ママ・パパ必見!アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関係【アンケート参加者募集中】
昔より子どもの食物アレルギーが増えているのはなぜなのか、数多くの研究がなされた結果、アトピー性皮膚炎との関係がわかってきました。アレルギーの最新情報について、アレルギーの専門家である大矢幸弘先生に聞きました
■お話・監修
ここ10年でわかってきた、食物アレルギーへの誤解
子どもの食物アレルギーは、21世紀のスタートと同時に増え続けています。たとえば「アレルギー疾患に関する3歳児全都調査」(※)のデータによれば、食物アレルギーがある、と答えた3才児は1999年には7.1%だったのが、2014年には16.7%と2倍以上になっています。
――なぜ、近年食物アレルギーが増えているのでしょうか?
大矢先生(以下敬称略)大きく2つの要因が考えられます。1つは、赤ちゃんに乳児湿疹(にゅうじしっしん)があっても、そのうち治る、ステロイド剤を赤ちゃんに塗らないほうがいい、という考えが広まっていたこと。もう1つは、食物アレルギーの発症率が高いものは離乳食で食べさせるのを遅らせたほうがいい、という情報に頼る人が多かったことにあります。
――そういった考えは間違っていたということでしょうか?
大矢 はい。ここ10~20年の間に、アレルギーの原因に関する常識は180度ひっくり返りました。今、アレルギー研究の基盤となっているのが「二重抗原曝露仮説(にじゅうこうげんばくろかせつ)」というものです。アレルギーの原因となる物質はアトピー性皮膚炎など湿疹のある皮膚から入っていく、さらに食物アレルギーになりやすい食物を食べさせるのが遅ければ遅いほどアレルギーになりやすい、という仮説です。イギリスで2003年に発表されて以降、この仮説の正しさを示す証拠が増えています。
アレルギーマーチは皮膚から始まる
――アトピー性皮膚炎も増えているのでしょうか?
大矢 高度経済成長期の後半から急増し、現在は少し落ち着きを見せていますが、発症する赤ちゃんの割合が減ったわけではないようです。まだ原因は解明されていませんが、世界中の国で、家庭の電化が進むと増えるという現象がみられるので、ライフスタイルの変化と密接な関係があると思われます。
――湿疹はほうっておいてはいけないということでしょうか?
大矢 アトピー性皮膚炎は、食物アレルギーだけでなく、ぜんそくや花粉症などさまざまなアレルギーを引き起こす、「アレルギーマーチ」の危険因子でもあることがわかっています。アトピー性皮膚炎は慢性的なかゆみがあることが特徴で、乳児なら2カ月以上、それ以外は半年以上続いていることが診断基準になりますが、海外では何カ月以上という基準はありません。赤ちゃんが湿疹でかゆそうにしているなら、受診しましょう。
研究の最前線は、生活環境とアレルギーとの関連性
――食物アレルギーの予防には何が効果的ですか?
大矢 食物アレルギーに限れば、食物アレルギーの危険性が高い食物を与える時期を遅らせないことです。卵は、2019年の「授乳・離乳の支援ガイド」の改定で与え始めの時期が離乳初期(5~6カ月ごろ)となりました。その指導となることで卵アレルギーの減少が期待されています。また、最近では人工乳を生後1カ月から毎日10㎖以上3カ月まで与えたところ、6カ月時の牛乳アレルギーを抑制できたいという研究結果も発表されています。昔考えられていたような、 妊娠中や授乳中の母親が食物制限したり、赤ちゃんが食べるのを遅らせたりすることでは予防できないことがわかっています。
――生活環境を考えることが予防につながるのですか?
大矢 どのような生活をすることで予防につながるのか、生活環境とアレルギー疾患はどう関連しているのか、ということを現在研究しています。アレルギーには、まだわからないことがたくさんあります。研究を進めるためには、都会に住む人、自然豊かな環境に住む人、治療を早く受けた人、受けなかった人、スキンケアをした人、しなかった人、バリエーション豊かな情報が必要です。
※東京都健康安全研究センターによる調査
【6才までアンケートに答えてくれる人募集】3カ月ごろまでに湿疹ができた赤ちゃんのママ・パパ、ご協力ください
乳児期早期に湿疹があると、その後食物アレルギーのリスクが高くなると報告されていますが、まだわからないことがたくさんあります。
国立成育医療研究センターでは、3カ月ごろまでに湿疹やアトピー性皮膚炎ができたことのあるお子さんの6才までの様子を断続的にアンケート調査します。対象は現在6カ月~9カ月のお子さんで、アレルギー(アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎)の症状がどのようになっていくかをみていくことが目的です。ぜひご協力ください。
●アンケート回数 半年に1回(計12回を予定)
●アンケート謝礼 500円(予定・1回につき)
大矢先生からMessage
「アレルギーマーチ発症経路の研究を進めています。未来のアレルギー治療を前進させるこの研究には、毎日の育児を頑張っている皆さんのご協力が必要です。ぜひご参加ください」
取材・文/岩崎緑 写真提供/ピクスタ
協力/国立成育医療研究センター アレルギーセンター