熱があったらどうする? コロナ以外にもこの冬、妊婦が気になる感染症
この冬はインフルエンザだけでなく、新型コロナウイルス感染症の流行もあり、例年よりも注意が必要です。気をつけたいことや、かかってしまったらどうなるのかなど、さまざまな妊婦さんの不安について、帝京大学医学部附属溝口病院 産婦人科の土屋裕子先生に回答してもらいました。
冬にとくに注意したい感染症を知っておこう
今、感染症というと多くの妊婦さんは、新型コロナウイルスを思い浮かべるでしょう。ですが、妊娠中はほかにも注意すべき感染症があります。
●冬に流行するインフルエンザ
●年間を通して注意したい風疹
●経産婦さんは注意!ノロウイルス
妊娠中は重症化しやすく、場合によってはおなかの赤ちゃんに影響を及ぼす恐れがあります。また妊娠中ということで治療が難しいケースもあり、普段以上に感染症予防の意識と努力が大切です。妊婦さんだけでなく、家族も感染しないように予防と対策を心がけましょう。
新型コロナウイルス感染症についてのQ&A
きになるQについてお聞きしてみました。
Q高熱やだるさがあった場合、まずどうしたらいい?
Aかかりつけの内科、または産婦人科に電話で問い合わせを
症状だけでは、新型コロナウイルス、インフルエンザどちらに感染したか判断できません。自宅で何日も様子を見たり、直接病院に行ったりするのではなく、まず、かかりつけの内科や産婦人科に電話で問い合わせをして指示をあおぎましょう。連絡がつかない場合は、帰国者・接触者相談センター(今後地域ごとに受診・相談センターなどに変更予定)に問い合わせを。そのとき、次のようなことを伝えると判断の材料になります。
・いつから、どんな症状があるか
・数日以内に同じ症状の人が周囲にいたか
・インフルエンザの予防接種を受けているか
Q 新型コロナ、インフルエンザどちらにも感染する可能性はある?
A両方かかる可能性はあります
二つはまったく別のウイルスなので、両方かかる可能性はあります。妊婦さんにとっては不安かと思いますが、予防接種以外の予防対策はどちらも同じです。こまめな手洗いなど、できることを徹底しましょう。
Q もし感染した場合、お産はどうなるの?
A指定された病院で帝王切開の可能性も
妊娠のどの時期に感染したかにもよりますが、お産が迫っている場合は、地域ごとに指定された病院に搬送することになっています。そして、重症化する前に妊婦さんと赤ちゃんを守るため、帝王切開になる可能性が予測されます。
Q新型コロナにかかってしまった場合、薬や治療がおなかの赤ちゃんに影響しない?
A使用可能な薬で最善の治療を行います
今のところ、妊婦さんに限らず、新型コロナの特効薬はありません。妊婦さんは血が固まりやすいため、海外では新型コロナが重症化した場合に血栓症のリスクを下げる薬が使われているようです。また、症状の改善のために処方されるアビガンは、胎児に影響を及ぼす可能性があるため、使えないことがわかっています。いずれにせよ、妊婦さんが飲める薬で、最善の治療をするので安心してください。
Q夫や同居している家族に感染の疑いがあったら?
Aまず受診窓口に相談を。家庭内でもマスクとソーシャルディスタンスを!
直接病院に行くのではなく、受診窓口に電話をして指示を仰ぎましょう。PCR検査を受けた場合、結果が出るまでに時間がかかります。家庭内感染を防ぐため、感染が疑われる家族は部屋を別にして、家庭内でもマスクとソーシャルディスタンスを守りましょう。
Q急に感染者が増えて、里帰りがNGにならないか心配…
A里帰り先の産院には定期的に連絡を
状況が変化し、産院が里帰り妊婦の受け入れを中止する可能性はありえます。里帰り先の産院とは定期的に連絡をとっておく必要があるでしょう。里帰りができなくなった場合は、まず健診を受けていた産院に相談を。各地域の周産期医療体制も整っています。自治体の保健センターなども相談に乗ってくれるはずです。妊婦さん側も、里帰りだけでなく、立ち会いや無痛分娩など希望していることができなくなる可能性があることも念頭に入れておいて。
インフルエンザについてのQ&A
Qインフルエンザのワクチンがおなかの赤ちゃんに影響することはない?
A影響の心配はなく、むしろ赤ちゃんが感染するリスク軽減にも
ワクチンを接種したことで、おなかの赤ちゃんに影響が出る心配はありません。妊娠の全期間で接種して問題ありません。ワクチンを打つと、へその緒を通して赤ちゃんに免疫が移行します。生後6カ月くらいまで免疫が持つ
ため、インフルエンザにかかりにくくなるメリットも。妊婦さんが感染しないためにも、ぜひ家族で受けてほしいと思います。
Qインフルエンザになったら、タミフルなどの薬を服用しても大丈夫?
A問題ありません。きちんと服用することが大切
インフルエンザの薬にはタミフル、リレンザ、イナビルがあり、妊婦さんには問題ありません。医師の方針や受診した科によってどの薬が処方されるか異なりますが、一般的に妊婦さんにはタミフルが処方されることが多いでしょう。処方された薬は用量、用法を守って飲み、治すことが大切です。
風疹についてのQ&A
Q夫が子どものころ、風疹の予防接種を受けたかどうかわからないようです。
A抗体を調べ、ワクチンを打つ方向で行動を
自治体によっては抗体検査の費用を補助してもらえる場合もあります。ただ、仕事で忙しく、わざわざ調べるのは大変という人もいるかもしれません。はっきりとしない場合は、ワクチンを打ってしまってもいいのではないでしょうか。妻やほかの妊婦さんの感染を抑えるためにも、打つ方向で行動してください。
監修/帝京大学医学部附属溝口病院
産婦人科 助教 土屋裕子先生
取材・文/茂木奈穂子、たまごクラブ編集部
「新型コロナに対しては未知なことも多く、不安な妊婦さんは多いと思います。国や行政、私たち医療スタッフも妊婦さんと赤ちゃんを守りたい、お産に寄り添いたいと考えています。困った場合でも手立てはありますから、ぜひ頼ってほしいと思います」と土屋先生。マスク、手洗いなど基本的な感染予防対策をしつつ、心配なことがあったら、先生に相談してみましょう。
参考/たまごクラブ2020年11月号「冬の妊婦が気になる感染症Q&A」
※この特集の情報は9月1日現在のものです。国内の予防、対策は変化するので最新情報も確認しましょう。
土屋裕子先生
Profile
群馬大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科などを経て現職。性感染症、母子感染が専門で内視鏡手術技術認定医。