妊娠初期の出血は何が原因? 心配のない出血と注意すべき出血とは【医師監修】
妊娠初期に出血があると、多くのママは不安になります。たしかに、注意しなければならない出血はありますが、妊娠経過やおなかの赤ちゃん、出産に影響しないケースもたくさんあります。どんな原因で出血が起こるのか、注意したい出血はどんな特徴かを、産婦人科医の山下先生監修のもとわかりやすく解説します。いずれにせよ、出血があったら自己判断せず、産院に相談が必要になります。
妊娠初期の出血のおもな原因は?
妊娠の最初のステップとして、受精卵は卵管を通って子宮に到着し、子宮の内側を覆っている子宮内膜(しきゅうないまく)にくっついて着床します。そして受精卵は子宮内膜にもぐりこんで成長するのですが、それと同時に子宮内膜も受精卵を受け入れるためにダイナミックに変化します。子宮の血液量も増え、刺激で出血しやすい状態になります。
これらの理由から妊娠初期は出血しやすい状態であり、出血しても妊娠経過に影響ない場合も多いのですが、出血がどこで起きているのか、原因はなにかによって注意度は変わります。
注意が必要な出血
鮮やかな赤色の出血、少量だけれど出血を繰り返す、おなかの張りや痛みを伴うというような場合は、なんらかのトラブルの可能性があります。
異所性妊娠(子宮外妊娠)/いしょせいにんしん(しきゅうがいにんしん)
受精卵が子宮の中以外の場所に着床してしまう状態のこと。妊娠反応が陽性でも、子宮内に赤ちゃんが入っている袋である胎囊(たいのう)が見えない場合に疑われます。卵管に着床するケースがほとんどで、卵管から出血した血液がおなかにたまり、下腹部痛や少量の出血が見られることがあります。そのままにしておくと、卵管が破裂してしまうため、たいへん危険です。
胞状奇胎/ほうじょうきたい
胎盤のもととなる絨毛(じゅうもう)組織が、異常に増殖してしまう病気。ごく初期は正常な妊娠との区別がつきにくいですが、つわりの症状が強く、茶褐色のおりものや出血がだらだらと続く場合も。確定した場合は、子宮の内容物を除去する手術を行い、その後も通院して様子をみます。
絨毛膜下血種(大きいもの)/じゅうもうまくかけっしゅ
胎盤が完成するまでの間に、胎嚢を包む絨毛膜と呼ばれる膜の外側と、子宮内膜の間に血のたまりができている状態です。小さいときは自然に吸収されますが、たまりが大きいと流産につながる恐れがあるため安静を指示されることも。
切迫流産/せっぱくりゅうざん
妊娠22週未満に出血や下腹部の痛みなどがあるものの、赤ちゃんの心拍が確認でき、正常妊娠が継続している状態をいいます。流産と症状が似ていますが、必ずしも流産につながるわけではありません。絨毛膜下血種による出血であることも。
流産/りゅうざん
妊娠12週未満の流産を「早期流産」、妊娠12週0日~22週未満の流産を「後期流産」といい、流産の9割以上を早期流産が占めます。原因のほとんどは受精卵の染色体異常によるもので、残念ながら食い止めることはできず、ママが何かをしたから、しなかったから起こるということではありません。
子宮頚管無力症/しきゅうけいかんむりょくしょう
子宮から腟(ちつ)につながる子宮頚管が、自覚症状もなく開いてしまう病気。本来ならば、出産時までしっかりと閉じていなければいけない時期に開いてしまうため、流産や早産の原因となります。
子宮頸管ポリープ/しきゅうけいかんぽりーぷ
子宮頚管にできる良性のポリープで、出血することはありますが、痛みはなくほぼ無症状。大きさや位置、医師によって対処が異なります。
脱落膜ポリープ/だつらくまくぽりーぷ
妊娠すると子宮内膜の脱落膜が厚くなりますが、その一部が子宮口から出ている状態。
子宮頚がん(・子宮腟部びらん)/しきゅうけいがん
子宮頸部にできるがんで、自覚症状がないことも多く、妊娠初期の検査がきっかけで発見されることもあります。
また、腟の奥、子宮の入り口近くが赤くなっている子宮腟部びらんの場合は、多くは生理的なものですが、子宮頸がんの発生部分と同じ場所であるため、がんの病変がないか検査します。
心配の少ない出血
出血が薄茶・茶色・ピンク色で、少量が1回きりといった場合は、妊娠経過に影響するような原因ではないことが多いようです。
着床出血/ちゃくしょうしゅっけつ
受精卵が着床したときに起こる出血。本来の生理予定日ごろに起こります。
絨毛膜下血種(小さいもの)
胎嚢を包む絨毛膜と呼ばれる膜の外側と子宮内膜の間に血のたまりができている状態。小さいものであれば、自然に吸収されます。
子宮腟部びらん/しきゅうちつぶびらん
腟の奥、子宮の入り口近くが赤くなっている状態。ほとんどが生理的な「仮性びらん」ですが、妊娠中はホルモンの影響で程度が強くなり、内診など少しの刺激で出血することが。
内診後の出血
経腟(けいちつ)プローブでの超音波検査や、視診などを含む内診の摩擦や刺激で出血する場合も。子宮腟部びらんや子宮頸管ポリープがあると、出血しやすい傾向が。
出血があった場合の対処法は?
