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10年ぶりの第4子の妊娠。妊娠8カ月で破水。病院で「赤ちゃんに胃がない」と言われて・・・【VATER症候群・体験談】

更新

1歳2カ月。こども病院に入院する巧輝くん。

児童発達支援・放課後等デイサービス「ふたば」の管理者で、看護師の折本弥子さんには、19歳、16歳、14歳、5歳の4人の子どもがいます。末っ子の巧輝(こうき)くんは、複数の臓器に先天異常が見られるVATER症候群(ふぁーたーしょうこうぐん)と診断されています。VATER症候群は、V=椎体(ついたい)の異常、A=肛門の形態異常、TE=気管食道瘻、R=橈骨(とうこつ)の奇形および腎の形態異常の頭文字からなっていて、V、A、TE、Rのうち3つ以上先天異常があると診断されることが多いです。
折本さんに、VATER症候群と診断されるまでのことについて聞きました。
全2回インタビューの前編です。

看護師の仕事をしながら、定期的に妊婦健診へ

生まれてすぐの巧輝くん。

折本さんは、中学生のころから看護師になるのが夢でした。

「子どものころから母に『将来は、自立できる仕事につきなさい』と言われていたこともあり、中学生のころから『人と深くかかわれる看護師の仕事がしたい』と思うようになりました。
高校卒業後に、看護師を目指せる短期大学に通い、看護師になりました。
夫は理学療法士です。夫とは職場で出会いました」(折本さん)

第4子の巧輝くんを授かったのは、折本さんが37歳のときです。

「当時、私は総合病院の看護師で、管理職でした。上の子たちは、中学生と小学生。仕事と子育ての両立で、とにかく忙しい毎日で、妊婦健診も日程を調整しながら通っていました。実は妊娠をしながら仕事をしていたのは4人目が初めてで、妊娠後期に入ると『おなかが大きいね』と言われることが多かったです。4人目だからかな? なんて考えていました。

私が妊婦健診で通っていた産婦人科は、分娩を扱っていなかったため、出産前に転院しなくてはいけなかったのですが、妊婦健診のたびに医師からは『元気ですよ』と言われていて、とくに気になることは何も言われませんでした」(折本さん)

妊娠8カ月で破水。出産予定の病院で「胃がない」と言われる

生まれてから、右手の親指の欠損も判明。橈骨(とうこつ)がないため、手が内側に曲がっている。

妊娠8カ月(妊娠30週2日)で折本さんは、破水してしまい事態は急変します。

「夜中に少量ずつ水が出るのを感じて、出産を予定していた病院に電話をしたところ『すぐに来てください』と言われました。分娩する病院を受診するのは、その日が2回目でした。

夜間だったので、医師が1人しかいなかったのですが、エコー検査をした医師からすぐに『胃がない』と言われたんです。すぐに大きな病院に搬送されることになりました。
私は『えっ?』と思って驚いたものの、『大きな病院に搬送されたら、どうにかなるかも・・・』と考えました。看護師という仕事柄か、このときは比較的冷静に受け止められました」(折本さん)

搬送先の病院で、脳室拡大、背骨が曲がっていることなどもわかる

1歳8カ月。抱っこしているきりんのぬいぐるみは、ママの妹からの贈り物。

折本さんが大きな病院に搬送されたのは、早朝4時のことでした。

「コロナ禍だったので、夫は付き添うことができませんでした。そのため夫には、自宅で上の子たちを見てもらうことにしました。

朝一番で、さまざまな検査を受けました。エコー検査も1時間ぐらいかかったのですが、4人ぐらいの医師がエコーでおなかの赤ちゃんをじっくり見ながら『胃と食道がつながっていない』『脳室が拡大している』『背骨が曲がっている』『指が見えない』『鎖肛(さこう・直腸や肛門の形成異常)がありそう』と話しているんです。
医師たちの会話が聞こえてきて、頭が真っ白になりました。それと同時に『産休までは大丈夫と思って、仕事を頑張りすぎたせいかも・・・』『4人目だから大丈夫と、どこかで過信していたのかも・・・』といろいろと考えしまい、自分を責めていました」(折本さん)

検査後入院していた病室で、涙が止まらなかったこともあったと言います。

「私自身が看護師だったこともあり、看護師さんから声をかけられると『忙しいから手をわずらわせてはいけない』と思って、反射的に『大丈夫です』と答えていました。

でも助産師さんが何度も病室に来てくれて、じっくり話を聞いてくれたときは涙が止まらなくて・・・。自分を責めていることや家族への思い、これから生まれてくる赤ちゃんへの思いなど、心の中にうず巻いている思いをすべて話しました」(折本さん)

