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9体の胎児人形を使った「いのちの授業」、子どもの自己肯定感にも好影響。助産師と羊毛フェルト作家の2人が伝えたいこと

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妊娠10カ月の胎児人形。重さは約3000g。ずっしりと重い。

妊娠月数と同じ大きさと重さの羊毛フェルト製胎児人形を用いて、小中学校への出張授業やイベントでの展示でいのちの大切さを伝える活動をしている2人のママがいます。助産師で上智大学助教でもある光武智美さんと、羊毛フェルト作家で保育士でもある小林尚美さんに、授業を通して子どもたちに伝えたいことは何か、詳しく話を聞きました。

いのちのはじまりは「3億分の1」、を伝える活動

3カ月と4カ月の胎児人形。重さの目安に、消しゴムや缶詰も並べてある。

――小・中学校で「いのちの授業」をすることになった経緯を教えてください。い。

小林さん(以下敬称略) 私と光武さんは、子どもたちが小学校の同級生でママ友でした。私は羊毛フェルト作家をしていて、以前制作した9体の胎児人形を保管していました。この人形を何かに活用できないかと考えていて、助産師の光武さんに相談したんです。

光武さん(以下敬称略) ちょうどそのころ、私は助産師として命の大切さを子どもたちに伝えたいな、と考えていたところでした。小林さんの話を聞いて、胎児人形を用いておなかの赤ちゃんの成長過程を伝えることで、子どもたちが命について考えるきっかけになるんじゃないかな、と。

そこで2人で話し合って、小学校のPTA活動として、子どもたち向けに「いのちの授業」を始めました。2010年3月には胎児人形を展示した「いのちのおもさ展」を大分県内で開催しました。展示は開催2日で100名以上の来場者があり、問い合わせも多かったことから、活動を本格化し、2012年には写真絵本を自費出版しました。

――小・中学校での授業のプログラムについて、どのような内容か教えてください。

小林 講座ではまず受講証カードを配るんですが、このカードには受精卵の実際のサイズが描かれています。ごくごく小さな、白い点です。そして、この受精卵ができる確率は3億分の1であることを伝えます。自分がどれだけ貴重な存在かを知ってほしいという思いです。

そして9体の胎児人形を、4gの2カ月からはじめ3000gの10カ月まで順に抱っこしてもらいます。受講者全員が抱っこし終わったら、感想や学びを語り合ってもらい、最後にスライドで胎児の成長過程を振り返ります。

光武 この授業の進め方になるまではいろいろと試行錯誤しました。たとえば受講者100人全員が9体の人形を抱っこするのは時間がかかるので、1人につき2体ずつのように部分的に抱っこして、感想を共有する方法にしたこともありました。でも部分的に抱っこしただけでは、少しずつ大きく重くなる胎児の成長がなかなか体感として伝わっていない印象でした。

やはり、胎児の大きさ・重さが時間によって徐々に変化する過程を体感してもらうほうがいいだろうと試してみたら、子どもたちの反応や感想が全然違ったんです。私たちの意図を超えて、子どもたちが自分ごととして体験しているというのがわかったので、2カ月から10カ月まで順に抱っこしてもらう方法を大切にしています。

胎児人形に触れる人は皆、優しく大切に扱ってくれる

――授業では、胎児人形を抱っこしたあとにどんな話をするのでしょうか?

光武 私たちからは「命は大事ですよ」といったメッセージを伝えることはあえてしていません。抱っこをした素直な感想を、自由に話し合ってもらうことを大事にしています。子どもたちは胎児の成長を自分自身と重ね合わせて考えてくれるようです。
中学生では「自分の命を大切にしたい」「親に感謝したい」ということや、さらに「自分が親になったとき子どもを大切にしたい」と感想を話してくれることが多いです。私たちが求めている以上のものを感じてくれる様子に感動します。

小林 小学生では「自分を大切にしたい」「お友だちを大切にしたい」とか、「お母さんってすごいんだな」と話す子もいます。自分が3億分の1の確率で生まれたこと、消しゴムほどの大きさから今まで成長していることを知って、自分自身が大切な存在だと気づいてくれる子もいます。双子の子どもは、「お母さんのおなかにこのお人形が2人分入っていたんだね!」と驚いて話し合う姿もありました。

――子どもたちは胎児人形をどんなふうに抱っこしていますか?