少量でも出血が見られたら、一度産院に連絡しましょう。出血の原因を知るには診察するよりほかにありませんが、出血の色や量を伝えると、緊急度の高さを判断する目安になります。
出血の色をチェック
色が赤いほど、最近の出血であることを意味します。
出たばかりの出血の色
赤褐色、暗赤色、真っ赤
時間がたっている出血の色
薄茶色、薄ピンク、茶色
出血の量をチェック
500円玉程度以上の量やどんどん増える場合は時間を問わず産院に連絡しましょう。
〈出血量が少ない〉 | |
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おりものに混じる程度 | |
下着に軽くつく程度 | |
500円玉程度の量 | |
生理2日目くらいの量 | |
レバー状のかたまり | |
さらさらとした血液が流れ出る | |
〈出血量が多い〉 |
出血の回数・期間をチェック
基本的には、1度でも出血が見られたら産院に連絡を。受診せず様子を見るように言われた場合は、その後の出血の回数や期間によっては、遠慮せずあらためて産院に連絡しましょう。
・少量だがだらだら続く場合
・様子を見るように言われた翌日にも出血があった場合
症状をチェック
出血が少量でも、気になる症状を伴う場合は、産院に連絡しましょう。
・おなかの張りが続くとき
・おなかに強い痛みがあるとき
「自宅安静」と指示されたときに医師と確認しておきたいポイント
出血したとき、医師から「自宅で安静にして」「無理をしないように」と言われることがあります。
多くの場合、日常的な家事をしながら、疲れたら体を休める程度の安静ですが、出血の原因や医師の考え方によって、どの程度安静にするかは違うため、主治医によく確認することが大切です。
□家事はどのくらいまでしていいのか?
□仕事は?
□おふろは?
□買い物、外出は?
専門医が回答!妊娠初期の出血の不安解消Q&A
Q. 妊娠初期に軽い出血を経験しました。その後、出血はなく妊娠継続していますが、無事に出産できるでしょうか。
A. 出産に影響はありません
出血がおさまっていて妊娠経過も順調であれば、出産には何も影響はありません。
Q. 下着に軽くつく程度の茶色の出血がだらだらと続きます。よくあることでしょうか。
A. だらだらと続くというのは心配です
出血量が多くはないとしても、だらだらと続くというのは心配です。産院に相談して一度受診してください。
Q. ピンク色のおりものは心配ないでしょうか。
A. 続くようであれば受診しましょう
少量の出血がおりものに混ざってピンク色になったのでしょう。赤い出血よりも緊急度は低いことが多いですが、続くようであれば受診しましょう。
Q. 下着に1本だけ赤い線がありました。病院に連絡したほうがいいでしょうか。
A. くり返す場合は、一度産院に連絡を
下着に軽くついただけで、それ以上出血が増えたりしなければ、緊急度は低いと考えられます。くり返す場合は、一度産院に連絡を。
Q. 出血があり安静中です。流産の兆候でしょうか。赤ちゃんのためにできることはありますか?
A. 医師の指示を守りましょう
医師は出血の原因を確認したうえで、安静を指示したと思います。まずはその指示を守ることです。流産の兆候である可能性もゼロではありませんが、出血したケースの多くはその後止まり、正常に経過します。まずは医師の指示を守りましょう。
監修/山下隆博先生 取材・文/茂木奈穂子、たまひよONLINE編集部 マンガ/上田惣子 図版デザイン/はしもときみえ
【先輩ママのリアルボイス】「妊娠初期の出血」に関する体験談
妊娠・出産経験のあるたまひよアプリユーザーに「妊娠中に出血した経験はある?症状を教えて」と質問したところ、妊娠初期の出血経験は40%と最も高い結果に。妊娠初期の出血がどんな症状だったかを紹介します。
赤ちゃんの袋が確認でき、来週には、心拍が確認できたら母子健康手帳が貰えるかもしれない頃に、お散歩をしていたら生理初日くらいの量の赤い出血がありました。運悪く連休中で、病院も開いておらず、過去に、化学流産の経験があったので、また、ダメかもしれないと不安で。ネットで情報を調べれば調べるほど更に不安に。出血が続いたものの、おなかに痛みは無かったので、連休明けまで我慢して、すぐ病院に行きました。診察結果は、絨毛膜下血腫でした。赤ちゃんの心拍が確認でき、母子健康手帳を無事に受け取った時に、やっと第一関門を突破できたとホッとしました。(やぐ** さん)
生理が遅れていたので妊娠したかどうかなと思っていたところで、生理の始まりのような薄い血が少量、その数日後に鮮血が少量。鮮血が出たのをみてだめだったかなと思いつつ、産婦人科に行くと、切迫流産の診断でした。(ゆっ** さん)
鮮血が一滴だけでした。特に痛みもなく、受診時も問題視されませんでした。(しら** さん)
子宮頚部のびらんで出血。お風呂に浸かった時に、血が浮いていたぐらい。(まあ** さん)
最初の2日くらいは茶色のおりものだった。健診で子宮の収縮を防ぐ薬を処方されたが、次の日には赤い出血が起きて、その次の日に腹痛と大量出血で流産した。(すみ* さん)
生理より多い量が出て焦りました。塊も多く諦めていたのですが、しばらくして出血は落ち着いたものの、結局、稽留流産となりました。(ゆき* さん)
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※体験談コメントはアプリ「まいにちのたまひよ」内、同じ出産月のママ・妊婦さん・パパ同士で情報交換できるコーナー(ルーム)に寄せられた投稿を再編集したものです。
妊娠初期の出血はとても心配になるもの。まずは、産院に相談することですが、医師からの説明を理解し、不安なことがスムーズに聞けるよう、正しい知識をもっておきましょう。
●記事の内容は2024年7月の情報であり、現在と異なる場合があります。