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妊婦の5~10%が発症する妊娠高血圧症候群。朝食を抜くとリスクが増加する可能性が【研究発表】

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居間で朝食を食べる若い日本人女性
●写真はイメージです
west/gettyimages

妊婦の5~10%が発症し、妊娠中のさまざまなトラブルの原因になる妊娠高血圧症候群。妊娠中に朝食を抜く生活をしていると、発症のリスクが高くなる可能性があることが、調査によってわかりました。この調査を行った東北大学大学院 医学系研究科 分子疫学分野 博士課程2年の相澤美里先生と、東北大学東北メディカル・メガバンク機構 分子疫学分野 講師の村上慶子先生に聞きました。

妊娠高血圧症候群は、ママと赤ちゃん両方のリスクになり得るもの

妊娠高血圧症候群は、妊娠中に最も頻繁に起こる合併症。妊婦の5~10%が発症していて、妊娠高血圧症候群による妊産婦の死亡は、世界中で年間7万人以上いるといわれています。

「妊娠高血圧症候群が重症化すると、母体側の脳や内臓の血管がダメージを受け、けいれん発作や脳出血、分娩前に胎盤がはがれる常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)など、さまざまなトラブルを引き起こすことがあります。さらに、胎盤を通して赤ちゃんに血液が供給されにくくなることで、おなかの赤ちゃんは発育不全になるリスクがあります(相澤先生)

朝食を抜く生活が定着すると、血圧が高くなる可能性が

相澤先生・村上先生たちの研究グループは、日本人妊婦を対象にして、朝食を食べる頻度と妊娠高血圧症候群発症の関連を検討しました。

「対象にしたのは、2013から東北大学東北メディカル・メガバンク機構が行った、妊婦とその家族を対象に健康状態などを追跡する三世代コホート調査に参加した妊婦のうち、必要項目に回答した1万8786人(平均年齢31.4才)を分析したデータです。
朝食の摂取頻度を尋ねたところ、毎日食べる1万3945人、週5~6回の1882人、週3~4回の1284人、週0~2回の1675人でした。朝食欠食と妊娠高血圧症候群との関連を検討したところ、朝食を食べる頻度が低い妊婦で妊娠高血圧症候群発症のリスクが高いという結果が得られました」(相澤先生・村上先生)

朝食をとる頻度が低いことで妊娠高血圧症候群を発症するリスクが高くなる理由のひとつとして、概日リズムとの関係が考えられるそうです。

「人間の体内には生命活動を維持する体内時計があり、妊娠中はホルモンやそのほかの生理的変化によって体内時計が変化します。体内時計は光、食事、運動の影響を受けるため、体内時計を調整するためには規則正しく食事をとる必要があります。とくに1日の始まりの食事である朝食を抜くことは、体内時計に調整されている概日リズム(※1)の乱れにつながります。

血圧は概日リズムに従って変動していて、通常は起床とともに徐々に上がり、日中に高さのピークを迎え、夕方から夜にかけて下がっていきます。概日リズムの乱れは朝の高血圧と関連しますが、朝食を摂取することで血圧が低下する可能性があります。さらに、朝食を食べないとストレスホルモンであるコルチゾール濃度が上昇して血圧が上がる可能性も、これまでの研究で報告されています。

なお、概日リズムの乱れは生殖リズムを乱し、卵巣や子宮の機能障害を引き起こす可能性も、これまでの研究から示唆されています」(相澤先生)

「朝食をとる頻度が少ない妊婦は、年齢が低い、喫煙割合が高い、初産、不眠傾向にあるなどの理由で、さまざまな栄養素の摂取量が少ない傾向にありました。統計学的な方法で調整することで、これらの影響を可能な限り取り除きましたが、因果関係まではまだ言えません。引き続き調査・検討を行っていくことが必要です」(村上先生)

※1概日リズム/体温などの自律神経系、内分泌ホルモン系、免疫・代謝系、睡眠・覚醒リズムなどは、体内時計によって約1日のリズムに調節されており、この約1日の周期をもつリズムのことを概日リズムと呼ぶ。

朝食を抜いて昼・夜にたくさん食べることも妊娠高血圧症候群のリスクを高める可能性が

妊娠前から妊娠初期の朝食摂取頻度の低さと妊娠高血圧症候群の関連は、とくに1日のエネルギー摂取量が多い群で強かったとのこと。朝食を抜いて昼食以降にたくさん食べることと、妊娠高血圧症候群はどのような関係が考えられますか。

「イギリスの成人を対象とした研究では、朝食からのエネルギー摂取量が多い人は高血圧発症リスクが低く、夜遅い時間のエネルギー摂取量が多い人はリスクが高くなることが報告されています。また、朝食と夕食のどちらから多くエネルギーを摂取したほうがよいかを調べた介入研究では、朝食でエネルギーを多く摂取したほうが、体重と腹囲が大きく減少し、空腹時血糖や耐糖能異常(※2)が大きく改善されたことが報告されています。
これらの知見から、妊婦においても朝食を抜いて昼食と夕食にたくさん食べる生活は血圧の上昇につながり、妊娠高血圧症候群のリスクを高める可能性があると考えられます」(相澤先生)

