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「34週で早産。赤ちゃんはNICUへ入院し、面会禁止に」そんな親子の愛情をつなぐ一助となったもの

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コロナ禍の妊娠・出産はさまざまな制限がされています。とくに新生児集中治療室(以下NICU)に入院している赤ちゃんは、パパや家族が退院まで1度も会えないことも。そこで、大阪大学医学部附属病院(以下阪大病院)のNICUでは、赤ちゃんと家族をつなぐオンライン面会システムを開発。クラウドファンディングで資金を集め、2021年7月から本格運用がスタートしました。
3才のお姉ちゃん、夫(40才・会社員)と暮らす田中美穂さん(仮名・38才・会社員)は、新型コロナ第4波のさなかに、阪大病院で第2子となる女の子を出産。オンライン面会システム利用の第1号となりました。田中さんに、コロナ禍の出産の不安や、面会システム利用の感想について話を聞きました。

前置血管で帝王切開分娩が決まり、赤ちゃんはNICUへ

――田中さんの出産の様子と、赤ちゃんがNICUに入ることになった経緯を教えてください。

田中さん(以下敬称略) もともとは別の産院に通っていましたが、2021年3月(22週ごろ)に急な出血があり“前置血管”と診断されました。この時の症状が、通常の胎盤以外に副胎盤という2つ目の胎盤があり、その2つをつなぐ血管がちょうど子宮口付近にあるというもの。血管が破けて出血すると赤ちゃんの命が危険なため、阪大病院へ転院することに。4月の終わり(妊娠30週ごろ)に阪大病院に入院し、遅くても34週までに予定帝王切開分娩が必要と言われ、手術日は6月1日に決まりました。
医師からは、34週の早産では赤ちゃんが低体重や呼吸器障害がある可能性があるため、必ずNICUに入ることになると説明がありました。

――阪大NICUでは、新型コロナウイルス第4波の影響で、入院中のママ以外の家族とは原則面会禁止となったそうです。赤ちゃんがNICUに入り、会えなくなることの不安はありましたか?

田中 NICUに入ると、赤ちゃんと面会時間が限られてしまうと聞いてはいました。そのときは会えなくなることが不安というよりは、まずは手術日までおなかにいさせてあげて、無事に産んであげることしか頭になかったです。

生まれたわが子に会えるのはわずかな時間だけ

入院中のママとNICUの菜々子ちゃんの面会は決められた時間だけ

――6月1日、34週で2340gで次女・菜々子ちゃんを出産されました。産後の面会の様子などを教えてください。

田中 産声(うぶごえ)を聞くことはできましたが、私自身の出血量がかなり多く、意識がもうろうとしていて、娘の顔を見る余裕はなかったです。生後すぐにNICUの保育器に入った娘を抱っこできたのは翌日のこと。無事に生きていてくれて…寝息を立てている姿を見てとても安心しました。

私の入院中は、NICUにいる娘との面会は1日3回30分ずつ。ほかのママと重ならないよう、時間が決められていました。30分の面会では、授乳やおむつ替えなどのお世話をすると、抱っこをして、ゆっくり顔を見てあげる時間はほとんどなくて、時間が一瞬で過ぎてしまうようでした。

――家族との面会はどうだったのでしょうか?

田中 パパはNICUにいる娘には退院まで会えないと言われていましたが、病院側が配慮してくれ、入院中に1回、30分だけ会うことができたそうです。パパは娘の元気な姿を見て安心し「やっぱりかわいい、会えてよかった」と言っていました。
私は産前と合わせて40日間入院しましたが、パパにも上の子にも1度も会えませんでした。

――田中さんは上のお子さんとも長期間会えなかったのですね…。

田中 長女に会えなかったのはつらかったです。長女もママに会えない生活が続き、かなり精神的に参っていたようです。私が産後1週間で退院してから、長女は私の姿が見えないとすぐ探し回って、トイレまでついてくるなど不安定な様子でした。

オンライン面会システムが愛情をつないでくれた

看護師さんたちが菜々子ちゃんの成長の様子を撮影してくれたメッセージカード

――田中さんが退院後はNICUにいる菜々子ちゃんと会えなくなってしまうことについて、どんな不安がありましたか?

田中 いつ娘が退院できるのか終わりが見えないのは不安でした。
親子の実感って、赤ちゃんと毎日お世話をして一緒の時間を過ごすことで少しずつわいてくるものだ、と長女を育てて感じたんです。だからまったく会えないとどうなるのかが、いちばん不安なところでした。わが家に帰ってきた娘に違和感を持つんじゃないか、知らない間に成長している姿に戸惑ってしまうんじゃないか、と心配でしたね。

――では、オンライン面会システムを利用してみていかがでしたか?

