助産師・性教育YouTuber シオリーヌ「妊活する前にやっておきたい8つのこと」
性教育から妊活まで、“性”にまつわるさまざまな情報を発信し、人気を集めているシオリーヌさん。実はご自身も妊活を経て赤ちゃんを授かりました。
そんなシオリーヌさんが、これから妊活を始めようと思っているみなさんに伝えたいこととは? ご自身の経験を振り返りながらお話しいただきました。
シオリーヌさんのインタビュー<後編>では、夫・つくしさんについて、また「妊活する前にやっておきたい」ことを妊活たまごクラブがお聞きしました。
『妊活応援インタビュー2・シオリーヌさん「妊活する前に知っておきたいこと』 #2
※参考:「妊活たまごクラブ 2022-2023年版」
「最後にはちゃんと話し合おう」が我が家のグランドルール
シオリーヌさんに、妊活中、予想外に大変だったことを聞いてみると「通院」との答えが。
「こんなに頻繁に病院に行かなきゃいけないとは思っていませんでした。1回の通院にもかなり時間がかかるし、行くたびにこんなに痛いことばっかりやるとは予想していませんでした。仕事が入っていようが何だろうが『病院に来てください』。スケジュールはすべて卵の都合で、こっちの都合なんて何も考えられていない。そんなことに驚くと同時に、治療に取り組んでいる人が世の中にはたくさんいるはずなのに、このしんどさがあまりにも伝わっていないとも感じました。これは妊活の当事者じゃない人にももっと知らせなくちゃいけないなと思って、動画などにも反映しています」
妊活の大変さを当事者以外にも伝えたい
YouTubeチャンネルには夫のつくしさんもたびたび登場。
マシンガントークを繰り広げる妻に、やさしく寄り添う姿が印象的です。
「私たちはカメラが回っていないときも、ずーっとしゃべっています。お互いの根底には『どんなにケンカしていても話し合いを放棄してはならない』という共通認識があるんです。どんなに怒っていたとしても、最後は話し合いのテーブルにつく。『最後にはちゃんと話し合おう』が我が家のグランドルールです」
どんな些細なことでも、とことん話し合う。そんな夫婦間のルールは妊活でも最大限に活かされたよう。
「妊活は1人ではできないことですよね。私も妊活を経験してみて、夫婦がともに知識を持って、足並みを揃えて進んでいくことが何より大事だと感じました。だから、まずはいろんなことを話して、コミュニケーションをしっかり取ること。私は『そろそろ排卵が近いかもしれない』とか、『内診で先生がこんなことを言っていた』とか、夫が同席できない場で起こったことも意識的につくしとシェアするようにしていました」
それは、次の項目でシオリーヌさんが教えてくれた「妊活を始める前にやっておきたい8つのこと」の8番目、「夫婦でライフプランのすり合わせをする」ことにもつながります。
「私たちは、不妊治療を受けることになりそうだとわかったとき、治療をどこまでするのか…例えば体外受精をするのか、するなら何回なのか、という話をしました。『もし授からなかったら』という話もしたし、どこで産むか、産後はどこで育てるかなども話し合い、なるべくすれ違いを生まないようにしました」
話し合うための「話し合い」が必要な場合も
とはいえ、夫婦で話し合う習慣があまりないという人もいるかもしれません。
そんな人はどうすれば?
「それにはまず『話し合いをしたい』という話し合いが必要ですね。『妊活は2人で一緒に向き合わなければならない問題だから、ちゃんと同じ目線で話をしながら進めていきたいんです』という話し合いです。話し合いが苦手という人は、話し合うことに対して恐怖心を持っているのかもしれません。自分が責められるんじゃないか、否定されるんじゃないかという不安があるから、真面目な話になると黙り込んじゃう…。私たちも今でこそ何でも話し合う夫婦ですが、最初からうまくできたわけではありません。私はもともと大の話し合い好きですが、以前のつくしは『話し合うのがこわい』『自分の気持ちを話すのがあまり得意ではない』と言っていました。私が彼に伝えたのは、『あなたを責めたいわけじゃない。これから先もあなたと仲よくしていきたいと思っているから話したいんだ』ということ。そうしてようやく彼の恐怖心が消えて、今に至るという感じです」
妊活はもちろん、妊娠も出産も子育ても、話し合わなければいけないことがいっぱい。
この先もお互いにパートナーとして家庭を運営していこうという気持ちがあるなら、話し合いをするトレーニングをしておくことも必要かもしれません。
「妊活では『セックスが作業的になるのが嫌』なんて声も聞きますが、セックスの目的はさまざまで、妊活のために力を合わせるセックスがあったっていい。『ムードはないけれど、共同作業として頑張りましょう』、そういう話ができる関係性があればいいんだと思います。話しづらいことをいかに話せる関係性を築くか、2人の心地よいコミュニケーションのカタチが見つかればいいですね」
シオリーヌさんが教えてくれた『妊活を始める前にやっておきたい8つのこと』
妊活と妊娠期間を安心して過ごすために心がけたいこと、やっておくべきことは?
