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【経済学者に聞く】児童手当を削って待機児童対策に。少子化対策になるの?

貯金箱と通貨を持つお母さんとお父さんの銀行の概念
Teamjackson/gettyimages

「高所得世帯向けの児童手当を廃止して待機児童対策の財源に充てる」という、子育て世代には聞き捨てならないニュースが昨年11月に流れました。その後、内容の修正があったものの、12月に政府・与党が合意。今回の子育て支援策は政策として正しいのでしょうか。結婚、出産、子育てを経済学的に研究している、東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の山口慎太郎先生に聞きました。

先進諸国の中で、日本の子育て支援は3分の2から2分の1の相当に低いレベル

現在の児童手当は、中学生以下の子どもに対して、年齢に応じて1人当たり月1万~1万5000円が支給されます。しかし所得制限があり、たとえば、配偶者と子ども2人の扶養家族がいる家庭の場合、夫婦のうち収入の高いほうの年収が960万円以上だと給付額が制限され、子ども1人当たり5000円になります。
今回、政府・与党が合意した児童手当の見直し案は、夫婦どちらかの年収が1200万円以上の家庭は、児童手当(1人5000円)の給付を打ち切るというもの。2022年10月をめどに実施される見込みです。

--これを発端として、子育て支援が縮小していくのでは…という不安が、ママやパパの間で大きくなっているようです。

山口先生(以下敬称略) 今回合意されたのは見直し案で、受給対象から外れる子どもの数は約61万人と見込まれています。対象となる世帯を、「どちらかの年収が1200万円以上」とハードルを上げたことで、影響を受ける世帯はかなり減らせたとは思いますが、政府の子育て支援策に不信感を与えたということで、非常によくないパフォーマンスだった、というのが私の意見です。

――今回の児童手当の支給見直しは、不足している待機児童解消対策の資金に充てるというのが政府の見解ですが、子育て支援策の財源の中でやりくりする今回の方法について、山口先生の意見を聞かせてください。

山口 日本の子育て支援は非常に貧弱で、子育て支援に充当している予算は、先進国の平均の3分の2程度。トップクラスの北欧の国やフランスと比べたら半分以下です。子育て支援の底上げは、日本に課せられた課題です。
待機児童解消のための資金がたりないのなら、子育て支援策の予算を増やす方向で検討するべきなのに、今回の対策は、今ある予算の中で解決しようとしています。これでは、「子育て支援に真剣に取り組んでいる」とはとても言えません。

――先進諸国と比べて、日本は子育て支援に力を入れていないことがわかり、ショックでした。なぜ日本は子育て支援に消極的なのでしょうか。

山口 子育て支援は、子どもが心身ともに健全に成長するのを応援するためのもの。多くの子どもたちが健康に育ち、一定レベル以上の教育を受け、仕事を持ち、よりよい社会を築くことができたら、結果的に国が潤うことになります。つまり、子育て支援は次世代への投資なんです。そのことを理解している国は、子育て支援に十分な財源を投じています。
しかし、残念ながら日本は、子育て支援を目の前だけの問題ととらえ、多額の公的資金を使うことに消極的になりがち。子育て支援をもっと広い観点から見て、検討する必要があることを、日本の政治家は理解すべきだと思っています。

待機児童の解消は、子育て支援、少子化対策としてはメリットが大きい

――今回の見直しは、児童手当の給付より、待機児童の解消のほうが重要と政府が考えて行われたのだと思いますが、この点について先生はどう思われますか。

山口 これについてはあながち間違いだとは思いません。子育て支援策には「現金給付」「現物給付」「税制上の優遇措置」の3つがあり、児童手当や育休給付金は現金給付、保育園や幼稚園などの児童教育や、そのほかの子育て支援サービスは現物給付、所得控除や税額控除が税制上の優遇措置です。
支援を受ける側としては、現金支給がいちばん「支援されている感」を得られると思いますが、給付された現金をどのように使うかは各家庭にゆだねられるため、それぞれの家庭がその現金を子どもに使っていないかもしれないと考えると、「次世代への投資」ととらえるべき子育て支援の効果に、ばらつきが出てしまう可能性があります。

