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コロナ対策に巨額の公的資金、その陰で子育て支援が置き去り?不安なママ・パパの疑問【経済学者に聞く】

ユーロ紙幣と木製の背景に手の紙の家族
sal73it/gettyimages

新型コロナウイルス対策に巨額の公的資金が投入されている今、「子育て支援に使う資金がなくなってしまうのでは…」と不安を感じているママやパパは少なくないでしょう。結婚、出産、子育てを経済学的に研究している、東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の山口慎太郎先生に、これからの子育て支援がどうなっていくのか、現在子育て中のママやパパにどんな影響があるのかについて聞きました。

コロナ禍で経済的大打撃を受けたけれど、国はまだ弱ってはいない

――新型コロナウイルスの収束が見えず、新型コロナ対策費用や東京オリンピック・パラリンピックの追加費用で、想定外の公的資金の支出が増え続けています。子育て支援の予算が減らされる事態にはならないでしょうか。

山口先生(以下、敬称略) 新型コロナ対策は「待った」ができない不可避なものなので、感染防止策と経済的支援策に巨額の資金を投じるのは正しい選択と言えます。その結果、公的資金の分配が予定どおりにいかなくなるのも避けられ事態になっています。
でも、コロナショックで一度下落した株価が順調に回復していることからもわかるように、金融政策は今のところうまくいっています。子育て支援をどんどん減らさないと国が立ちゆかなくなる…という状況になるほど、国の力は弱っていません。

――2020年度予算は歳出総額が175兆6878億円、新規国債発行額が112兆5539億円となり、いずれも過去最高となりました。こうしたニュース見聞きすると「日本は大丈夫なの?」と不安になってしまうのですが…。

山口 国債は税収の不足を補うために、国が発行する債券、つまり国の借金です。借金が少ないほうが健全なのは個人も国も同じ。でも、新型コロナによって経済的大打撃を受けている今の状況は、実は大恐慌が起きてもおかしくない状態なんです。
大恐慌が起きたら失業者があふれ、治安が悪化し、新型コロナの感染対策も滞ってしまいます。こうした最悪の事態を防ぐには国が使える資金を増やすしかなく、そのためには国債の発行が避けられません。
国債は長い年月をかけて返済していくことになりますが、まずは今、目の前で起きているコロナ禍を乗りきり、経済を立て直すことを最優先に考える必要があるのです。

“子育て支援の劣化”は国としてあってはならないこと

――国が弱っていないと聞いて安心しました。でも、やはりこれだけ公的資金がコロナ対策に使われてしまうと、これからの子育て支援策に不安を感じます。

山口 子育て支援策は、子どもの心と体が健やかに育つのをサポートするためのもので、「次世代への投資」という役割があります。子育て世代が望むような効果的な子育て支援ができれば、出生率のアップにつながります。そして、十分な支援を受けて育った子どもたちが健全な社会人に育ち、仕事に就くようになれば、税収が増え、国が安定することになります。
つまり、子育て支援策は国の将来を左右する重要な施策なのです。それをないがしろにしたら、国の将来が危ぶまれることになります。
新型コロナによって、予想もしていなかった経済的打撃を受けてしまったとはいえ、子育て支援策を劣化させていいということにはならないし、あってはならないこと。それは政府にも理解してほしいですね。

ママやパパの声を政治家に届けることがこれからの子育て支援策につながる

――「子育て支援策は次代への投資だから手厚くするべき」という先生の考えは、子育て中のママやパパの気持ちを前向きにしてくれます。でも、政府・与党はそういう視点で子育て支援策を講じているのでしょうか。

山口 残念ながら、日本の政治家にはその視点があまりないように感じています。子育て支援は「親に対する支援」と考える政治家が多く、将来の日本を支える子どもたちに対する支援である、という視点が抜けているのです。
それが子育て支援にかける資金の少なさに現れていると思います。社会保障関係の支出のうち、子育て支援などに使われる「家族関係社会支出」の、国内総生産(GDP)に対する割合を見てみると、経済協力開発機構(OECD)加盟国でトップのフランスは3.68%なのに対し、日本は1.61%。半分以下です。子育て支援策の底上げは、今後の日本に課せられた大きな課題です。

――日本の子育て支援策がそれほど貧弱だとは思っていませんでした。子育て支援策の充実に向けて、ママやパパができることはあるのでしょうか。

山口 はからずしも、コロナ禍で、家族と過ごす時間が増え、家族といる幸福感を感じたり、家族のことをあらためて考えたりする人も増えています。「家族が幸せに過ごすためには何が必要なのか」をまず考えてみるといいのではないでしょうか。
その上で、子育て世代の率直な気持ちを政治家に届けましょう。政治家に意見を言う…と考えると、ハードルが高そうに思えるかもしれませんが、最近の政治家はSNSを利用して主張を発信したり、有権者の意見を聞いたりしている人が多いですよね。そこにコメントを書き込むことから始めてみては。子育てで困っていること、望む支援などを書いてみてください。
政治家は「人の役に立ちたい」と思って政治家になったわけですから、寄せられた意見や希望は真剣に受け止めるはず。1つ1つの声は小さくでも、それらが集まれば、子育て支援策を変えていくことにつながるでしょう。
国や政府の動きに注視し、自分たちの声を届ける。それが子どもたちへの今後の支援につながる、ということを覚えておいてほしいと思います。

お話・監修/山口慎太郎先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

子育て支援策を決める治家を動かすのは有権者。つまりママやパパです。子どもたちを健やかに育てるために、国の動きを把握し、政治家に声を届けることは、子育て支援策の充実に必要なことです。

山口慎太郎先生(やまぐちしんたろう)

Profile
東京大学大学院経済学研究科教授。慶應義塾大学商学部卒業。同大学大学院商学研究科修士課程修了。アメリカ・ウィスコンシン大学経済学博士取得。専門は、結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で研究する「家族の経済学」と、労働市場を分析する「労働経済学」。新著『子育て支援の経済学』を1月20日に刊行。


子育て支援の経済学

多くの人が働き方や家族の在り方を模索するいま、必要なのは「子育て支援=次世代への投資」という考え方。そのエビデンスが詰まっています。(日本評論社)

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