女優・美馬アンナさん、二児のママに。先天性欠損症で生まれつき右手のない息子にようやく妹ができた!夫婦で「何があっても大丈夫」という覚悟で二人目妊活へ 。
今年8月に女の子を無事出産し、二児のママとなった女優・美馬アンナさん。千葉ロッテマリーンズで活躍するプロ野球選手・美馬学さんと、4歳になる長男・ミニっちとの4人家族になり、忙しいながらも穏やかな日々を送っています。ミニっちが先天性欠損症により、右手首から先がない障害をもって生まれてきたことから、美馬さんご夫婦が二人目を望むまでの決意と覚悟、不安ながらに迎えた出産当日の様子を聞きました。
家族の力強いサポートのもと、二人目育児がスタート
――ご家族が4人になりましたが、どんな毎日を送られていますか?
アンナさん(以下敬称略):8月22日に第二子となる“ひめっち”が産まれました。出産後は実家にしばらくいたので、両親など家族のサポートがある中で二人目育児がはじまったこともあり、今のところは、私1人で2人の子育てにいっぱいいっぱいという感じではないです。
最近自宅に戻ってきたのですが、母がサポートに来てくれたり、夫もシーズンが終わったのでかなり助かっていますね。夫には、ここからしばらくは、子育てシーズンに入ってもらいます(笑)。
――息子さんの障害のことがあって、第二子の出産はどんな思いで臨まれましたか?
アンナ:生まれるまでは、とにかく不安でした。いろいろな検査もしましたし、自分の中では100%と思えるぐらいまで準備をして出産に臨みました。でもやっぱり、検査がすべてではないし、検査をしたから大丈夫とは思わなかったです。
自分の両親にも、「いろんな検査をして、体のどこかが欠損しているという状況ではなさそうだけれど、生まれてからわかる病気もあるし、育っていく過程で発症する病気もあるし、こればかりは100%ではないから。検査をして問題なかったからよかったね、ではないからね」と伝えました。そして夫とも、「何があっても大丈夫。私たちは大丈夫。子どもに何があっても、受け入れられる自信がある」という思いを確認し合っていたし、私はそんな覚悟をもって臨んだ出産でした。
――今回は計画出産だったということですが、当日はどんな様子でしたか?
アンナ:前置胎盤だったので帝王切開に決まり、37週で少し早めの計画出産になりました。実はその週に母の誕生日があったので、娘も同じ誕生日を選んだのですが、母がすごく喜んでくれました。
今回は帝王切開に決まったので、術前に3回ほどに分けて採血をしておき、自己血輸血ができるように準備をしました。手術日当日、実は夫はナイターゲームに行かなければならなかったのですが、手術を朝一番でしてもらえることになって、夫もそばにいてくれたんです。両親も息子も病院に来てくれて、みんなで手術室まで見送ってくれて、とてもリラックスした雰囲気でした。
手術中は下半身麻酔をしているし、私からは先生方の手元が見えないようになっているのですが、先生が「赤ちゃん、出たよ〜」「これが赤ちゃんの重さだよ!」など、常に声をかけて教えてくれたんです。生まれた直後に赤ちゃんの姿は見えませんでしたが、重さを胸元にしっかり感じることができました。
赤ちゃんに対面で会えたのは、手術室の外でした。私が手術室を出たら、家族みんなが待っていてくれて、そこに先生と助産師さんが赤ちゃんを連れてきてくれたんです。
私は助産師さんに、「大丈夫ですか」「赤ちゃん、ちゃんと息をしていますか」などと聞いてしまいましたね。やっぱり、自分自身でも不安だったんだなと思いました。でも先生方も、「大丈夫だよ」とは言わないんです。「まだ生まれたばかりだし、何があるかはわからないよ」ときちんと言ってくださいました。そんな先生の取り繕わない言葉に、私は感謝の思いが強かったですね。
――息子さんの反応はどうでしたか?
アンナ:息子は、ちょっと戸惑いみたいなものを感じていましたね。息子の中の赤ちゃんって、たぶんキューピーみたいなかわいいイメージだったんだと思うんです。でも、生まれたての赤ちゃんの姿が、それとはだいぶ違っていたんだと思います(笑)。「この子が、ママのおなかの中にいた赤ちゃん?」って感じで。不思議な感覚でもあるし、なんだか恥ずかしそうでもありましたね。
でも最近では、日に日にお兄ちゃんらしくなってきました。「おむつ持ってきて〜」とお願いすれば持ってきてくれたりも。自分の大事な妹で、自分よりも弱い存在というのもわかっているんだと思います。お兄ちゃんとしての息子を見られることも、幸せなことなんだなと実感しています。
――出産後の体調はいかがですか?