一方、現物給付である待機児童の解消は、保育サービスを希望する家庭が、等しくその恩恵を受けることができます。そして、子どもを安心して預けられる場所ができれば、ママやパパは仕事に集中できる時間が増え、結果的に家庭内の収入が上がり、生活が潤うことになります。
こう考えると、待機児童の解消を優先することは間違ってはいない、とわかりますよね。

子育てにはお金がかかる。だから、できることは全部して備えよう

--児童手当給付の見直しの過程で、「夫婦合算で年収960万円以上は給付廃止」とする案が出た際には、共働き家庭は大きなショックを受けました。その結果、「頑張って働いてもいいことがないから正社員をやめてパートになる」といった意見も多く見られました。

山口先生 今回の見直し案でいちばんの失敗は、子育て世代の育児と勤労に対するモチベーションを著しく下げ、子育て世代の政治不信を大きくしてしまったことではないでしょうか。政府のコミュニケーション不足が原因です。
でも。少し冷静に考えてみましょう。2019年の「賃金構造基本統計調査」によると、女性の正社員の平均年収は403万円、非正規雇用は242万円。160万円以上も差があります。年間160万円の収入は、児童手当では賄えませんね。
しかも、私がデータ分析したところ、現在専業主婦である女性が一年後に正社員の仕事に就く確率は1%でした。たとえば、児童手当がもらえる間はパートで働いて、その後また正社員で働こうと思っても、それはかなり難しいということです。今、正社員で働いているのならば、つづけたほうがいいと思います。

――今回の児童手当給付の見直し案によって、政府の子育て支援策に不信感を持ち、「これからのことが不安だから2人目が欲しかったけれどやめた」というママも少なからずいるようです。この点についてはどう思いますか。

山口 子どもを何人持つかは、夫婦が決めることではありますが、「子育て支援が不安だから産むのをやめる」というのは、ちょっと残念かなと思います。子どもがいる幸福感はほかでは得がたいもので、家族の幸せはお金だけではないと思うからです。
「やっぱり子どもは2人欲しかった」と後悔しないためにも、今、夫婦でたくさん話し合い、納得したうえで家族計画を考えることが大切です。

もちろん、子どもが成人するまで育てるには多額なお金が必要になるので、きれいごとでは済まないのも事実。とくに今はコロナ禍で経済の先行きが見えない時代ですから、不安になるのは当然です。家庭の収入と支出を見直し、将来に備えることは欠かせません。

現状の子育て支援策で受けられるサポートは最大限受けるのはもちろんのこと、iDeCo(イデコ 個人型確定拠出年金)、NISA(ニーサ 少額投資非課税制度)、ふるさと納税などで賢く節税したり、仕事のスキルアップなどで増収をめざしたりと、「できることはすべてやる!」という気持ちで、家計の安定に取り組みましょう。
夫婦で力を合わせて、自分たちがめざす家族の実現に向けて頑張ってほしいと思います。

お話・監修/山口慎太郎先生 取材・文/東裕美、ひよこクラブ編集部

日本の子育て支援は先進諸国の中ではかなり低いレベル、というのは残念な話です。その国で子育てをしているからこそ、受けられる支援はもれなく受けつつ、自分たちができることを調べ、実行することが大切なようです。

山口慎太郎先生(やまぐちしんたろう)

Profile
東京大学大学院経済学研究科教授。慶應義塾大学商学部卒業。同大学大学院商学研究科修士課程修了。アメリカ・ウィスコンシン大学経済学博士取得。専門は、結婚・出産・子育てなどを経済学的手法で研究する「家族の経済学」と、労働市場を分析する「労働経済学」。新著『子育て支援の経済学』を1月20日に刊行。

子育て支援の経済学

多くの人が働き方や家族の在り方を模索するいま、必要なのは「子育て支援=次世代への投資」という考え方。そのエビデンスが詰まっています。(日本評論社)

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