褒められると泣き出す長女…どう接する?さざなみさんにインタビュー【育児編】
Twitterのフォロワーが5万人超えのさざなみさんは、夫と4歳&2歳の姉妹の4人暮らし。Twitterやインスタグラムなどで、日々の育児を通して感じた“気づき”を育児漫画にしてアップしています。もの思うママ・さざなみさんの目線で見る育児は、今まで気づかなかったような発見がたくさんあると話題に!
インタビューの前編では、さざなみさんの妊娠や出産のエピソードをお聞きしました。後編では、子どもたちの性格や育児中のエピソードを教えてもらいました。
プロフィール /さざなみ
4歳と2歳のくせっ毛姉妹を育児中のイラストレーター・育児漫画家。子どもたちと一緒にすごす毎日の中の“発見”を主にTwitter(@3MshXcteuuT241U)で発信している。書籍『「どんなときでも味方だよ」って伝えたい!』が発売中。
想像力豊かな長女と天真爛漫な次女
――さざなみさんが思う、姉妹2人の性格をお聞かせください。
「長女は、自分が実現したい物事のイメージをはっきりと思い描くことが得意です。こんなふうになりたい、こんなふうにしたい、とこちらが驚くほど具体的なイメージを抱いているので、何を決めるにしても、できるだけ本人の希望を尋ねるようにしています。
例えば、毎年夏休み前には休み中に何がしたいかリストを作るのですが、長女はいつも、具体的な要求をすらすらと思いつくのです。海に行って貝殻を拾いたい、とか、花冠を作りたい、親戚の家に遊びにいきたい、アイスクリームを買ってベンチで座って食べたい、など子どもらしくかわいらしい理想ではありますが、このようにやりたいことがどんどん思いつけるところはとってもすてきだと感じます。
まだまだ幼いので自分の思うようにならないこともあり、高すぎる理想を前に葛藤する姿を見かけることもあります。だけど、手を伸ばした先に輝く“なりたい自分のイメージ”がある、ということは彼女自身が自分の可能性を広く大きく捉えていることの表れでもありますので、私はうれしく見守っています。
次女は、天真爛漫で感情表現が豊かなタイプ。ちょうどイヤイヤや自己主張が多くなり始めた時期ですが、散々泣いたあとにコロッと機嫌を直したりするので、こちらも笑ってしまいます。好きなものがたくさんあり、好きという感情を表す術もたくさんあるので、毎日がとても楽しそうです」
褒めると泣き出す長女…どうやって褒めてあげればいい?
――褒められるのが苦手だったという長女ちゃん、さざなみさんはどのように対応するように心がけましたか?
「『じょうず』という声掛けは、こちらとしては特に意味もなく単なる褒め言葉として使っていたものですが、長女にとっては地雷ワードだったのだと気づいたときは私も驚きました。
観察していると長女は塗り絵をするときも、見本の通りの色を選び、線からはみ出ないように慎重にゆっくりと塗っていました。シールもぴったりの位置に貼りたいようで、とても慎重に位置を確認しながら貼っていました。それが、彼女にとって美しい完成形だったのです。このように、はっきりとした完成イメージを持ち、その通りに実現したいと願うこと自体は、私は素敵だなと思っています。ですが、それに届かない状態やトライアル&エラー部分を全て“失敗”と捉えてしまっては苦しいものです。
『じょうず』以外の声掛けはどんなものがあるだろう? と考えていたころ、海外の幼稚園教師のインスタグラムを見つけました。カラフルな室内装飾などに気を惹かれてフォローしていたのですが、その中で生徒一人一人にポジティブな言葉かけをするというトピックがあったのです。英語と日本語という差はありますが、そこで例として出されていた言葉たちはまさに私の求めていたものでした。単に『いいね!』ではなくて『独創的だね』『アイデアマンだね』『仕上げまで丁寧だね』と具体的に褒めているところ。また、『あなたは私をいつも驚かせてくれる』『あなたのおかげで助かったわ』『あなたのアイデアはみんなに刺激を与えてくれた』と作品への評価ではなく本人が周りに与える影響について感謝を伝えているところなど、とてもすてきだと感じました。本当にその子だけに向けたオリジナルの褒め言葉だと感じられたのです。
そういったポジティブで具体的な言葉を私も娘に贈りたいと考えて、当時2歳だった長女の気持ちに届くよう、オリジナルのほめルールを考えました」
褒められると泣いてしまう長女ちゃん
――元・保育士であるお母様から育児に対する姿勢を学ぶようなエピソードも多いですが、自分の幼い頃の対応や、娘さんへの対応を見ていて、「こうしてくれていたんだ」「こんなふうにできたらいいなぁ」と思うことはありますか?
