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出生数86万人のショック…コロナ禍でまったなし、一刻も早い「男性育休、説明の義務化」を 

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本特集「たまひよ 家族を考える」では、妊娠・育児をとりまくさまざまな事象を、できるだけわかりやすくお届けし、少しでも育てやすい社会になるようなヒントを探したいと考えています。

今回は「男性の育休」をテーマにした連載の2回目。『男性の育休 家族・企業・経済はこう変わる』を共著で上梓した小室淑恵さん(株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長)、天野妙さん(みらい子育て全国ネットワーク代表)と一緒に、男性育休取得のメリットや取得が進まないことのリスクを考えます。

日本の人口減少は危機的状況

2019年の出生数は前年比5万人減の約86万人。

日本の人口は、政府の予想よりも2年前倒しのスピードで減少しています。

「日本の失われた20年は人口減少が主な原因」と指摘するのは、元ゴールドマン・サックスのトップアナリストとして知られるデービッド・アトキンソン氏。人口減が、これからも日本経済に深刻な影響を与えることは想像に難くありません。少子化は決して大袈裟ではなく、国の未来をかけた最重要課題です。

2010年に厚労省が立ち上げたイクメンプロジェクトをはじめ、これまでにも、政府による様々な少子化対策が行われてきました。しかし、人口減に歯止めはかかりません。小室淑恵さんは、「少子化対策を行うことは当然として、そのスピードが問題」と警笛を鳴らします。

「今のままの出生率では、2110年に日本の人口は現在の4割になり、高齢化率がなんと41%になってしまいます。しかし、もし今すぐに出生率が2.07に改善すると、2100年に人口は現在の6~7割程度で下げ止まります。さらに、団塊ジュニアのボリュームゾーンの年齢が40代後半に入ってきている今、1年ごとに出産できる女性の人数が激減するのですから、1分1秒でも早く解決しなければ、次世代の子どもたちに破綻した日本を残すことになります」

「男性育休」が少子化対策になる理由

止まらない少子化改善への突破口のひとつとして、小室さんと天野さんが提言しているのが「男性育休の義務化」です。

これは、前回の記事で述べた通り、「企業」が育休取得対象者に対して取得の権利を説明する義務です。男性の育休取得が、なぜ少子化対策に繋がるのでしょうか。

書籍『男性の育休 家族・企業・経済はこう変わる』では、男性の家事・育児時間が長いほど第2子の出生率があがることや、男性の育休取得がその後の積極的な家事育児参画のきっかけになること、男性が育休をとる期間が育児を終えたあとの夫婦の愛情にも影響を与えることなどが、データを用いて丁寧に解説されています。

また見逃せないのが、男性の育休は、産後の女性を苦しめる「産後うつ」への対策としても有効であること。出産した女性の10人に1人が発症すると言われる「産後うつ」。産後2週間~1カ月をピークに発症することが多いとされているため、この期間に男性が育休を取得し、家事育児の負担を減らすことは、妻の体と心を守る意味でも、非常に重要なのです。

「男性育休」が企業にもたらすメリットとは?

「男性の育休は少子化対策の観点から語られることが多いが、実は、企業側にもメリットがある」と天野さんは言います。

女性が育休明けに時短勤務を行った際、「時間当たりの生産性」が大きく向上したという話はよくあるケースです。男性も同様に、育休をきっかけに家庭にコミットする意識が高まれば、短い時間で効率よく成果をあげる、生産性の高い働き方へのシフトが期待できます。

また、職場以外での体験が増え、多様なものの見方や価値観を知ることで、事業やサービスにイノベーションをもたらしたり、ダイバーシティを重視したマネジメントを行いやすくなったりするでしょう。さらには、男性が育休を取りやすい企業風土は、優秀な人材の採用や定着率、従業員満足度の向上にも繋がっていくはずです。

男性育休を義務化しても、「業績は落ちなかった」

ここで書籍でも取り上げられている、「男性の育休に積極的に取り組む企業」の事例を1つ紹介させてください。

積水ハウスでは、「イクメン休業」という独自の社内制度を設け、育休取得率を100%に引き上げました。イクメン休業とは、3歳未満の子を持つ男性社員に対して、1カ月以上の育児休業を義務づける制度のこと。最初の1カ月を有給とし、最大で4回に分けて取得できます。

この制度を発案したのは、同社社長の仲井嘉浩氏。スウェーデンに視察出張した際、郊外の町でベビーカーを押しているのがほとんど男性だったことに衝撃を受け、帰国後、制度改革に着手したそうです。

育休義務化議論に先んじて、男性の育児休業を義務づけた同社ですが、ここまでの改革をしても、「制度導入後、業績は全く落ちていない。準備さえしっかりすれば、生産性を落とさず休めると実感した」と仲井社長は語っています。

なお、同社がイクメン休業を取得した社員を対象に実施したアンケートでは、本人及び配偶者の9割以上が制度に対して「満足している」と回答。社内から高評価を得ています。加えて、これらの取り組みは、企業のブランドイメージや採用力の向上にも好影響を与えているはずです。

少子化対策の特効薬のひとつであり、企業にも様々なメリットをもたらす「男性の育休」。長時間労働を是とするビジネスのあり方や働き方を変え、夫婦で無理なく家事・育児を分担できる社会に変える転換点とも言えます。小室さん、天野さんが本書で語られているとおり、男性の育休こそが社会を変えるレバレッジポイント(テコの原理で小さな力が大きな結果を生む点)になると言えるのではないでしょうか。

「男性の育休」をテーマにした本連載。次回は、‟ジェンダー平等”の観点から男性育休義務化について考えます。

文/猪俣奈央子

Profile

【小室 淑恵】
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長。資生堂を退社後、2006年に株式会社ワーク・ライフバランスを設立。1000社以上の企業や自治体の働き方改革コンサルティングを手掛け、残業を削減し業績を向上させてきた。その傍ら、残業時間の上限規制を政財界に働きかけるなど社会変革活動を続ける。ワークライフバランスコンサルタント養成講座を主催し、卒業生は約2000人。著書に『働き方改革 生産性とモチベーションが上がる事例20社』(毎日新聞出版)『プレイングマネジャー 「残業ゼロ」の仕事術』(ダイヤモンド社)他多数。

【天野 妙】
合同会社Respect each other代表、みらい子育て全国ネットワーク代表。日本大学理工学部建築学科卒業。株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)等を経て、性別・役職・所属・国籍に関係なく、お互いが尊敬しあう社会づくりに貢献したいと考え、起業。ダイバーシティ/女性活躍を推進する企業の組織コンサルティングや、研修など、企業の風土変革者として活動する傍ら、待機児童問題をはじめとした子育て政策に関する提言を行う政策起業家としても活動中。

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