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夏風邪が消えた?新型コロナウイルス流行でほかの感染症に変化が【小児科医】

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子供と紅葉
monzenmachi/gettyimages

いつもの年なら、これからインフルエンザ流行シーズンです。「新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの二つが一度に流行るツインデミックス(同時流行)が起きたら大変なことになると、医療現場でも話題沸騰中」と太田先生は話します。「小児科医・太田先生からママ・パパへ、今伝えたいこと」#1

日本と季節が逆のオーストラリアでは、インフルエンザ激減

日本と季節が逆の南半球のオーストラリアでは、すでにインフルエンザ流行シーズンが終わりかけているはずなので、流行状況がわかると日本の参考になるだろうと考えて調べてみました。そうしたら、なんと今年のオーストラリアの冬のインフルエンザ発症者数は激減して、流行という状況にさえならないまま春を迎えたとわかりました。
まだちゃんとした検証は出ていないようですが、ロックダウンをしっかりしたこと、過去最多数のワクチンを生産して強く接種をすすめたこと、ソーシャルディスタンスを厳守したこと、海外からの入国者制限を徹底したことなどが理由として挙げられています。どんな理由であっても、これから冬を迎える日本でのインフルエンザ流行も小規模で済むといいなと思います。

2020年コロナ禍の中の夏、日本でも夏風邪が激減

実は、日本でも例年夏に流行る病気の様相が一変していました。夏に流行するウイルス感染症をまとめて夏風邪といいます。具体的には、アデノウイルスによる咽頭結膜熱や、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスによる手足口病やヘルパンギーナなどがそれにあたりますが、今年は夏風邪がほとんど流行らないうちに秋になりました。昔から、一つのウイルスの病気が大流行するとほかのウイルスの病気は抑制されるという説はあり、そうだったのかもしれません。
手足口病は毎年6月~8月に流行のピークを迎えます。とくに集団生活をする子どもがかかりやすく、発熱や口内炎の痛さでつらい目にあいます。当院では、今夏に限ってひと夏を通じて手足口病をほんの数人見かけただけ、咽頭結膜熱はまったくお目にかかりませんでした。
新型コロナウイルス流行に夏風邪も加わるのかと心配しましたが、肩透かしを食らったような気分ですが、ホッとしています。

今行っている感染症対策を続ければ、いろいろな感染症が予防できるのかも

複数のウイルスは同時には流行しないという説のとおりだったのかもしれませんが、それだけではないような気もして今年の状況を振り返ってみました。4月と5月、幼稚園は全面休園、保育園も登園を自粛したお子さんが多く、登園者は3割くらいだったといわれる異例の状態でした。この効果なのか、毎年見られる4月入園直後の体調不良者が激減。ステイホームの子どもたちの多くも健康に過ごせました。家庭や園でも熱心に手洗いをして、外出時も密にならないようにとソーシャルディスタンスを守ったことが好影響を与えたのでしょうか。年少者はマスクをつけなくても大丈夫でした。
6月の登園再開後の夏風邪本番の時期も、手足口病も咽頭結膜熱も、去年は流行ったRSウイルス感染症もほとんど見かけないで済みました。これらの病気は、飛沫感染対策だけでなく接触感染でもうつるので、消毒の徹底は接触感染対策としても有効だったのでしょうか。もしそうなら、新型コロナウイルスの流行が治まっても、今行っている感染症対策を継続すると、幼稚園でも保育園でも、今後は、こういった感染症の発生を抑えることができるのかもしれないと思ってしまいます。

すでにあるワクチンを確実に接種して、VPDから赤ちゃん・子どもを守りましょう

今後、新型コロナウイルスの流行がどうなっていくかが気になります。数年後にはこのウイルスが軽い風邪症状しか出さないウイルスに変化することも予想されていますが、今いちばん待ち望まれているのは、接種すれば免疫が獲得できる安全で効果の高いワクチンの完成でしょう。すでにワクチン接種を始めた国もありますが、本当に安心して使える製品かという検証には、もう少し時間がかかるでしょう。
今のような流行が数年続いたら、既存の感染症の発生状況もさらに変わっていくかもしれません。今できることは、すでにあるワクチン(麻疹、風疹、水痘、おたふくかぜ、インフルエンザなど)を使ってVPD(ワクチンで防ぐことができる病気)から身を守っておくことが最優先。接種控えをしている場合ではありません。まだ接種が済んでいないものがないか、母子健康手帳で確認しましょう。

今春以降のコロナウイルス以外の感染症発生状況を振り返ってみると、今の感染予防対策の効果で、今まで流行っていた感染症、とくに接触感染で広がるウイルス対策になっているような気もします。あまり負担がなく継続可能な対策は、これからも普段の生活に取り入れていくといいのかもしれません。

監修・文/太田文夫先生

構成/ひよこクラブ編集部

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