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90歳の産婦人科医 堀口雅子先生 「自分が預けたいと思える保育園」を作った育児時代

90歳の現役産婦人科医、堀口雅子先生。堀口先生が医師をめざした昭和30年代前半は、医学部に在籍していた女子学生は男性60人に対して3人。その後進んだ医局や勤務した病院でも、まだまだ女性医師は珍しい存在だったそうです。しかし、「医師になりたい」という強い意志、そして持ち前の明るさとバイタリティーで、さまざまな困難を乗り越えて来ました。

現在は週に1度の診察以外の時間は、英会話やバイオリン、健康のための体操など若いときからずっとやりたかったことに時間を費やしているそうです。

インタビュー後編では、前編に引き続き、子どもをもちながら働き続けられるようにと、勤務していた病院に、「自分が預けたいと思える保育園」を作ったというエピソードを中心に、お話を進めます。

2児の母として働きながら

——— 38歳でご結婚、39歳と42歳で出産されたそうですね。

(堀口先生 以下敬称略) 夫の貞夫は、仕事をする社会とのつながりを持ち続ける女性と結婚したいと考えていたようね。実際に彼は、家事も子育ても夫婦で一緒にするという覚悟をもっていたから結婚したけれど、もし女性だから、母親だから、家事や子育てをするのが当たり前という考えの人だったら、きっと蹴っ飛ばしていたと思うわ。たまたま運良くそういう人に巡り会えたということね。そして運良く妊娠、二人の子どもにも恵まれたわ。最初の子どものときは、7カ月になるまでは休職しましたよ。


——— 当時勤務されていた虎の門病院に医師や看護師さんのための保育園を作られたそうですね。

(堀口)  当時勤めていた虎の門病院で、ドクターや看護師さんが中心になってみんなで相談して、事務局に交渉して……。「自分が預けたいと思える保育園」を作ったのよ。私だけでなく、あとに続く女性たちが、子どもをもちながら働き続けられるようにね。時代にも後押しされたと思うわ。

結婚して、妊娠、出産するからには、その子には幸せでいてほしいじゃない。子どもは大勢の中で育った方がいいですからね。子どもがひとりかふたりの家庭でも、保育園に行けば同じ年代の仲間がたくさんいるでしょ。そこで人との付き合いを覚えていくのね。

仕事をしないなんて考えたこともなかった

——— 子どもを預けて働くことに抵抗はありませんでしたか?

(堀口)  私は自分の人生で「仕事をしない」など、一度も考えたことはないわ。親である私が大らかに愛情を注いで、交流ができて、子どもが不安感を抱いていないのであれば、他人から何と言われてもかまわないでしょ? 肌と心でコミュニケーションがとれていればいい。そう思ってきたわ。

それをサポートするのが夫であり、父母であり、保育園であり。女性が仕事を続けるには、そういう二重三重のサポート、そして子どもの居場所が必要なのね。でも一番大切なのは、自分が何ために仕事をするのか、子どもを育てながらでも仕事を続けたいのか、その理念が自分のバックグランドに力強く流れていたこと。だからどんなことがあっても乗り越えて来られたのだと思う。

——— 働きながら子どもを育てるには、理念と人、場所が必要だということですね。

(堀口)  そうね。私にとって働くことは当然のことだったし、夫や母、保育園もサポートしてくれましたから。子どもって外でトラブルがあったときに家庭に逃げ込んで、安心して、回復してまた外に出かけていくものだと思うの。だから親は子どもの居場所をしっかり作っておくことが必要ね。

子どもにとって安心感をもてる場所であれば、どんな場所でもだいじょうぶ。小さな子どもが外から帰ったとき誰もいない場所は精神的にちょっとキツいわね。

今ではもう笑い話だけれど、子どもがまだ保育園に通っているころ、うっかり子どもを引き取るのを忘れて帰って来てしまったことがあったの。家の前に夫の車があって、「あなたが引き取るんじゃなかったの?」って。あわてて迎えに行ったら、息子は保育園の園長先生とそれは楽しそうに遊んでいたわ。彼にとって保育園は安心感のもてる場所だったのね。

——— 堀口先生はまさに働く母の先駆者だったんですね。

(堀口)  昔に比べて最近は、結婚や出産を経ても女性が仕事を続けることが当たり前な時代になっているわね。私が子育てをしていた時代は、まだまだ仕事をする女性は少なかったけれど、病院は看護師さんがいなければ成り立たない、女性が働くことを否定できない職場だったから、ある意味仕事を続けるのに良い環境だったのかもしれないわね。

もうひとつ恵まれていたのは、職場の上司の懐が深かったことね。女性が仕事をしたり、結婚したり、出産したり、子育てしたりするなど、世の中における女性の在り方、生き方を、私を見て、知って、こうしたほうがいい、こうしなくてはいけないと、考え方を変えていってくれましたからね。

——— そして90歳になられた今、お仕事だけでなく人生も謳歌されているように見えます。

(堀口)  今は、子どものころからずっとやりたかったバイオリンを習っているのよ。若い人たちと一緒に発表会で演奏することもあるわ。そうそう、この間、私が取り上げたあかちゃんが大人になってピアノの先生になっていて、「そのうちに一緒に演奏しましょう」って声をかけてくれたのよ。うれしかったわ。大変なことや嫌なこともあったかもしれないけれど、今はもうみんな忘れちゃったわ。

毎日を楽しく元気に生きるためには、「忘れること」が秘訣かもしれないわね。

文・写真/米谷美恵


取材を終えて
今回の取材のなかで、雅子先生は「子どもは、外でトラブルがあると家庭に逃げ込んで、安心して、回復してまた外に出かけていくもの」と話されています。仕事を通じて始まったお付き合いもずいぶん長くなりましたが、筆者にとっては堀口先生ご夫妻がまさにそんな場所でもす。そして帰り際に必ず「トイレは大丈夫?」。この歳になってそんなことを聞いてくれる人は他にはいません。ちょっと恥ずかしくもあり、うれしくもあり、その言葉に元気をいただきながら、いつもおうちを後にしています。雅子先生、これからもどうぞお元気で、後に続く私たちの道しるべになってください。

堀口雅子先生(ほりぐちまさこ)

趣味で始められたバイオリンの発表会にて

Profile
婦人科医。1930年(昭和5年生まれ)の90歳。群馬大学医学部卒業後、東京大学医学部産科婦人科教室、長野赤十字病院他を経て虎の門病院産婦人科医長。現在も週1回、女性成人病クリニックにて診療を続けている。一般社団法人性と健康を考える女性専門家の会名誉会長。2003年エイボン女性功労賞受賞。夫は産婦人科医で元愛育病院院長の堀口貞夫氏。

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