「3人欲しい」と思っていたけれど、まさか一度の妊娠でかなうとは!聞いたときには頭が真っ白に【三つ子の父育児体験談】
神奈川県に住む石井琢也さん(32歳・会社員)と妻の真理奈さん(29歳・専業主婦)の夫婦に三つ子が誕生したのは、2023年2月のこと。快人(かいと)くん、彩葉(いろは)ちゃん、碧人(あおと)くんは、現在生後7カ月になりました。真理奈さんが三つ子を妊娠しているとわかったときのことや、三つ子が生まれたときの喜びについて、琢也さんに話を聞きました。
初回の健診で双子と言われ、翌週の健診で三つ子と聞いて頭が真っ白に
2019年の夏に友人の紹介で知り合った琢也さんと真理奈さん。出会ってすぐに意気投合し1年半の交際期間を経て結婚。結婚当初から真理奈さんと「子どもは3人くらいほしいね」と話していたそうです。真理奈さんの妊娠がわかったのは、結婚から1年半ほどたった2022年7月のこと。当時2人は琢也さんの仕事の都合で、それまで住んでいた神奈川県から名古屋に引っ越ししたところでした。
「妻が体調の変化を感じ産婦人科を受診したら、妊娠しているとわかりました。初回の健診で胎のうが二つ見えたから双子だと言われたのですが、翌週に再度受診したら三つ子だと判明しました。
その日仕事から帰宅した僕は、妻から『三つ子だって』と告げられ、数秒間頭が真っ白の思考停止状態に。身近に三つ子だった人も、三つ子を育てている人もいないし、実際に三つ子に会ったことも見たこともないし、自分の子育ての想像の域を超えていて、一体どうなるのかまったくイメージがつきません。ぼんやりと『子育てするには手がたりないだろうな』ということだけは感じました。妻はもともと子どもが3人欲しいと希望していたから、まさかの三つ子妊娠にすごく喜んでいました。初めての妊娠で不安もあったと思いますが、それよりも期待が大きかったようです」(琢也さん)
夫婦2人の実家は関東にあるので、三つ子が生まれるとなるとサポートが必要となると判断し、琢也さんは会社に関東での勤務に戻してもらうように異動願いを出します。
「三つ子の妊娠がわかった時点で、自分も育休を取る必要があると考えました。また、何かあったときに頼る親族が関東にいるので、会社には関東への異動をお願いしました。
妻は医師から、三つ子なので妊娠34週で帝王切開による計画出産をすると説明されたそうです。出産予定日は2023年の2月。ハイリスク妊娠のために、その1カ月前から管理入院が必要になること、赤ちゃんは生まれたあとには1カ月ほどはNICUに入院する必要があるということも説明されていました。
そうなると、年明けまでの半年ほどの間に、関東での引っ越し先を探したり、出産する病院を決めたりしなければなりません。妻は多胎児の出産が可能で、引っ越し先を予定している街から通える範囲にある病院をリストアップし、電話をかけて問い合わせるなど、こまかく調べていました。病院選びなども計画的に進めていて、非常に頼もしかったです」(琢也さん)
三つ子の妊娠・出産は母体にとってもハイリスクになります。真理奈さんの両親に三つ子の妊娠を伝える際には、心配させないように説明する準備をして臨んだそうです。
「妻の両親は、妻の体を心配することはわかっていたので、出産までに関東に戻るように手配していること、ハイリスク分娩になるけれど計画出産で管理入院をするから安心して、ということなど、妻がていねいに説明していました。義母は驚きと心配とで涙を流していました。でも、『おめでとう』と喜んでくれました。
僕の両親も同じようにすごく驚きながらも、とっても喜んでくれました。会社の人や友人たちに『妻が三つ子を妊娠した』と伝えると、みんな驚いて3秒くらい時間が止まって『えっ何が?』と聞き返すような反応をしていました。驚きますよね」(琢也さん)
ジェンダーリビールおにぎりで性別発表!