「母は大らかな人で、庭いじりが趣味です。木も花も枝が向かうまま、育つままに育てているので、花壇の外に溢れて咲いていることもしばしば。子どものことも、庭木のように向かう方向を無理矢理変えようとしないで育ててきました。
何かを決めるときにはまず本人の意見を聞いてくれました。希望を伝えれば、それが実現するように環境を整え、必要ならばアドバイスをくれて……習い事も進路も、何もかも本人発信で決めさせてもらえました。子どもへの深い信頼があってこその姿勢だと思います。私もできるならば自分の子どもたちに同じようにしたいと考えています」
母はいつも何かを“与えてくれる”存在だった
叱るのが苦手。幼少期、自分が叱られること対して敏感だった
――叱るのが苦手というさざなみさん、そういうママは他にも大勢いると思います。やってはいけないことを子どもに伝えるとき、さざなみさんが心がけていることはなんですか?
「私自身、大きな声が苦手な子どもでした。怒鳴られたり、威圧的な態度をとられると、心が閉じてしまって、そのあと何を言われようと頭に入ってこないのです。
子どもを育てていると、どうしても叱らなければならない場面があります。だけど、それは同時に、何か大切なことを伝えなくてはならない場面なのです。感情的になっても伝わらない。それならどう伝えればいいか、自分の体験や子どものようすを観察しながらやり方を考えました。
長女は、怒られているという気配を察知すると泣き出してしまう子。そうなると興奮してしまい、こちらの伝えたいことを聞く余裕がなくなってしまうのです。なので、とにかく泣かせないように…… “怒られている”という状況とは真逆になるように注意しました。
具体的には、静かな場所で優しく手を繋いで視線を合わせて話します。起こった出来事を一般化し、望ましくない状況とその理由について私が説明したあとは、今度同じ状況になったらどうすればいいかの結論を、子ども自身の言葉で話してもらうようにしています。一方的ではなく、対話になるようにしたかったからです。
終わり方も大切だと考えています。もうわかったと子どもが判断したら、私の言うことに『そうだね』と同意してくれるように頼んでいます。『そうだね』の合言葉を聞いたあとには、すっぱり話を終わります。蒸し返したり、本人の目の前で他の人に報告したりしないようにしています。子どもに『あなたを信頼している』ということが伝わるように心がけています」
自身の子どもの頃を思い出し「叱るときのルール」を決めた
――さざなみさんのお気に入りのエピソードはどれですか?
「長女の夜泣きのエピソードです。子どもの夜泣きが大変な時期、親はひたすら振り回されるがままに寄り添うしかありません。疲弊しきった心に、まったくの他人から寄せられた優しさがとても染みたのを覚えています」
夜泣きで寝ない娘を連れて行った喫茶店で
子育て中“だれもが抱く思い”を表現したい
――最後に、書籍“「どんなときでも味方だよ」って伝えたい!”の見どころを教えてください!
「私が漫画に描いたことは、私が育児をしながらぼんやり抱いてきたさまざまな考えです。決して斬新だったり特別だったりするわけではなく、だれもが一度は考えたり胸に抱いたことのある思いなのだと思います。言語化し、受け取りやすい漫画というかたちになったことで、より多くの人に届けることができました。読んだあと、優しい気持ちになってもらえたらうれしいです」
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わが子でも自分とは異なる存在。大人が思ってもいなかったところで悩んでいたり、つまずいていることもありますよね。親子のコミュニュケーションをはかっていく中で、子どもの新たな一面が発見できることも。
悩みながらも子どもの気持ちに丁寧に寄り添うさざなみさんの漫画を見ていると、子どもの目線になって考える大切さに気付かされます。もちろん子育てに正解はないですし、ママだって精一杯……! 子どもとの接し方に悩んでいるかたは、さざなみさん親子の暮らしをのぞいてみると、なにかヒントが隠れているかもしれません。(文・清川優美)