妊婦さんのRSウイルス感染症ワクチン定期接種化スタート!知っておこう、RSウイルス感染症ってどんな病気?
赤ちゃんがかかりやすい感染症の中でも感染力が強いと言われているRSウイルス感染症は、生後6カ月未満の赤ちゃんが感染すると重症化のリスクがあると言われています。2026年4月から妊婦さんのRSウイルス感染症ワクチンの定期接種が始まると言われている今、あらためて知っておきたいことや対策を香川大学医学部教授の金西賢治先生にお聞きしました。
★記事の最後にアンケートご協力のお願いがあります。ぜひ最後までお読みください。
お話伺ったのは…
Q.RSウイルス感染症が2才までの子どもがほぼかかる病気というのは本当ですか? 感染するとどういうことが心配でしょうか?
Q.赤ちゃんが感染するとどんな症状が…
金西先生(以下敬称略) RSウイルス感染症は、2才までにほぼすべての子どもがかかると言われている感染症です。もちろん、2才以上の子どもから大人まで幅広くかかるリスクがありますが、一般的には、風邪のような症状で治まってしまうことも多いため、軽い感染症と認識している人が多いようです。一方で、年齢や月齢によっては重症化のリスクが高い感染症でもあります。乳児期の感染症が治まっても、小児期になって気管支喘息につながってしまうこともあり、非常に厄介な感染症です。
とくに生後6カ月未満の赤ちゃんや早産児、持病のある赤ちゃんが感染すると、肺炎や細気管支炎など、呼吸症状が強く出るため、入院が必要になることもあります。しかも、例年は感染のピークが冬でしたが、近年はピークが早期化し、1年中流行している地域もあります。
金西 38〜39℃の発熱、鼻水、咳のほか、肩を上下させながらの呼吸や、呼吸時にゴホゴホ・ゼイゼイと音を鳴らす、ぐったりするなどの症状が見られることがあります。このような症状があったら、すぐに受診をしましょう。RSウイルス感染症には有効な抗ウイルス薬がないため、感染が確認された場合は、対症療法で症状をやわらげることになります。赤ちゃんの場合は、入院になるケースも多く見られます。
Q.赤ちゃんは、生後6カ月ごろまではママからもらった抗体で守られていると聞きますが、それでもRSウイルス感染症にかかってしまう可能性があるのでしょうか?
金西 たしかに、赤ちゃんはママのおなかの中で胎盤を通して免疫成分を受け取ります(母子免疫)。また、母乳にも免疫成分が含まれていて、生後6カ月ごろまでは赤ちゃんを感染症から守る働きをします。ただ、生後6カ月未満でも、必ずしも病気にならないわけではありません。免疫のない感染症や、家族がかかった病気が感染することはあります。
実際、生後間もない赤ちゃんがRSウイルス感染症に感染するルートは、ママやパパ、きょうだいなど家庭内での感染が多いと言われています。感染を予防するには、一般的な風邪対策と同じように、家族などが手洗い・うがいなどを徹底することも大切です。
――生まれてきた赤ちゃんに対して、RSウイルス感染症を予防する方法はないのでしょうか?