これらを実践して、心も体もベストな状態で妊活に臨みましょう!
<1>男女ともに検査を受ける
マストでするべきは性感染症と風疹抗体の検査。妊娠してから性感染症の治療をするのは大変だし、妊娠してからだと風疹のワクチンが打てないからです。
夫婦のどちらかが病気を持っているなら、コンドームを外す前に治療をしなければいけません。さらに卵巣機能や精液の検査までするかどうかは、病院の先生と相談して検討を。
<2>生理周期を記録する
排卵日を予測するうえでも、生理周期は必要な情報。カレンダーに書き込んでもいいし、アプリを活用してもいいし、自分が生活の中で無理なく取り入れられる方法であれば何でもOK。
今まで記録していない人は、今からつけ始めて欲しいと思います。
<3>生活習慣を見直す
生活リズムを整える、栄養バランスのよい食事を心がけるなど、できる範囲で健康的な生活を目指しましょう。
タバコは体に何もいいことがないし、男性が喫煙者の場合も副流煙で赤ちゃんへの悪影響が考えられるので、早めにやめておくこと!
<4>自分のキャリアプランを考える
「この先の人生、どうしよう」と考えることも大事。女性は妊娠・出産で、どうしても仕事を休まなければならない期間ができてしまいます。
その間をどう対処するか、その後はどう歩んでいくのか、想定できる範囲でシミュレーションしておくのが◎。
<5>歯科治療を受けておく
妊娠初期につわりが始まってから歯科治療を受けるのはつらいし、妊娠後期におなかが大きくなってくると歯科治療が大変になることも。
妊娠中はできる治療が限られる場合もあるので、前もって治療を受けておくのが安心。
<6>葉酸をとる
葉酸は「妊娠したら必要」と思われがちですが、実は「妊活するなら葉酸」。とくに必要なのは妊娠初期なので、妊娠が発覚するくらいの時期には葉酸をとっていたほうがいいのです。
厚労省も「葉酸はサプリメントなどで補いましょう」と推奨しているので、妊活を始めるならサプリなどで摂取しておきましょう。
<7>病院・産院のリサーチ
妊活での病院・クリニック選びと同時に、妊娠したときのことも考えておくのが大切。病院によってお産や授乳の方針、分娩費用などが異なります。また、都市部や人気の病院はすぐに分娩予約が埋まってしまうことも。
妊娠したら素早くアプローチできるように、早めに調べてある程度メドを立てておいて。
<8>夫婦でライフプランのすり合わせをする
いつ頃に子どもが欲しいと思っているか、将来的に何人欲しいのか、もし授からなかったらどうするか、妊娠・出産で仕事を休むことになったら家計は大丈夫なのか…。
妊活を始めてからすれ違いが起こらないように、ライフプランや妊活の方針、お金のことなど、夫婦できちんとすり合わせをすること!
●シオリーヌ Profile
1991年、神奈川県生まれ。神奈川県立保健福祉大学看護学科卒業。
総合病院の産婦人科病棟で助産師として勤務した後、精神科児童思春期病棟で若者の心理的ケアを学ぶ。2017年より性教育に関する発信活動を始め、2019年より「シオリーヌ」としてYouTubeチャンネルで動画投稿をスタート。動画配信のほか講演会やイベント、本の出版などを通して性にまつわるさまざまな情報を発信している。
YouTubeで妊活についての情報も発信中!
●撮影/廣江雅美
●構成・文/本木頼子
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