妊娠中「自宅で安静に」と言われたら…。家事や仕事はどこまでがOK?迷いがちな質問を先生に聞いてみた【産婦人科医】
健診で「安静に」と言われたけれど、どう過ごせばいいのか、どこまでOKかわからないという戸惑いの声が寄せられています。何に注意して過ごせばいいのか、“妊婦さんたちの迷いや困った”を集めて、産婦人科医の今野秀洋先生に聞きました。
まずは、どうして「安静」と指示されるのか教えて
おなかの張りや痛み、出血、子宮頸管(しきゅうけいかん)の長さが短くなるなど、妊婦さんに切迫流産(せっぱくりゅうざん)や切迫早産(せっぱくそうざん)の兆候が見られるときに「安静」の指示を出します。「安静」にするということは、日常生活の動きを制限すること。これまでと同じような生活をしていたら、予定日前に出産になるリスクがあるときに出される指示です。赤ちゃんを守るために、安静にすることが重要です。
「安静」のレベルは人それぞれ、医師に必ず確認を
安静になった理由や、妊娠週数、生活活動の度合いにより、安静指示を出された場合の実際の行動レベルは異なります。必ず担当の医師に、自分がどう過ごせばいいのか相談することが大切です。ここでは、自宅安静の比較的軽度の場合の、行動目安について紹介します。
毎日の生活編
Q.自宅の階段の上り下りは?
A.行ったり来たりをしすぎないように。
1階と2階を、何度も上り下りするわけでなければ問題ないでしょう。たとえば、寝室が2階でリビングが1階、トイレに行くために階段を使う程度の場合です。ただ、トイレの頻度がとても多いなら、日中をどのフロアで過ごすのがいいか考えてみて。
Q.スマホでゲームしてもいい?
A.やりすぎに注意して
「安静中は、とにかく暇でつらかった」という声も多くあります。ゲームでストレス解消できるならいいですが、やりすぎは疲れやストレスのもとになるのでほどほどに。また、同じ体勢をとり続けるのは体調に影響を与えることもありますので注意してください。
Q.湯船につかってOK?
A.安静になった理由によります
湯船につかってリラックスすることはよいと思います。ただし、入浴が好きでリラックスできるという人でも、湯船につかるのは10分程度に控えて。なお、出血しているなど、湯船に入らないほうがいい場合や、シャワーが制限される場合もあります。担当の医師に確認を。
Q.ずっと寝ていなきゃダメ? ソファでのんびり過ごすのは?
A.いちばんリラックスできる体勢で
布団の中でじっとしている必要はありません。おなかが苦しくなったり、張ったりする体勢でなければOK。布団でもソファでも、同じ体勢でじっとしていると、下肢静脈血栓症(かしじょうみゃくけっせんしょう)になる心配があるので、体勢を変え、ゆったりすることも重要です。
Q.会社にはいかないで、家で仕事するのはOK?
A.緊張やストレスになるのでは? やめておいて
安静中は仕事を休むことが基本です。家で電話やパソコンを使った作業なら問題ないように思うかもしれませんが、仕事による緊張感もあり、知らぬ間にストレスがたまるものです。あまり無理をしないようにしてください。
家事編
Q.車でなら、近所のスーパーに買い物に行っていい?
A運転もNG! スーパー内での移動もダメ!
「安静」と言われた場合、基本的には外出禁止だと思われます。車の運転は座ってできるとはいえやめましょう。また、スーパーで買い物をするのも動きますし、荷物も重くなりがち。夫や家族に頼んだり、宅配などを使った買い物配送サービスの利用をしましょう。
Q.椅子に座って料理するなら大丈夫?
A.短時間で、どうしても…の場合のみに
座って行うとはいえ、調理をするのはなるべく控えて。お茶をいれる、自分の昼の食事をレンチンする程度など、どうしてもという場合のみ、簡単に短時間ですませてください。基本的には夫や家族に任せましょう。
Q.掃除機や洗濯は、してもいい?
A.基本ダメ!
掃除機をかけるのも、洗濯をするのも、思う以上に負担がかかると思います。家事は基本、夫や家族に任せるか、家事代行サービスなどの利用を。どうしてもの場合は、洗濯物を少しだけ取り込む程度に。
そのほか、こんなことはOK?
Q.上の子のお世話はしていい?
A.体に負担のかからない愛情表現を
可能ならば人にお願いし、お世話は必要最低限に。その分、愛情表現は存分にしてあげて。立って抱っこするのは避けて、座って抱っこを。
Q.セックスはしてもいい?
A.おすすめしません
体に負担ですし、精子には子宮収縮を促す物質も含まれますから、安静中は禁止。夫婦の愛情表現は、手をつなぐ、一緒に寝るなど、おだやかなスキンシップで安心感を得ましょう。
Q.体重管理はどうしたらいい?
A.産院で食事&栄養の相談を
動きが制限されて、消費エネルギーもその分減るため、体重増加は気になるところ。だからといって食べる量を極端に減らすのはNG。産院でどうするか相談し、リモートでの栄養指導があれば受けるなどして、なるべくバランスのとれた食事になるよう気をくばりましょう。
取材・文/北原直実、たまごクラブ編集部
自宅安静は、家でのんびりゆったり過ごすことが基本です。指示されたときに、どこまで行動していいのか医師に確認することが重要。「これくらいなら」と思うことが、おなかの赤ちゃんには負担となることもあります。迷うような行動は、やめておきましょう。入院ではなく自宅安静だから大丈夫と楽観せずに、慎重な行動を。おなかの赤ちゃんのために安静に過ごしましょう。
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