金西 RSウイルス感染症に対する抗体を赤ちゃんに直接投与することで、赤ちゃんへの感染や重症化を予防できる抗体薬はあります。ただしこれらの薬は、早産児や心疾患のある赤ちゃん、ダウン症候群の赤ちゃんなど、感染リスクが高い赤ちゃんに対して保険適用で投与できるものです。一方、健康に問題のない赤ちゃんには、原則として保険が適用されません。そのため、現時点では、生まれてきた赤ちゃんをRSウイルス感染症から守る選択肢が限られているというのが現状です。
――もう1つ、百日咳も生後間もない赤ちゃんが感染すると重症化しやすいと言われています。百日咳の感染ルートや症状についても教えてください。
金西 百日咳は、短い咳や乾いたような咳が2週間から数カ月にわたって続く感染症です。生後2カ月から5種混合ワクチン(百日咳・破傷風・ジフテリア・ポリオ・ヒブ)が定期予防接種として開始されていますが、新生児や生後2カ月未満の赤ちゃんにも感染することがあります。新生児や乳児が感染すると、呼吸が停止したり、意識がなくなったりするなど重症化するおそれがある、注意が必要な病気です。
2024年秋以降、百日咳は増加傾向にあるため、注意が必要です。日本ではきょうだいからの感染が多いことがわかっていますが、現状では生後2カ月未満の子を予防する方法がありません。
Q.2026年の4月から、妊婦さんに接種できるRSウイルス感染症母子免疫ワクチン※が「定期接種」になるとのことですが、そもそも「母子免疫ワクチン」とはどのようなものですか。
金西 妊娠中にワクチンを接種することで、母体の中の細胞と反応して抗体がつくられます。抗体は胎盤を通じて赤ちゃんに移行します。つまり、ママがワクチンを接種することで、そのまま赤ちゃんに必要な抗体を届けることができるのです。ママを通して、生まれた直後からRSウイルス感染症から赤ちゃんを守ることが期待されます。
これまでもRSウイルス感染症の母子免疫ワクチンは接種できましたが、自費での接種だったため費用がかかり、接種したくても断念する人が多かったのです。
2026年4月以降に出産を予定されている方は、公費でRSウイルス感染症の母子免疫ワクチンを接種できます。もっともワクチンの接種が有効とされている妊娠28〜36週の妊婦さんが1回接種することが推奨されています(予定)。ワクチンの手続きについては妊娠の届け出を提出した自治体からのお知らせがあるかと思いますので、お待ちください。
Q.妊娠中にRSウイルス感染症ワクチンを接種しても大丈夫なのですか?
金西 もともと諸外国では、乳児の感染症予防として、RSウイルス感染症だけでなく、百日咳などに対する母子免疫ワクチンが普及していました。
母子免疫ワクチンは
・1万人規模の妊婦さんの調査によって安全性が実証済み
・2024年2月に厚生労働省から有効性と安全性が確認され、承認を受けている
上記のことから、安心感につながるのではないかと思います。
ワクチン接種後の副反応についても、腫れや痛み、軽度の発熱など一般的なものはありますが、重篤な副反応はまれです。
現時点では、生まれた赤ちゃんをRSウイルス感染症から守る有効な選択肢のひとつが、妊婦さんが接種する母子免疫ワクチンです。おなかの赤ちゃんを守る最初の一歩として、ぜひ検討してみてください。
Q. インフルエンザなどのほかのワクチンとの接種間隔について教えてください。
金西 インフルエンザワクチンは、冬の流行に備えて接種する方がほとんどだと思います。それに対して、RSウイルス感染症ワクチンの効果が高いとされているのは、日本では季節に関係なく妊娠28〜36週ですので、時期をずらして接種することが可能です。
インフルエンザ予防接種とRSウイルス感染症ワクチンは同時接種が可能な場合もありますが、副反応の可能性も考え、あえて2つのワクチンを同じ日に接種する必要はないと思います。いずれも妊婦さんにとっては重要なワクチンですので、体調を見ながら、医師と相談のうえ余裕をもったスケジュールで接種しましょう。
――最後に、妊娠を考えている方や妊娠中の方にメッセージをお願いいたします。
金西 これから妊娠する方や、現在妊娠中の方は、正しい知識と情報を得て、赤ちゃんを感染症から守りましょう。日常生活では、まずはママやパパなど周りの大人や、きょうだいも含めた家族で、手洗い・うがいなどの基本的な感染対策を徹底しましょう。そのうえで、予防対策としてのワクチン接種を検討していただきたいと思います。必要以上に怖がる必要はありませんが、不安なことや心配なことがあれば、妊婦健診のときなどにかかりつけの医師にぜひ相談してみてください。
※2024年2月に承認された厚生労働省が有効性・安全性を認めているワクチンです。
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提供/日本産科婦人科学会


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