太りすぎもやせすぎもNG。出産までの栄養と体重管理
低栄養にならないように食生活を見直しましょう
30年ほど前から日本の赤ちゃんの出生体重が減り続け、低出生体重児(2,500g未満の赤ちゃん)の割合が増加しています。併せて、見た目は健康でも、必要な栄養がたりていない「妊婦さんの低栄養化」が問題になっています。
妊娠中は、おなかの赤ちゃんの成長に欠かせない栄養をしっかりとらないといけません。同時に妊娠中は、やせすぎず太りすぎず、適切に体重を管理することが大切です。
そのためには、「高エネルギーで栄養価の低い食べ方」をしないように注意し、1日3食、バランスよく食べる生活を心がけましょう。
昔から日本人が伝えてきた一汁二菜の定食スタイルは食材を幅広く使うため、必然的に栄養バランスが整うのでおすすめです。
メインのおかずの主菜は、肉、魚、卵、豆腐などの大豆製品。主な栄養素はタンパク質で、ママと胎児、それぞれの筋肉や血液、皮膚など、体中の細胞のもとになります。サブのおかずの副菜は、野菜、いも類、海藻など。ビタミン、ミネラル、食物繊維が摂取でき、肌にハリを与えたり、血液をサラサラにするなど、体内環境を整えます。
主食は、ごはん、パン、麺類など体を動かすエネルギーになるものです。その日の活動量に応じて量を調節しましょう。食べきれなかったらおにぎりにしたり、あとで食べる「分食」もいいですね。一汁のみそ汁やスープなどの汁もの。主菜や副菜でとりきれない栄養素を補い、満足感をアップさせるのでおすすめです。
妊婦さんに必須の栄養素とは
妊娠したら必ずとりたい3大栄養素は、葉酸・鉄・カルシウムです。
葉酸は、妊娠初期に積極的にとりたいビタミン。細胞の分裂や成熟を促進し、赤ちゃんの重要な器官をつくるのに不可欠な栄養素です。葉もの野菜やレバー、果物などに含まれます。
鉄は、肉、魚介、大豆製品、野菜、乾物に多く含まれ、血液のもとである赤血球をつくるのに欠かせません。母乳も血液からつくられるので、産後の授乳期にも、より多くの鉄が必要です。
カルシウムは、乳製品や大豆製品、緑の野菜、海藻に多く含まれます。現代の日本人女性は妊娠前からカルシウム不足。妊娠中は赤ちゃんの成長にも欠かせないものですから、しっかりとるようにしましょう。
一方、とりすぎに注意したい栄養素もあります。たとえば、妊娠12週までは、ビタミンA(レチノール)を多く摂取すると、水頭症(すいとうしょう)や口蓋裂(こうがいれつ)など、胎児奇形発生の危険度が高くなると報告されています。ビタミンAが多く含まれているのは、豚や鶏のレバー、あん肝などです。
また、脂肪は、少量でも高カロリーになる上、とくに動物性脂肪の過剰な摂取は肥満の原因になるので注意しましょう。バターやマーガリン、油などをとりすぎていませんか?
油をたくさん使う揚げものや炒めものはできるだけ控え、ゆでる・蒸す・煮るなどの調理法がおすすめです。
塩分のとりすぎは妊娠高血圧症候群(にんしんこうけつあつしょうこうぐん)になりやすくなります。だしをきかせる、かんきつ類で酸味をきかせる、スパイスを活用するなど、薄味でもおいしく食べる工夫をしましょう。
市川香織 先生
文京学院大学保健医療技術学部看護学科准教授 一般社団法人産前産後ケア推進協会 代表理事 日本助産師会出版 取締役、助産師
大学病院、助産師学校教員、厚生労働省、日本助産師会事務局長等を経て、2014年4月より現職。大学での教育・研究活動のほか、産前・産後の女性のケアをはじめとした、女性の生涯の健康を支援する活動を行っています。
※この記事は「たまひよコラム」で過去に公開されたものです。