妊娠中の出血[妊娠週数別]産院に連絡するかどうかの判断ポイントは?
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全ての人におこるわけではありませんが、妊娠中には出血が見られることもあります。今回は、万が一出血してしまった場合も冷静に対応できるよう、出血の主な原因と対処法、産院に伝えるポイントについて産婦人科医の小川隆吉先生に教えていただきました。
ごく初期の出血は、安静にして治まらなければ受診
妊娠初期の出血は、多くの場合しばらく安静に過ごして治まれば、心配ありません。ただし、生理用ナプキンを交換するほどの出血や鮮血、おなかの張りや痛みを伴うなど、安静にしても治まらない場合は早めに受診しましょう。
妊娠12週以降は少量の出血でも受診を
妊娠12週から後期にかけて注意したいのは、切迫流産や切迫早産、胎盤の位置異常、常位胎盤早期剝離による出血が起きた場合です。とくに医師から胎盤の位置が低めと言われている場合は、大出血につながる心配があります。少量の出血でも産院に連絡して受診しましょう。
赤ちゃんへの影響の心配が少ない出血
12週以降に出血しても、下記のように診断されれば、赤ちゃんへの影響はそれほど心配する必要がありません。まずは受診を。
1.子宮頸管ポリープからの出血
ポリープからの出血は感染の原因になることがあるため、切除する場合がありますが、お産のときに自然にとれるので、頻繁に出血しなければ様子を見るにとどめます。
2.腟内のびらんからの出血
びらんとは、子宮の入り口の粘膜がただれている状態。少しの刺激で出血することがありますが、痛みはありません。妊婦さんに限らず、多くの女性に見られる生理的な症状です。
赤ちゃんへの影響が心配な出血の原因
出血の原因は、妊娠週数によってさまざま。ママの体や赤ちゃんへの影響も違ってきます。いざというときのために、代表的な症例を知っておきましょう。
【妊娠初期】の出血の原因
●異所性妊娠(子宮外妊娠)
受精卵が子宮内ではなく、卵管などに着床した状態。卵管破裂を起こすと腹腔内で大出血を起こし、ママの命にかかわります。
●早期流産(妊娠12週未満の流産)
胎児の心拍確認前後に流産してしまうこと。ほとんどは胎児の染色体異常が原因。多くの場合、かなり多めの出血がありますが、初めのうちは少量で徐々に増えるというケースも。
●切迫流産
妊娠22週未満に出血があり、子宮口が閉じていて、胎児心拍を確認でき、子宮内から胎囊が出ていない状態。出血量は、多いことも少ないことも。出血が見られても、妊娠が継続できるケースは多くあります。
●腟炎・子宮頸管炎
腟や子宮頸管になんらかの感染が起こり、炎症が起きたところから出血することがあります。感染が子宮内へと進むと、流産・早産につながる可能性も。
【妊娠中期】の出血の原因
●絨毛膜下血腫(じゅうもうまくかけっしゅ)
胎盤がつくられる過程で、子宮壁の血管が破れて出血したり、絨毛膜と子宮内膜の間に血液がたまって血のかたまりができ、体外に排出されることがあります。
●子宮頸管無力症
子宮口が閉じているべき時期に子宮頸管が短くなり、子宮口が開いてしまう病気。自覚症状がないため、早期発見のためにもきちんと健診を受けることが大切です。
●前置胎盤(ぜんちたいばん)
普通は子宮内の上のほうにできる胎盤が、子宮口の全部または一部を覆ってしまう位置にある状態。胎盤がはがれやすく、出血しやすいので注意が必要です。
●切迫早産
妊娠22週以降に早産しそうな状態になること。おなかの張りや痛み、子宮頸管が短くなるなどの症状が見られたら、管理入院や安静生活が必要になります。
【妊娠後期】の出血の原因
●常位胎盤早期剝離(じょういたいばんそうきはくり)
赤ちゃんが子宮内にいるうちに、胎盤がはがれてしまうこと。ママから酸素や栄養が届かなくなるため、赤ちゃんの生命が危険な状態に。子宮の収縮や激しい痛みを伴いますが、無症状で進行することもあります。
出血したら自己判断は禁物です! 今回紹介した受診の目安を参考に、産院に連絡をとりましょう。また、出血しているときは細菌感染を起こす可能性があります。少量であってもシャワーや入浴を控え、医師の許可を得てから入浴するようにしましょう。(文・たまごクラブ編集部)
■監修:小川クリニック 院長 小川隆吉先生
1975年日本医科大学卒業。同大学産婦人科講師、都立築地産院産婦人科医長を経て、1995年より現職。セックスカウンセラーセラピスト協会会員、日本不妊学会会員。
■参考:たまひよブックス「いつでもどこでもHAPPY妊娠・出産ガイドBOOK」(ベネッセコーポレーション刊)