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妊娠25週で破水し、緊急帝王切開で772gの赤ちゃんを出産。生後72時間は危険な状態と言われ・・・【体験談】

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産後翌日、日奈さんはNICUに入院した愛乃ちゃんに初めて会いました。

北海道に住む髙橋日奈さん(35歳)は夫の正樹さん(仮名・40歳・公務員)と長女の凛ちゃん(9歳)、二女の愛乃ちゃん(4歳)の4人家族です。二女の愛乃ちゃんは日奈さんが長女の春休みで実家に帰省中だった妊娠7カ月のときに、緊急帝王切開で生まれました。出生体重772g、身長31cmの超低出生体重児だった愛乃ちゃん。出産当時のことについて、日奈さんに話を聞きました。全3回のインタビューの1回目です。

妊娠経過は順調のはずが、妊娠25週の明け方に突然破水して・・・

看護師だった日奈さんは、転勤族の夫と結婚するために退職して、引っ越しをし、程なく第1子を妊娠しました。長女は予定日を7日過ぎて3546gで生まれました。長女の産後数年してから、2人目を授かりたいと考えて妊活をしていたと言います。

「ずっと赤ちゃんが欲しくて妊活していたのですが、なかなか妊娠しませんでした。長女出産からは4年ほどたっていたある日、長女が幼稚園で赤ちゃんを抱っこしている絵を描いてきたことがありました。長女がその絵を私に見せながら『赤ちゃんが欲しいの。神様お願いします!』と祈っていたんです。なんとその数日後に2人目の妊娠が判明しました。

家族みんなで赤ちゃんの誕生をとっても楽しみにしていました。妊娠経過は順調だったので、妊娠7カ月のとき、当時住んでいた道央の自宅から、車で4時間の距離にある道東の私の実家に春休みだった長女と2人で帰省をしました」(日奈さん)

帰省中の4月初めのある朝のことです。日奈さんは明け方におしっこが止まらないような感覚で目が覚めました。

「尿もれかな、と思ったけれど1時間しても止まらず、親に相談したら『破水じゃないの?』と。長女のときは分娩台の上で破膜(はまく)してもらったので、私は破水がどんな感じかわからなかったんです。すぐにかかりつけの病院に電話すると、やはり破水だと言われました。実家から車で1時間半ほどの場所にある系列病院に連絡をして受け入れ可能か聞くこと、受け入れが無理そうなら救急車を呼ぶように、と指示を受けました」(日奈さん)

幸い電話した病院で受け入れ可能だったため、日奈さんは長女を連れ、実母の運転で1時間半かけて病院へ向かいました。

「到着した病院での診察の結果は、羊水(ようすい)がほとんどからっぽの状態とのこと。私は何も考えずに車の座席に何枚もタオルを敷いて座っていたんですが、そのせいで羊水がたくさん流れてしまったようでした。本当は横になって移動しないといけなかった、と後から看護師さんに言われました。

赤ちゃんの推定体重も1000g未満のためその病院では産めないし、産んだとしても助かる可能性は低いと説明されました。順調だったはずなのに、まさかこんなことになるなんて・・・」(日奈さん)

あまりのことに気持ちが追いつかないまま、日奈さんはそこからさらに、総合周産期母子医療センターがある病院に救急搬送されることになりました。

「『赤ちゃんが無事に生まれるかわからない』と言われ、最初に考えたのは長女のことでした。赤ちゃんが欲しいと神様にお願いしてくれて、誕生をとっても心待ちにしてくれていました。もしこのまま赤ちゃんに会えないとわかったら、どれほど悲しむだろうか・・・、長女になんて伝えたらいいのか、と、長女のことばかり考えていました」(日奈さん)

生後72時間生きられるかどうかの不安

愛乃ちゃんが生後1カ月を過ぎたころ。搾乳した母乳を綿棒で与えてあげる日奈さん。

病院に到着すると、日奈さんに39度を超える発熱があるとわかり、感染を起こしているためすぐに緊急帝王切開をする準備が始まりました。

「私は緊急帝王切開で麻酔を受けた直後から強い吐きけがあって、そのことで精いっぱい。『赤ちゃんが生まれたよ』と教えてもらっても、しっかり見られる余裕もない状態でした。看護師さんに聞いたところでは生まれたときにちょっと産声をあげたそうです。生まれてくれた、とわかり少しだけほっとして、長女の顔を思い浮かべました。二女はすぐに保育器に入れられて処置のために運ばれたので、その日は二女には会えませんでした」(日奈さん)

午後2時ごろに生まれた赤ちゃんは、出生体重772g、身長31cmの超低出生体重児でした。道央の自宅にいた正樹さんは、日奈さんの実母から連絡を受けすぐに出発しましたが、道東の病院までは車で3時間かかる距離。出産には間に合わなかったそうです。