おなかの赤ちゃんたちの性別がはっきりしたのは真理奈さんが妊娠5カ月となった10月ごろのこと。真理奈さんは“ジェンダーリビールおにぎり”を作って琢也さんに赤ちゃんの性別発表をしたそうです。
「アメリカには“ジェンダーリビールケーキ”といって、ケーキの中身がぶどうなら男の子、いちごなら女の子、などとケーキの中身の色やフルーツによって赤ちゃんの性別をサプライズ的に発表するイベントがあるそうです。うちの場合は、妻がおにぎりの具で性別を発表してくれました。三つ子なのでおにぎりは三つ。三つ並んだおにぎりの具が昆布なら男の子、鮭なら女の子、というのが妻の説明でした。最初に食べた二つのおにぎりは昆布で、三つ目で鮭が出ました。僕は3人のうち1人は女の子がいいと思っていたので、とってもうれしかったです。思わず『ガーーール!』と叫びました(笑)」(琢也さん)
その後、真理奈さんは11月から関東近郊の実家で暮らし、琢也さんは名古屋で過ごしながら、リモートで引っ越し予定の神奈川県内の新居の内見をするなどして新生活の準備をします。年が明けて1月9日に新居へ引っ越し、その翌日の1月10日から真理奈さんは出産予定の病院へ管理入院しました。
「そのころには妻のおなかは見るからにはち切れそうなほどパンパンで『こんなにふくらんで大丈夫なんだろうか』とこわいくらいに大きくなっていました。妻自身は、それほど体の痛みもなかったようで元気にしていましたが、見ている僕としてはとても心配でした。
おまけにコロナ禍の管理入院だったため、出産して退院するまでいっさい面会禁止になっていたんです。僕は仕事が休みの土曜日に洗濯物を受け取りに行き、日曜日に洗った洗濯物と2リットルの飲料水をケースで差し入れる、ということを1カ月間毎週していました。届けるだけで妻に会えないのでとっても心配でした。できるだけ電話で声を聞いて話していました」(琢也さん)
生まれた直後から3人それぞれの個性を感じた
そして、妊娠34週となった2月中旬のある日の午前、予定帝王切開で三つ子が誕生しました。1人目の快人(かいと)くんは身長42.5cm・体重1593g、2人目の彩葉(いろは)ちゃんは身長42.6cm・1886g、3人目の碧人(あおと)くんは身長44cm・体重1877gでした。
「病院からは、帝王切開出産の立ち会いも、産後の赤ちゃんとの面会も不可、と言われていたんです。そのため僕は午前中は自宅でリモートで仕事をして、万が一何かあったらすぐ出られるようにしていました。でも、生まれた直後に病院から電話で赤ちゃんに会ってもいいと連絡があったので、午後は休みを取ってすぐに病院に向かいました。
30分ほどして病院へ到着し、保育器に入った3人に会うことができました。3人とも小さく生まれたために呼吸器のチューブや点滴がつけられた状態でした。保育器に手を入れその小さな体に触れてみると『生きてるんだな・・・』と感動しました。3人ともこんなにも小さい体で、それでも3人それぞれの個性があるように感じました。快人は物静かそうでキリッとしてクールな感じ、彩葉は堂々としている印象、碧人はぼくが触れた手を握り返してくれて、愛嬌がある子なんだなと感じました。
子どもたちに会えたのはとてもうれしかったんですが、妻には面会できませんでした。看護師さんから、妻は麻酔の影響や貧血が進行して産後にぐったりしていると聞き、産後の妻の体調が心配でたまりませんでした」(琢也さん)
三つ子たちが生まれる前には、妊娠34週の低出生体重児で生まれるために、肺の病気や未熟児網膜症などの目の病気、黄疸などの可能性があることを医師から説明されていた琢也さんたち。しかし三つ子の健康状態はほとんど問題なく、生後1週間で保育器から出ることができたそうです。
心配された真理奈さんの体調も徐々に回復し、真理奈さんは産後8日ほどで退院。三つ子たちは体重が2500gを超えるまで、約1カ月ほどNICUに入院をすることになりました。三つ子の名前は妊娠中に性別が判明したのと同時に、2人で考えて決めていたのだと言います。
「“快人”は、僕の父の戒名から1文字もらい、こころよい、気持ちがよい人でいてほしいという思い。“碧人”は、自分の名前の琢の字にもある王があること、美しい海のように魅力的な輝きのある人でいてほしいという思いがあります。“彩葉”は葉のようにみずみずしく力強く、彩り豊かに生きてほしいという思いを込めました。男の子たちにはきょうだいで支え合ってほしいという願いを込め、人の字をつけました。生まれたときに感じた3人それぞれの個性を存分に伸ばしてあげられるように、見守りながら育ててあげたいと思います」(琢也さん)
「三つ子の妊娠・出産は驚きの連続!」(真理奈さん)
「初めての妊娠がまさかの三つ子で心底驚きました。出産直前には腹囲が100cm近くまでふくらんで、『こんなにおなかの皮って伸びるんだ!』ということにも驚きました(笑)。産後、3人はすぐに保育器でNICUに行ってしまい、私は産後に発熱したり貧血があったりして体調が悪くなってしまったので、3人に会えたのは産後2〜3日後でした。NICUの保育器にいた三つ子たちはそのときにはすでに呼吸器のチューブも外れていて、夫が出産直後に撮って送ってくれた写真よりも3人ともふっくらしているようで、こんなにも赤ちゃんの成長は早いんだな、と感じました。
出産までの管理入院中は時間を持て余すくらい暇でしたが、3人を出産後、体調が回復すると目まぐるしく忙しい日々が始まりました。私の入院中は、3時間ごとに搾乳し、三つ子にその母乳やミルクを飲ませ、自分の食事時間やシャワーの予約時間も決まっているので、夫と電話する間がないほど忙しかったです。私の退院後には、三つ子に母乳を届けるために毎日面会に行きました。病院の面会制限は厳しかったんですが、NICUだけは毎日何時間でも面会できたので、日々の三つ子の成長を見に行くのがとっても楽しみでした」(真理奈さん)
すやすやねんねのニューボーンフォト
NICUを退院後に自宅で撮影したニューボーンフォト。右から碧人くん、彩葉ちゃん、快人くん。
和風の衣装でお宮参りの記念写真
生後3カ月のころにお宮参りの記念写真。3人ともばっちりカメラ目線!
お食い初めは鯛焼きで?!
生後4カ月のころに家族でお食い初めのお祝い。鯛の代わりに三つの鯛焼きが並んでいます。
お話・写真提供/石井琢也さん、真理奈さん 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部
琢也さんは三つ子が生まれてから、その日々の育児の様子をインスタグラムで発信しています。「三つ子の子育てのリアルな状況を知ってほしいという思いもあるけれど、何より子育ての幸せや楽しさが伝わったらうれしい」と琢也さん。夫婦二人三脚で三つ子の育児に奮闘しています。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年8月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。