生まれてすぐにこども病院へ搬送。胃ろう造設術を行うことに

1歳9カ月のころ、理学療法士のパパと一緒に。

折本さんが出産したのは、破水から4日後。巧輝くんは身長39.3cm、体重1430gで誕生しました。

「帝王切開で巧輝は生まれました。産婦人科、新生児科、小児科、麻酔科などの医師や看護師がそろい、こんなに多いの? と戸惑ったぐらいです。

生まれてすぐに小さな産声が聞こえましたが、その後は処置が施されて、すぐにこども病院に搬送されました。

巧輝は、胃と食道がつながっていないので生まれてすぐに胃ろう造設術を受けなくてはいけませんでした。夫がこども病院に向かい、手術の同意書にサインをしました」(折本さん)

自分を責め続けていた折本さんを支えてくれたのは、夫や産婦人科の医師でした。

「夫は、運動機能の回復などをはかる理学療法士です。医師から、食道と胃がつながっていないとか、脳室が拡大しているなどと説明されたとき、夫は『大丈夫です。私がリハ(リハビリテーションのこと)します!』と言うんです。
コロナ禍だったので、夫は医師の説明に同席できず、スマホのビデオ通話で話を聞いていたのですが、医師が『〇〇がない』『〇〇がない』と説明するたびに『大丈夫です』と言うんです」(折本さん)

折本さんは、夫の『大丈夫』という言葉を聞いて、もしかしたら乗り越えられるかもかもしれないと、自然と思えてきたそうです。

「また出産後、若い産婦人科の医師が、私の病室に来て『申し訳なかった』と謝るんです。
『破水した妊婦さんにかなりのストレスを与えてしまって申し訳なかったです。本当なら、先天異常は妊娠20週ごろから見つかって、お産の計画を立てられることがベストです。でも生まれてから、先天異常が見つかってあわてるより、破水したことでここに運ばれて準備できたことはよかったと思います。

だんなさんが、本当に冷静に話を理解し、受け止めてくださったのが、私にとっても救いでした。このご夫婦の間に生まれるべくして、生まれてきた子なんだって思います。
自分に置き換えて考えても、本当に大変な現実だし、つらい1日だったと思います。子どもは無限の可能性を秘めています。スタートよりこれからが大事なことは、既に子育てされているお母さんなら、よくわかっていると思います。
妊娠初期からここまで強い子に育ててから産んでくれてありがとうございました。赤ちゃんを代表して僕からお礼を言いたいです』と言うんです。

この言葉を聞いたときに、涙が止まりませんでした。すばらしい医師だと思いました。医師からの言葉で、自分を責める気持ちが少しずつやわらぎました」(折本さん)

【石田先生から】原因不明のVATER症候群

VATER症候群(VATER連合ともいう)は、V=椎体異常、A=肛門奇形、TE=気管食道瘻、R=橈骨奇形および腎奇形という5徴候の頭文字の組み合わせで命名され、3徴候以上で診断されます。さまざまな臓器にわたって生まれつきの異常が生じますが、その原因は不明です。5徴候以外にも異常を認めることが多く、症状が多岐にわたるため、出生直後からNICU(新生児集中治療室)での入院治療が必要です。合併症に応じて、外科手術が必要になることも多く、長期にわたり合併症ごとの継続的な治療とリハビリが必要です。

お話・写真提供/折本弥子さん 監修/石田智己先生 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部

▼続きを読む<関連記事>後編

巧輝くんは、2歳でVATER症候群と診断されました。難病情報センターのサイトによると、VATER症候群は、海外の文献では出生1万人~4万人に1人程度と予測されていますが、国内の発生頻度は不明。平成22年度の研究班の調査では、全国の患者数は最大500名程度と推定されています。
インタビューの後編は、巧輝くんがVATER症候群と診断されたことやきょうだいの葛とうについて紹介します。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2025年6月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

折本弥子さん(おりもと やこ)

PROFILE
看護師として、総合病院などで勤務。巧輝くんの誕生をきっかけに、重症心身障害児および医療的ケア児とその家族が、安心して暮らせる社会の実現を目指して、保育士資格も取得し、2023年4月、千葉県袖ケ浦市に医療的ケア児や重症心身障害児を対象にした児童発達支援・放課後等デイサービス「ふたば」を開設。2025年4月には、千葉県市原市にも同施設をオープン。株式会社HIMAWARI取締役。

児童発達支援・放課後等デイサービス「ふたば」のHP

石田智己先生(いしだ ともき)

PROFILE
君津中央病院 医務局新生児センター新生児科部長。平成19年東海大学医学部卒。日本小児科学会小児科専門医。日本周産期・新生児医学会周産期専門医(新生児)。日本周産期・新生児医学会指導医。日本周産期・新生児医学会新生児蘇生法「専門コース」インストラクター。日本新生児成育医学会暫定フォローアップ認定医。災害時小児周産期リエゾン。

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※上記の投稿は、アプリ「まいにちのたまひよ」ルームに投稿されたものから引用しており、アイコン画像やユーザ名など一部編集しています。



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