「赤ちゃんが無事かどうかわからない不安と、帝王切開の時の吐きけとで心身ともにつらい出産でしたが、手術室から病室に戻ると夫がいてくれて、その顔を見ただけでほっとして泣いてしまいました」(日奈さん)

その日の夜、実母と長女が実家へ帰ったあとに日奈さんと正樹さんは生まれた赤ちゃんの状況について医師から説明を受けます。

「自分では呼吸ができないので人工呼吸器をつけていることや、生後72時間は脳出血・動脈管開存症により循環が不安定になる可能性があるために厳重な呼吸・循環管理が必要だという説明を受けました。まずは『72時間』をどうにか乗り越えることが大切だということ。医師から告げられたこの『72時間』という言葉は心にとっても重くのしかかってきました。ただ、生きてほしいと願うことしかできませんでした」(日奈さん)

1日のうちに、破水から始まり緊急帝王切開となり、生まれた赤ちゃんは危険な状態と告げられた日奈さん。現実を受け止めることだけで精いっぱいだったそうです。

「順調にいけば 1 カ月程度で呼吸器をはずし、退院の目安は予定日を過ぎるくらいのことが多いという説明もありました。

出産予定だった7月まで今から約3カ月も退院できないとなると、家族がバラバラに過ごすことになる不安もありました。私と長女は実家、二女は病院のNICU(新生児集中治療室)で、夫は病院からから3時間の距離の道央の自宅です。これからの生活がどうなるのか、という漠然とした不安もありました」(日奈さん)

5歳のお姉ちゃんが名づけ親に

お姉ちゃんがママに宛てて書いたお手紙には「あいの」の文字が。

出産の翌日、日奈さんは面会に来た正樹さんと一緒に、NICUにいる二女に面会に行きました。

「産後初めて会った二女は、小さな小さな赤ちゃん。でも人間らしい姿をしていることに少し安心しました。予想以上にたくさんの管につながれた姿はとても痛々しかったです。

長女が生まれたときは『無事に生まれてきてくれてよかった!』という気持ちでいっぱいだったのに、二女のときは『生まれてきてくれてよかった』とも『ごめんね』とも思えなくて・・・772gと小さく産んでしまったことや72時間を乗り越えてこの子は生きられるのか、そんな不安に心がいっぱいに支配されて、ほかの感情はわからないくらいでした。

でも夫は意外とポジティブでした。『生まれてきてくれて、今生きていることがすごいことだ』とずっと言い続けてくれて、夫のそんな前向きな言葉に救われました」(日奈さん)

生まれた赤ちゃんに名前をつけたのは誕生を楽しみにしていたお姉ちゃんでした。

「私が手術室にいる間、待合室で長女が出産している私のために書いた手紙の中に『あいの』という名前がありました。長女に理由を聞くと『みんなに愛される妹になってほしい』と考えてくれたそうです。
私たち夫婦もまさか二女が妊娠7カ月で生まれると思わずに名前もまったく考えていなかったから、長女が考えた名前に大賛成して、漢字を当てはめて『愛乃』とつけました。当時5歳だったお姉ちゃんが愛乃の名づけ親なんです」(日奈さん)

【早坂先生より】家族に支えられて乗り越えた72時間

超低出生体重児は、出生直後から呼吸管理や循環管理を中心とした全身管理が必要となります。とくに生後72時間は急変するリスクがあり、また、それ以降も安心できるとは限りません。赤ちゃんの力を信じながら、NICUスタッフは医療にあたります。家族は定期的な面会しかできず、また、入院が長期になるので、家族の不安や疲労は計り知れない大きさとなります。愛乃ちゃんは、とても大変な状況下で出生しましたが、お姉ちゃんからすてきな名前をつけてもらい、お母さん、お父さんから大きな愛情を受けて頑張ったのだと思います。

お話・写真提供/髙橋日奈さん 監修/早坂 格先生 協力/板東あけみ先生 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

2500g未満で生まれた「低出生体重児」のうち、さらに1000g未満で生まれた赤ちゃんは「超低出生体重児」と言われます。小さく生まれた赤ちゃんは体の機能が未熟なため、生後72時間はとくに状態が急変しやすく危険な状態なのだそうです。不安な気持ちを抱えながら、日奈さんの2人目育児がスタートしました。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年6月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

早坂 格先生(はやさか いたる)

PROFILE
2006年 旭川医科大学卒業。室蘭日鋼記念病院、小児科長。医学博士(北海道大学大学院 医学院)。
日本小児科学会認定 小児科専門医・指導医。日本周産期・新生児医学会認定 周産期専門医(新生児)・指導医。日本周産期・新生児医学会認定 新生児専門医・新生児蘇生法「専門」コースインストラクター。

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