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重い病気の子と家族を支える宿泊滞在施設がコロナで運営困難に…集まった支援の声に感謝

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本特集「たまひよ 家族を考える」では、妊娠・育児をとりまくさまざまな事象をお届けし、誰ひとりとりこぼすことなく赤ちゃん・子どもたちの命と健康を守る世界のヒントを探したいと考えています。今回は病気のために長期入院を余儀なくされた子どもたちとその親、そして患児家族の力になりたいと活動している人々について、2回にわけてお届けします。

後編となる本記事では、コロナ禍においても継続して患児家族を支援している宿泊滞在施設「リラのいえ」の活動状況を紹介。「リラのいえ」施設長の佐伯トシコさんと、運営団体であるNPO法人スマイルオブキッズ事務局職員の谷畑育子さんの話を通じて、病気の子どもとその家族をとりまく現状を見ていきます。

*前編 「わが子と会えなくてつらい」コロナ禍で長期入院している子どもたちと親の今
*後編 重い病気の子と家族を支える宿泊滞在施設がコロナで運営困難に…集まった支援の声に感謝(本記事)

病気と闘う家族を支援する、「リラのいえ」

リラのいえ(写真提供:NPO法人スマイルオブキッズ)

横浜市にある神奈川県立こども医療センターから徒歩5分の場所に、ファミリーハウス「リラのいえ」はあります。神奈川県立こども医療センターは、日本でも数少ない小児がんの拠点病院。高度な治療を求め、全国から患児が集まります。その患児に付き添う家族の精神的・経済的負担を少しでも軽くしたいと開設されたのが、宿泊滞在施設「リラのいえ」です。1泊1500円から泊まることができ、長期滞在やきょうだい児の預かりが可能なうえ、病気の子を持つ親同士の交流の場にもなっています。

このコロナ禍において、「リラのいえ」もまた、感染防止対策に奔走する日々を送っていました。施設長の佐伯さんは、こう話します。
「開設以来、リラのいえは24時間365日稼働し、最低でも1名はスタッフが常駐するスタイルで運営してきました。しかし、コロナウイルスの感染拡大で、体制を変更せざるを得ませんでした。人との接触機会を出来るだけ減らすため、緊急事態宣言中は、夜20時から朝9時まで事務所にいる当直スタッフを常駐させない決断をしたんです。開設して12年で初めての出来事です。苦渋の決断でしたが、リラのいえを完全に閉めてしまう事態だけは避けたかった。必要としている方がいる限り、継続して運営したいと考えました。緊急事態宣言が出る前の2~3月も、公共交通機関を利用するボランティアスタッフは活動を中止し、近所に住んでいる方のみで活動。4~5月中は、ボランティアスタッフ全員に休んでもらい、理事長と事務局長、施設長の佐伯、職員の谷畑の4名が交替で運営しました。緊急事態宣言が解除されたあとは、段階的に元の運営に戻し、現在は当直も再開しています」

7月には、ボランティアスタッフで集まり、オンラインでの会話システム(Zoom)を活用したお話し会を開いたといいます。
「ボランティアスタッフは高齢の方も多いので、Zoomを使うのは難しいかなと心配もしましたが、せっかくの機会なのでと、思いきって企画したところ、15名が参加してくれました。『ボランティアを再開できたことがうれしい』『ボランティア中に、利用者さんの背中に手をあてて励ましていいのか迷う』『コロナが感染拡大するなかで治療を継続していいか、悩んでいる親御さんに、どう答えたらいいか……』など、ボランティア活動を通して感じた率直な思いや悩みを交換し合いました。施設長の佐伯が『コロナがあってもなくても、親御さんはさまざまな悩みを抱えている。‟お母さんの選択は間違いじゃないよ”って言ってあげてもいいんじゃないかな』と話し、ボランティアスタッフがその言葉を心に沁み込ませるように聞いている場面もあり、お話し会をやってよかったと感じました」(谷畑)

施設長の佐伯さんは、緊急事態宣言中にボランティアスタッフの活動を休止したことで、「みなさんのモチベーションが下がるかもしれない。辞める人も出てくるかもしれない」と心配されていたそうです。しかし、その予想は見事に外れます。むしろ、ボランティアスタッフは「リラのいえに行きたい」「また利用者さんのために活動をしたい」気持ちをあたためていたようです。リラのいえの存在意義や活動の大切さを、再確認する時間にもなりました。

「がんばってください」――寄付の振込用紙に書かれたメッセージ

2018年夏に開催されたバーベキューイベント(写真提供:NPO法人スマイルオブキッズ)

患児家族の経済的負担を減らすため、リラのいえでは、宿泊料金を安価に設定しています。そのため、施設の運営を支えているのは‟寄付”が中心です。しかし、現在は寄付金を募るイベントの開催が難しい状況。リラのいえを運営するNPO法人スマイルオブキッズが毎年7月に開催していた、恒例のチャリティコンサートも今年は中止となりました。

「リラのいえは、利用料に頼らないぶん、寄付が生命線。イベントを開催できない今、寄付は相当減ってしまうだろうと覚悟していました。ただ、年2回発行している会報誌に、これまでは書かずにいた『寄付をおねがいします』の一文を添えたところ、これまで以上に、寄付をしてくださる方が増えたんです。振込用紙の備考欄に『こんな状況ですけれど、がんばってください』『リラのいえに感謝しています』とメッセージを書いてくださる方も多くて。いま、コロナで誰も彼もが大変な状況ですよね。社会全体に大きな影響がでているなかで、病気の子どもや家族に心を寄せてくださる方がこんなにいる。振込用紙のメッセージを見るたびに、あたたかな思いを感じ、涙がでそうになります。なかには消毒液やマスク、ハンドソープ、お米、野菜などを送ってくださる方もいます。消毒液やマスク、ハンドソープは手に入るようになったとはいえ価格が高くなっているのでとても助かりますし、お米や野菜も、利用者でありがたくいただいています」(谷畑)

ウィズコロナの日々を耐え忍ぶ病気の子と、その家族

職員の谷畑さんは、今から8年前、まだ4歳だった長女を小児がんで亡くしています。谷畑さんは取材最後に、ぽつりぽつりとご自身の思いを話してくださいました。

「娘が病院で寝たきりの状態だったのが、8年前の3~5月。その前は、娘の喜ぶことをしようと、想い出づくりのために、いろいろな場所に行っていました。家族旅行で沖縄にも出かけて。ちょうどコロナの感染拡大の時期と季節が重なっているから、思いだしてしまうんです。もしも、あの1日1日がかけがえのない大切な時間だったときに、‟どこにも行けない”“面会すら出来ない”状況になっていたら、コロナが憎いどころの話では済まなかっただろうって。でも今、そのような苦しい状況に置かれている子どもや家族は、確実にいます。だからこそ、1日でも早く、この感染症が終息するように感染防止対策に努めなければなりませんし、病気の子どもや家族のために出来ることをしたいと考えています」。

病気や障害と闘いながらウィズコロナの日々を耐え忍んでいる、子どもや家族たちがいる事実を、一人でも多くの方に心に留めてもらえたらと、筆者自身も切に願います。また、感染拡大に留意しながら面会時間の制限を延ばしたり、子どもたちが少しでも安心して楽しく生活できるように工夫したりしてくださっている医療・福祉・介護施設の方々の努力も見聞きします。リラのいえが、ボランティアスタッフでオンラインのお話し会をしたり、施設に消毒液やマスクをいち早く送ってくださる方がいたりしたように、今、私たちにできる‟寄り添い”とは何かを考え、小さくても行動に移していくことが大切なのだと感じます。


文/猪俣奈央子

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