小林 講座の初めに、抱っこのしかたや注意事項を伝えますが、みんな大切に扱ってくれます。胎児人形は首のところが新生児と同じようにぐらぐらするんですが、子どもたちはそのことにびっくりしながら、首を支えるようにそっと抱っこしてくれますよ。子どもたちに抱っこしてもらって、人形が床に落ちたことは1度もありません。

――ふざけていたずらしてしまうこともないですか?

光武 そういうことはまったくないんです。学校の先生からよく聞くのは「普段元気な男の子たちが静かに授業に参加している、すごくていねいに優しく抱っこしている」という驚きの声です。子どもたちは注意事項をきちんと守ってくれるし、ふざける子はほとんどいませんよ。

授業を通して2人が伝えたい思いとは?

中学校での「いのちの授業」の様子。いのちのおもさHPより。

――小林さん、光武さんが授業を通して子どもたちに伝えたいことはどんなことですか?

小林 命が生まれてくるのは奇跡ということを伝えたいです。
私は胎児人形を作っていて強く感じたのは、人形はおもりなどを入れて作りましたが、人間は小さな点のような受精卵から、10カ月で脳や内臓や血管が作られて、約3000gの重さになって、「オギャーッ」て泣いて生まれてくる。これは本当にすごいことだな、と。
子どもたちには、ママのおなかの中でそうやって育って生まれてくることは奇跡だと知ってほしいと思います。

そしてそれと同時に、赤ちゃんを育てることは尊い経験だということも知ってほしいです。私はこの活動を始めた後に保育士の資格も取りましたが、人間が育つには環境もすごく大事だと感じています。ママやパパだけでなく周囲の人たちも子育てを支援できる世の中になるために、子育てを身近に感じてほしいと思います。

光武 私はこの授業が子どもたちの自己肯定感を育てるきっかけになればいいなと思っています。日本の子どもたちは他国に比べて自己肯定感や自己有用感が低いといわれています。自分に自信がないと、自分を責めすぎたり、人を攻撃したり、という問題にもつながることもありますし、早すぎる性行為につながってしまうことも。
胎児人形を抱っこして「自分も大切な存在なんだな」と知ってもらうことで、自己肯定感を育てる一助になればと考えています。

――「いのちの授業」が性教育につながる面もあるでしょうか?

小林 私たちの授業では直接的に性教育をすることはありませんが、抱っこして体験してもらうだけで十分伝わるものがあると思います。
胎児人形は5カ月にはすでに人間の形をしています。もし、正しい性知識がなく、妊娠してしまったら堕胎すればいい、という考えの子がいたとしても、胎児人形を見て抱っこしたら、「5カ月でこんなにも人間らしく育っている」と命の大切さが伝わると思います。

コロナ禍のこの2年間は授業ができませんでしたが、これからも少しずつ、小中学校の子どもたちだけでなく、たくさんの人に「いのちのおもさ」を伝えていきたいと思っています。

お話・監修・画像提供/小林尚美さん、光武智美さん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

現在、小林さんは大分、光武さんは東京の2拠点で活動をしています。コロナ禍で小中学校の授業は行えなかったそうですが、2022年には都内の中学校2校で再開できたのだとか。光武さんは「これからもPTA講座などで各地で講演を行いたい」と話します。

いのちのおもさHP

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

小林尚美さん(こばやしなおみ)

PROFILE
羊毛フエルト作家。女子美術大学芸術学部工芸科卒業。中学・高校の美術・工芸教員1種免許取得。保育士・幼稚園教諭2種免許取得。カワイ絵画教室講師などを勤め、2019年、アトリエ杵築オープン。絵画工作教室、オンラインレッスンなどの指導を行う。2012年光武氏とともに羊毛フェルト製の胎児人形を使った「いのちのおもさ展」「いのちの授業」の活動開始。

光武智美さん(みつたけともみ)

PROFILE
助産師。上智大学総合人間科学部看護学科助教。博士(健康科学)。大学病院や産科医院、助産院などでの勤務、地域の赤ちゃん訪問やパパママ教室など幅広く活動。2012年より小林氏とともに羊毛フェルト製の胎児人形を使った「いのちのおもさ展」「いのちの授業」の活動開始。2016年より現職。

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