォローすべきこと」を明らかにする機会でもあります。病気の発見と発育・発達の様子を確認するために、以下のような検査を行います。
・身長、体重、頭位、胸囲の測定
・心音・呼吸音、背骨が曲がっていないかの確認
・特別なカメラで弱視・斜視のチェック
・医師が小さな声で伝えた言葉を正確に聞き取れているか、イラストを使って確認
・医師の前でジャンプや片足立ち、でんぐり返りをしてもらう
・イラストを見せながら「頭にかぶる物はどれかな」「書く道具はどれかな」などと尋ね、指さしで答えてもらう(物の名称と使い方の理解度)
・大きさの違う円が描かれた絵を見せて「どっちが大きい?」などと聞いて答えてもらう(物の大きさの理解度)
・青、緑、赤、黄が書かれたボードを見せ、「青はどれ?」などと聞いて指さしてもらう(色の識別)
・医師が見本を示したように積み木を詰めるか
・紙に円を描けるか
・自分で靴を履けるか
――3才児健診は診るべきポイントが非常に多いように思います。3才児健診で重視しているのはどのような点でしょうか。
本田 3才児健診の大きな目的は、子どもが幼稚園や保育園といった家庭以外の場所で集団生活を送る準備ができているかを、健康面、生活面での自立、社会性の発達といった点から総合的に判断することにあります。
3才児健診では、医師や保健師などが子どもに直接働きかけ、その指示に従って子どもが行動したり答えたりする様子を観察します。指示した事柄をできるかどうかに加え、大人が指示したことを理解し、それに添った行動が取れるかも重要な観察ポイントになります。
つまり、健診を受けること自体が、子どもの発育・発達の様子を判断する材料となるのです。これが、赤ちゃんの様子をママやパパから聞いて判断する、1才6カ月健診までの健診との大きな違いです。
――子どもの性格によっては、普段はできていても小児科医などの前だと緊張してできないことがあります。その場合はどう対応されていますか。
本田 健診の場だからできないのか、本当にできないのか、ママやパパに確認します。普段はできているのであれば「様子を見ましょう」ということもあります。しかし、「家庭では問題ないのに集団の場ではうまくできない」のは、集団生活を送る上で子ども自身が困ることになりますから、注意深く見ていく必要があることも説明します。
――3才児健診でなんらかの発達の遅れや障がいが発見された場合、ママやパパはどう対応すべきでしょうか。
本田 子どもはこれから幼稚園、小学校、中学校と、親から離れて1人で社会生活を送ることになりますよね。発育・発達の専門家は、その子が社会生活を送るために必要なアドバイスとフォローをしてくれる存在。「子どもが本格的な社会生活を始める前に、サポートを受けられることになってよかった」と前向きに考えましょう。
そして、専門家とママやパパがタッグを組んで、子どもの自立と社会性の発達を促していくことが大切です。
3才児健診の次に5才児健診を設ける自治体も増えている
――みくりキッズくりにっくでは今年5月から、乳幼児健診を自粛・延期・中止している自治体に住んでいる子どもを対象に、生後2週間健診、1カ月健診、3~4カ月健診、3才児健診を、クリニックの全額負担(実費換算でおよそ6000円)で実施しています。その目的について教えてください。
本田 これらの健診は、赤ちゃん・子どもの発育・発達を知るうえで非常に重要なもの。受け損なうことで、病気や発達障がいなどの発見が遅れることを避けたかったのです。
また、新型コロナウイルスへの感染の不安から医療機関の受診控えも増えている時期でしたから、育児不安や虐待のリスクが増えることへの危惧もありました。そのため、無償で乳幼児健診を行うことにしたんです。
ウィズコロナの時代に子どもが健やかに成長するには、今まで以上に健診が重要な役割を持つはずです。そのための取り組みが、小児医療には求められていると考えています。
――3才児健診の次は就学時前健診となり、3年近く健診がありません。その間の発育・発達が気になる場合は、どうしたらいいですか。
本田 ささいなことでも気になることが出てきたら、かかりつけの小児科医や地元の保健センターなどに相談しましょう。何事も早期のケアが大切です。
――最近は5才児健診を行う自治体もあるようですね。
本田 3才児健診から就学時健診までの期間は、子どもが著しく成長する時期。視聴覚の異常、集団生活における行動面や発達の偏り、お子さんの性格やクセ、身長体重などの発育について、3才児健診では診断にいたらなかったけれど、就学時健診だと早期対応の機会を逃してしまうケースも少なくありません。
そのため、5才児健診を行う自治体が少しずつ増えてきています。自治体で行っていない場合も、かかりつけの小児科で5才児健診をしてもらうことが可能です。
3才児健診のあと、子どもの発育・発達で少しでも不安を感じる部分が出てきたら、就学時健診まで待たずに小児科医などに相談しましょう。そして必要な場合は適切なサポート受け、子どもが小学校生活で困らないよう、準備をしてあげることが大切です。
お話・監修/本田真美先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部
3才児健診は、子どもの自立と社会性の発達を診る、重要な健診だということがわかりました。コロナ禍でもきちんと健診を受け、必要な場合は専門家のアドバイスに従い、集団生活に入る子どもを応援することが大切ですね。
本田真美先生(ほんだまみ)
Profile
みくりキッズくりにっく院長。医学博士、小児科専門医、小児神経専門医、身体障害者福祉法第15条指定医。東京慈恵会医科大学卒業。国立小児病院にて研修後、国立成育医療研究センター神経科、都立多摩療育園、都立東部療育センター勤務、ニコこどもクリニック院長を経て現職。