アンナ:先生には手術後、帝王切開をした人とは思えないほど元気ですねと言われました。術後すぐは流動食だったんですが、それがどうしても耐えられなくて、「私大丈夫なんで、普通のごはんを出してください!」と言ってしまったほどです(笑)。想像していたよりも、ずっと動けたように思います。
私の場合は、一人目の自然分娩の後の方が、何億倍も辛かったです。30時間、終わりの見えない痛みに耐えながら、いったいいつ出てくるのかわからないし、いきむこともできないし…。産後もとにかく痛いし、食欲も全然なくて。そんな最悪の体調に加えて、息子の右手のことがあったので、目の前が真っ暗という感じでした。
二人目の出産では、最初は無痛分娩を希望していました。でも結局、帝王切開になってしまってそれは叶わなかったですが、自然分娩と同じぐらいの感動は得られましたね。
よく、無痛分娩や帝王切開だと、赤ちゃんを産んだ感動が半減してしまうんじゃないかと言う方もなかにはいますが、そんなことは全然ないなと思いました。
障害があることでたくさんの壁がある。だからこそ、親は覚悟が必要
――障害のあるお子さんを持つママの中には、次のお子さんの出産や遺伝について心配される方も多いと思います。当事者として、アンナさんが伝えたいことはありますか?
アンナ:命を産み、育てることなので、きれいごとは言えないです。子どもを育てることは本当に大変なことだし、障害があることで、これから考えていかないといけないことも増えると思います。
私は、妊娠を望む場合に、次の子について真剣に考えることが、まずは大切なことなんじゃないかと思っています。私たちも、次の子が生まれて、上の子と同じような環境で、同じように愛情を注いで育てられるかというのを真剣に考えました。そして、同じように育てられる自信ができたから、二人目を作ろうと決意したんです。
私たち夫婦は自然妊娠が望めなかったこともあって、より、二人目のことをしっかりと考える時間が持てたのかもしません。
もし、次の子を望んでいるのであれば、「何があっても大丈夫」という覚悟を持つべきなんじゃないかなと。今の状況で子どもが生まれて、その子を幸せにできる自信があるかどうかです。お世話するとか、可愛がるとかではなくて、心を育てるのにとても大切な時期に、全身全霊で愛を注いであげられるか、育ててあげられるかを考えてあげるべきだと思っています。一人目で全然余裕がないんだったら、二人目はまだ考えるべきじゃないし、何よりも子どものことを第一に考えてあげてほしいですね。
子どもができて「やった!」じゃなくて、じゃあこれからどうしようかと準備をすることが大事。検査をするのもその一つだし、しっかり知ることも大切だと思います。
私も妊活を経験してきたからわかるんですが、子どもが欲しくて、欲しくて仕方がないと、気持ちが妊娠することばかりになっちゃうんです。でもそうじゃなくて、子どもを幸せにしてあげられる自信ができたから、子どもを望んだり、妊活をするということが大切なんじゃないですかね。
――次の子を望むのであれば、どんな準備や心構えが必要だと美馬さんは考えますか?
アンナ:やっぱり、世間はそんなに優しくはないので、障害がある子どもが我慢することもあるし、乗り越えないといけないことはたくさんあります。
だからこそ、それをサポートしていける器を親が持たなくてはいけないですよね。それは、障害がある子も、たとえ今は健常な子であっても、この先何があるかわからないですから、同じように覚悟が必要です。この覚悟を持つために、妊娠中に検査を受けるのもひとつだし、もし病気が見つかって産むという選択をした場合にも、いろいろな知識を身につけておくこともそのひとつ。
私は生まれてから息子に障害があると分かったこともあり、その頃は知識が全くなかったので、前を向くのにも時間がかかってしまいました。その子を産む覚悟をする、その子と一緒に生きていく覚悟をする、サポートしていく覚悟をするべきだと思います。
私も長男を出産したあと、すぐに覚悟ができなかったし、出産前はまさか障害があるとは思ってもいませんでした。でも私の場合は、まわりのサポートがあったからこそ、覚悟を決めることができたのかもしれません。でも、みんながみんな、サポートが得られるわけではないですよね。だからこそ、きちんと自分の環境を知ったうえで、子どもを望んで、育てていくべきだなと思うんです。それは、障害があるないに関わらず、命あるものはみんな同じなんですよね。
私も母親になって、ずいぶん強くなりました。今、二人目が生まれて3カ月経って、長男の時のことをよく思い出すんです。右手の障害のことを知って、すごく暗い毎日を過ごしていて、前を向くまでにすごく時間がかかりました。
あの時、もっと早く前を向くことができていたら、もっともっと息子が愛しかったかもしれない、もっともっと写真や動画が多かったかもしれないと、今、昔の写真を見返してあの時の自分を思い出す時があります。でも息子のおかげで今はそう思えるし、娘が生まれてからのこの3カ月間がすごく愛おしいのかなと思います。4年経って、それを気づかせてくれた息子には感謝ですね。
写真提供/美馬アンナさん、取材・文/内田あり、たまひよONLINE編集部
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2023年12月の情報で、現在と異なる場合があります。
<プロフィール>
美馬アンナさん
1987年生まれ、女優、タレント。2014年に、プロ野球選手の美馬学氏と結婚。(現・千葉ロッテマリーンズ所属)。2019年10月に長男を出産し、先天性欠損症(右手首欠損症)と診断される。2023年8月に第2子となる女の子を出産。