妊娠高血圧症候群ではない一般的な高血圧も、朝食を抜くことが影響していることが、ほかの研究から示されているそうです。

「日本の成人を対象とした多目的コホート研究では、朝食を抜くことにより脳出血のリスクが上昇する可能性が示されています 。脳出血の最も重要なリスク因子は高血圧で、とくに、早朝の血圧上昇が重要なリスク因子であると考えられています。朝食を抜くと空腹によるストレスなどから血圧が上昇することや、朝食を食べると血圧上昇を抑えられることも報告されています。
これらの報告から、妊娠の有無を問わず、朝食を抜くことは高血圧に影響していると考えられます」(相澤先生)

※2耐糖能異常/空腹時の血糖値が正常値と異常値(糖尿病と判断される値)の間にある状態。放置すると糖尿病になる可能性が高くなる。

和風・洋風の「のっけめし」で、無理なく朝食を食べる習慣をつけよう

妊娠高血圧症候群の原因は解明されていませんが、食事法によるリスク低下を示す報告がされています。

「先行研究では、妊娠高血圧症候群のリスク低下と関連がみられた食事パターンとして、地中海食(※3)、新北欧食(※4)、DASH食(※5)が挙げられています」(相澤先生)

※3地中海食/イタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸の国々の人が食べている伝統的な料理のこと。果物や野菜を豊富に使用する、乳製品や肉より魚を多く使う、オリーブオイル、ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物をよく使う、食事と一緒に適量の赤ワインを飲む、という特徴がある(妊娠中は禁酒)。

※4新北欧食/全粒穀物、天然魚、狩猟肉、じゃがいも、根菜、キャベツ、果物、野生または栽培のベリー類など、北欧の気候に適した食品を主食とする北欧食に、環境の持続可能性と地球への配慮が加わった食事。

※5DASH(ダッシュ)食/「DASH」は、Dietary Approaches to Stop Hypertension(高血圧を防ぐ食事方法)の略。1990年代にアメリカで提唱された高血圧予防・改善を目的とした食事方法。野菜を1日5食程度、果物を1日5食程度、炭水化物を1日7食程度、低脂肪乳製品を1日2食程度、赤身の肉製品を1日に2食以下程度、ナッツ・種子を週に2~3回程度食べるのが典型。

昼夜にたくさん食べる食習慣が定着しているママが、無理なく食習慣を変えていくにはどうしたらいいでしょうか。

「朝食を抜く原因は仕事のシフトの関係や睡眠不足などさまざまな要因が考えられますが、夕食を遅い時間にとることも要因の一つ。遅い時間に食べてから寝ると、起床時におなかがすいていなくて、朝食を食べる気になりませんよね。
成人を対象とした介入研究では、夕食を2回に分割して食べることで血圧が下がり、体重が減少した報告があります。仕事から帰るのが遅くなるなどの理由で、遅い時間の夕食にたくさん食べている妊婦さんは、夕食に食べる予定にしていたものの一部を、翌日の朝食に食べるようにしてみましょう」(相澤先生)

朝食を食べる習慣がないママでも食べられそうなメニューや、朝食を作る時間がないときにおすすめの朝食を教えてください。

「朝食を食べる習慣がない妊婦さんが、いきなり朝食にいろいろなものを食べるのは大変ですよね。炭水化物とタンパク質は体内時計のズレをリセットする効果が高いという報告があるので、まずはその点から意識してみましょう。
ごはん派の妊婦さんは、ごはんに卵や納豆、冷凍枝豆、しらす、鮭そぼろなどをかける、パン派の妊婦さんは、食パンにチーズやツナ缶、ミニトマトや冷凍ブロッコリーをのせるなど、主食の上に食べられそうな食品をONする『のっけめし』がおすすめです。

朝食を作る時間がない、作る元気がないときなどは、コンビニで鮭おにぎりとゆで卵、ツナサンドとヨーグルトなど、炭水化物(ごはん・パンなど)とタンパク質(卵や乳製品など)を組み合わせて購入すればOKです。

栄養バランスのいい食事というと難しく感じますが、『日本人の食事摂取基準(2020年版)』をもとに作成された『妊産婦のための食事バランスガイド』に沿って食事を考えれば、必要な栄養素を過不足なくとれ、妊娠高血圧症候群の予防にもつながります。無理なく食べられそうものを選び、朝食をとることを習慣づけてほしいと思います」(相澤先生)

お話・監修/相澤美里先生、村上慶子先生 取材・文/東裕美、たまひよONLINE編集部

朝食を食べる習慣をつけることは、妊娠高血圧症候群のリスク低下につながる可能性がありそうです。朝食を抜いているママは、無理なく食べられるもので朝食を食べる生活に変えていきましょう。

※妊産婦のための食事バランスガイド
https://www.mhlw.go.jp/content/000788598.pdf

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

相澤美里先生生(あいざわみさと)

PROFILE 
東北大学大学院 医学系研究科 分子疫学分野 博士課程2年。管理栄養士。公衆衛生学修士。民間企業で特定保健指導や食環境整備を行った後、大学院にて栄養疫学の研究を行っている。

村上慶子先生(むらかみけいこ)

PROFILE
東北大学東北メディカル・メガバンク機構 分子疫学分野 講師。公衆衛生学修士。博士(医学)。妊婦を中心とした家族に関するコホート調査(長期健康調査)を軸に、公衆衛生学の研究・教育に従事している。

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