田中 私が退院後、毎日お昼に1時間のオンライン面会をさせてもらいました。画面越しでも「あ、昨日とまた顔が変わってる!」とか「今日は起きてる時間が長いな〜」とか、日々の成長の違いがわかると、だんだん親しみを覚えてきて、退院後の娘を迎えるに当たっての不安は全然なくなりました。

長女は妹に1度も会えなかったので、本当に生まれたのか不思議そうにしていましたが、オンラインの画面越しでも妹の姿を見られ「妹が生まれたんだ」とよくわかったと思います。菜々子が退院したときには「お姉ちゃんだよ」と話しかけて、かわいがってくれました。

――菜々子ちゃんが退院するまでの間は、NICUに母乳を届けたりもしていましたか?

田中 はい。3時間おきに搾乳して冷凍して、2〜3日に1回、車で30分ほどの距離にあるNICUに届けていました。帝王切開でおなかの傷も痛かったし、体が回復していないので夜は寝たかったんですが…搾乳をしないとおっぱいが出なくなってしまうので、夜中も2〜3回起きて搾乳していました。その原動力は、やっぱり娘への愛情だと思います。
オンライン面会で明日もかわいい姿を見せてくれると思うと、がんばろうと思えました。ただ、母乳を届けても会えないのは切なかったです。

コロナで家族の時間を失った反面、新たな可能性も感じた

菜々子ちゃんの予定日だった7月7日に家族そろって記念撮影

――その後、菜々子ちゃんは何日くらいで退院になったのでしょうか?

田中 当初は予定日だった7月7日ごろまで入院になるだろうと言われていましたが、健康状態に問題がなく、経過も良好でミルクもたくさん飲んでいたので、生後17日ほどで退院できることに。彼女が無事で退院できたことは、今年家族にとっていちばんよかったことです。

――コロナ禍での出産を経験し、わが子との面会禁止の時期を経て、どのようなことを感じましたか?

田中 コロナがなければ、阪大のNICUは赤ちゃんとの24時間面会が可能でした。私たち家族が会いたい時に、事前予約をして会えるシステムだったそうです。だから、私たち親子の最初の時間は新型コロナウイルスによって奪われてしまったと感じます。
けれど、オンライン面会はその会えない時間を補ってくれました。画面を通してでも、娘の愛らしさが伝わってきましたし、日々の成長や変化が見られ、かわいいな、また明日も会いたいな、と思うことができました。

また、今回、私は分娩時に輸血を要するほどの出血により、産後は貧血気味で、毎日病院に行くのは体がつらかったと思うので、コロナ禍でなくてもオンライン面会ならではのメリットも感じました。病院から遠かったり、上の子が小さかったりする場合も、毎日通うのは難しい人もいるかもしれません。

遠方にいるばあば・じいじや、出勤中のパパなど、家族みんなで手軽に面会できるのはとてもいいシステムです。この動きがもっと広がってくれたらいいなと思います。

【北畠康司先生より】生まれた赤ちゃんに会えない家族を1人でも少なくしたい

オンライン面会システム開発に携わった、阪大病院 総合周産期母子医療センター・小児科医の北畠康司先生に、今後のシステムの可能性について聞きました。
「たくさんの方々からご支援をいただき、時間がかかりながらもなんとかシステムの完成と本格稼働にこぎつけることができました。ご家族の喜びの声や利用後の感想を聞き、私たちスタッフもうれしく思うとともに、オンライン面会の新しい可能性を感じています。
このシステムが他施設にも広がることで、生まれた赤ちゃんを見ることすら叶わないご家族が1人でも少なくなってほしいと願っています。それとともに、コロナ禍が収まったあとも、ご両親の体調や、自宅と病院の距離、その他さまざまな家庭の事情にで来院が困難なご家族にとって、このシステムが面会のもうひとつの選択肢となってくれるのではないかと期待しています」

監修/北畠康司(きたばたけやすじ)先生

取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

病気などの理由でNICUに入院している赤ちゃんのママや家族は、ただでさえ不安を抱えています。さらに面会できない状況で、さみしさやつらさを感じる人もいるでしょう。画面を通してわが子の様子を見られるオンライン面会システムは、そんな親子の愛情をつなぐ一助となりそうです。

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