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胎児に病気や障がいが・・。誰にも相談できない日本の現状を変えようと、産婦人科医が奮闘中「胎児ホットライン」

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病院、医師の行う超音波のクローズ アップ ショットで/超音波検査は妊娠中の女性にスキャンします。産科医の将来の母の腹に探触子を移動します。
gorodenkoff/gettyimages

妊娠すると定期的に通う妊婦健診。「赤ちゃんは元気かな…」と不安になったり、性別がわかるのを楽しみにしたり…と妊婦さんは先生の言葉に一喜一憂する場ですよね。そんな妊婦健診で、もしも赤ちゃんに病気や障がいの可能性を指摘されたら…? 

実は、日本では25人に1人(年間5万人)が、何らかのケアが必要な状態で生まれてきます。ところが、おなかの赤ちゃんに病気や障がいの可能性を指摘されたあと、相談できる先がほとんどないことを知っていますか? たとえば、障がいがある子どもの子育てにはどんなサポートがあるのか、上の子に生まれてくる子の病気をどう説明するのか…。ママ・パパは、こうした多くの問題に自分で立ち向かわなくてはいけません。
日本のこの現状を知った1人の産婦人科医が、「胎児ホットライン」という新しいサービスを立ち上げようと奮闘しています。

イギリスではサポート機関が産婦人科と連携

この問題に立ち上がったのは、産婦人科医で NPO法人 親子の未来を支える会の代表でもある林伸彦先生です。林先生が研修を受けたイギリスでは、30年以上前から家族の意思決定の手助けや心理的サポートする ARC(Antenatal Results and Choices)という組織が、イギリス全土の産婦人科と連携。おなかの赤ちゃんに病気や障がいがわかるとすぐにサポートしてくれるそう。
たとえば口唇口蓋裂(唇や口の中に割れ目が残った状態で生まれる赤ちゃんの先天性異常。日本でも500人に1人の頻度で出生する)がわかった場合には24時間以内にサポート団体につながり、口唇口蓋裂の赤ちゃん向けの哺乳びんなどを無料で提供されるなど、サポート体制が充実しているそうです。
ところが、日本ではおなかの赤ちゃんに病気や障がいの可能性を指摘されても、駆け込める場所はなく、治療可能な病気や障がいでさえ治療という選択を知らずに中絶を決めてしまうママ・パパがいる現実が…。林先生は「十分なサポート体制がない」ということを痛感します。

赤ちゃんにサポートが必要とわかったママたちの葛藤

林先生によれば、赤ちゃんの病気や障がいを指摘されたママはまず、自分を責めてしまうそう。そして、
・家族に理解されない。祖父母にどう説明すればいいかわからない。
・職場の同僚にどう説明したらいいのか。(健康な子じゃないかも、中絶したら?)
・きょうだいにどう説明したらいいのか(病気や障がいのこと、中絶を選んだらどう説明する?)
こういった悩みを一気に抱え、そしてその答えを数日~数週間という短時間で出さなくてはいけないことも多いそう。
実際にママたちからは、
「赤ちゃんの病気が伝えられ、限られた時間と情報の中で決断をしなければいけないこと、本当につらいです。孤独だと感じました」
「ダウン症や難病がありながらも懸命に生きてる子どもたち、その傍らでわが子に寄り添うご家族が、この世界にはたくさんいらっしゃること、わかってはいたけどやはり他人事として考えていたことをあらためて感じました。」
という声も寄せられました。イギリスとの差に驚き、ママたちの葛藤の声を知った林先生は、クラウドファンディングで資金を募り、「胎児ホットライン」の設立をめざすことにしたのです。

胎児ホットラインがめざすもの

「胎児ホットライン」では、以下のような活動を予定しているそうです。
1 相談窓口を設置
出生前診断の前・最中、あとの意思決定サポート、予期せぬ結果に向き合う手伝い、次の妊娠に関する意思決定サポートなど医療面以外も含めたワンストップの相談を受けられるようになることをめざす。
2 ブックレットの作成
「特別なケアが必要な子どもを妊娠した人向け」「上の子への伝え方」「祖父母向け」など、8種類のブッ
クレットを作成し、情報提供を行う。
3 研究
「障がい・病気を理由とした中絶」は、じつは母体保護法では認められていないため「経済的な理由」などにすり替えられており、実数が把握されていない。胎児ホットラインの中で、「産み育ててることができなかった」ときの本当の理由を探り、「安心して産み育てられる世の中」をつくるためのサポートに繋げる。

ほかにも、医療者向けの勉強会も実施予定。現在、すでにサービスとして提供している、同じ境遇の人同士が集うピアサポート「ゆりかご」もより活発化させていく予定。まずはブックレットの作成と相談員の育成などからはじめ、「胎児ホットライン」は2~3年以内の実現をめざしています。現在は、開設に向けて700万円を目指してクラウドファンディングで支援金を募集しています。

従来の妊婦健診で行われる「エコー検査」をはじめ、「母体血清マーカー検査」や最近広がりを見せている「新型出生前診断」のようにママの血液から調べる検査などで、おなかの赤ちゃんの病気や障がいの可能性を知る機会は増えています。林先生が「おなかの赤ちゃんが健康であるかどうか知りたいと思うのは自然なこと」と繰り返していたのが印象的でした。そして「その結果が希望通りの妊娠じゃない時点でベストな選択はない。何を選んでも必ず後悔する瞬間はくる。そういうときにサポートできる場でありたい」と力強くおっしゃっていました。だれにでも可能性があることだからこそ、「胎児ホットライン」の活動が整備され、充実していくことを願います。(取材・文/ひよこクラブ編集部)

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