新型コロナだけじゃない!妊婦さんに知っておいてほしい感染症10
新型コロナウイルスが猛威を振るっていますが、妊婦さんが気をつけてほしい感染症はたくさんあります。なかには、おなかの赤ちゃんに影響を及ぼすものも。今回は妊婦さんにとくに知っておいてほしい10の感染症を紹介します。
風邪
【感染経路】 飛沫感染
【おもな症状】発熱、鼻水、せき、のどの痛み、たんが出るなど。
【治療法】 安静にして、栄養をとります。高熱が続き母体の体力消耗が著しくなってしまう場合には解熱剤を使用することもあります。
【妊娠・出産への影響】 とくに影響はありません。しかし、局所的に感染して炎症がひどい、高熱が続くなどの場合、早産の可能性もゼロではありません。
【赤ちゃんへの影響】 大きな影響はありません。せきやくしゃみがひどくても、胎児に影響することはまずありません。
インフルエンザ
【感染経路】 飛沫感染、空気感染
【おもな症状】鼻水、せき、のどの痛み、38度以上の高熱、全身倦怠感、関節痛など。
【治療法】 安静にして、水分補給を。抗インフルエンザ薬を処方されることも。
【妊娠・出産への影響】 妊娠中は重症化することも。また、肺炎やほかの感染症を併発してしまうと、早産を引き起こす可能性もあります。
【赤ちゃんへの影響】 インフルエンザ感染による影響はとくにありません。
風疹
【感染経路】 飛沫感染、胎内感染
【おもな症状】発熱、発疹、首のまわりのリンパ節が腫れる。症状がほとんど
出ないこともあります。
【治療法】 治療法はなく、症状が治まるまで安静にします。妊娠中のワクチン接種はできません。
【妊娠・出産への影響】 とくに影響はありません。初期の健診で抗体価検査をします。
【赤ちゃんへの影響】 妊娠20週までにママが初感染すると先天性風疹症候群といって、赤ちゃんに難聴などの影響が出る可能性があります。
B群溶連菌(GBS)
【感染経路】 接触感染、胎内感染、産道感染
【おもな症状】自覚症状はありません。
【治療法】 破水したあとや、陣痛が来てから定期的に抗菌剤を投与して赤ちゃんの感染を予防します。生後に感染がわかったら赤ちゃんに抗菌剤を投与します。
【妊娠・出産への影響】 とくに影響はありません。後期の健診で有無を調べます。
【赤ちゃんへの影響】 分娩時に産道感染すると、呼吸障害や肺炎、敗血症、髄膜炎などを発症することも。
麻疹
【感染経路】 飛沫感染、接触感染
【おもな症状】高熱、鼻水、せきなど風邪のような症状、発疹
【治療法】 特効薬がないため、解熱剤などの対症療法に。
【妊娠・出産への影響】 感染力が強く、感染すると高い確率で子宮収縮を起こす確率が高くなるため、流産・早産のリスクが上がるといわれています。
【赤ちゃんへの影響】 胎内感染すると最悪のケースでは胎児が死亡する場合も。また、誕生後まもなく赤ちゃんが発症することがあります。
水痘(水ぼうそう)
【感染経路】 空気感染、飛沫感染、胎内感染、産道感染
【おもな症状】かゆみの強い発疹が全身に出ます。
【治療法】 抗ウイルス剤を服用することで、症状を軽くすることはできます。
【妊娠・出産への影響】 通常は自然に治癒しますが、妊娠中に初感染すると水痘肺炎を合併しやすく、重症化する可能性も。分娩1週間前に水痘に罹患した場合には子宮収縮抑制剤を使用して妊娠の期間を延長し、その間に抗体が作られて赤ちゃんに抗体が移行するのを待つことがあります。それにより胎内感染率が低下すると言われています。
【赤ちゃんへの影響】 妊娠初期にママが初感染すると、赤ちゃんは先天性水痘症候群になり、四肢の形態異常や、脳や目のトラブルを起こす可能性も。出産直前に母体(おかあさん)が感染した場合、赤ちゃんの水痘感染や重症化を予防するために治療を行うことがあります。
伝染性紅斑(りんご病)
【感染経路】 飛沫感染、接触感染、胎内感染
【おもな症状】発熱など軽い風邪症状、頰や手足に赤い発疹
【治療法】 安静にするほか治療法はなく、予防するワクチンもありません。
【妊娠・出産への影響】 重症の場合、まれに流産・早産を引き起こすことがあります。
【赤ちゃんへの影響】 胎内感染すると、胎児貧血になったり、子宮内胎児発育遅延を起こしたりする可能性が。さらに赤ちゃんの全身がむくむ胎児水腫になることも。
サイトメガロウイルス
【感染経路】 飛沫感染、接触感染、胎内感染、産道感染、経母乳感染
【おもな症状】風邪のような発熱、首のリンパ節の腫れなど。ほとんどは無症状です。
【治療法】 現時点では治療法は定まっていません。
【妊娠・出産への影響】 とくに影響はありません。
【赤ちゃんへの影響】 胎児の脳が発達している時期にママが初感染すると、ごくまれに小頭症や難聴、精神発育障がいなどの症状が出る可能性があります。
トキソプラズマ症
【感染経路】 経口感染、胎内感染
【おもな症状】 症状が出ないことがほとんどですが、リンパ節の腫れ、発熱があることも。
【治療法】 まずは妊娠初期に抗体検査を行い、妊娠初期からの初感染が疑われる場合には、特殊な薬剤を早期から使用することで、胎内感染率が低下するといわれています。
【妊娠・出産への影響】 妊娠初期にママが初感染すると、流産の原因になることがあります。
【赤ちゃんへの影響】 妊娠初期にママが初感染すると、水頭症などの先天的トラブルを引き起こす可能性があります。
梅毒
【感染経路】 接触感染、胎内感染
【治療法】 抗菌薬を服用して治療します。
【妊娠・出産への影響】 妊娠初期に発見し、治療すれば影響は少ないですが、妊娠中期以降に感染すると、早産につながることも。初期の健診で血液検査をします。
【赤ちゃんへの影響】 胎内感染すると、赤ちゃんの目や耳、肝臓などに障がいが出る先天梅毒になる可能性がありますが、胎盤が完成する前に治しておけば、胎児への影響はほぼ心配ありません。
監修/大槻克文先生(昭和大学江東豊洲病院産婦人科) 文/樋口由夏、たまごクラブ編集部
参考/『たまごクラブ』2020年7月号「妊娠中に気をつけたい感染症ガイド」
いろいろな感染症があるため、妊娠中はどうしても不安になりがちです。でも多くの感染症は予防策があり、もし感染しても対応策があるものがほとんど。過度な心配はせず、手洗いうがいを心がけ、必要な妊婦健診はしっかり受けて、ゆったりと過ごしましょう。
大槻克文先生
Profile
昭和大学江東豊洲病院産婦人科教授・周産期センター長。日本産婦人科感染症学会理事。
(昭和大学医学部卒業。昭和大学病院、亀田総合病院、カリフォルニア大学などに勤務後、昭和大学病院などを経て現職。専門はハイリスク妊娠管理など)