その腰痛大丈夫?妊娠中の尿漏れ・頻尿からかかる感染症とは【産科医】
尿もれも頻尿も、妊娠中に多い悩みです。この時期だけだと思って乗りきりましょう。ただし、残尿感が続く場合は、膀胱炎の可能性もあるので要注意です。産科医の杉本充弘先生に詳しくお聞きしました。
尿もれしやすいのは妊娠初期と後期
妊娠初期、大きくなり始めた子宮に膀胱が刺激を受け、尿もれが起こりやすくなります。
しかし、妊娠中期になると子宮は風船を縦にしたような状態に立ち上がるので、膀胱にかかる圧力が減り、尿もれがいったん治まる傾向に。
そして妊娠後期になると、赤ちゃんの重みで再び、膀胱に大きな圧力がかかるため、尿もれしやすくなります。
また、妊娠の影響で骨盤底筋がゆるむことも、尿もれの原因になります。
骨盤ベルトで改善する場合も
尿もれは妊娠期特有のことなので、生理用ナプキンや尿もれパッドをあてて乗りきりましょう。
妊娠中期の尿もれは、骨盤ベルトを装着すると子宮による膀胱圧迫を緩和するため、多少改善する場合もあります。骨盤ベルトを装着する場合は、必ず産院に確認をして、正しく装着しましょう。
頻尿も妊婦ならではの悩み。我慢は禁物
尿もれ同様に、妊娠初期は大きくなり始めた子宮に膀胱が刺激されて、妊娠後期は赤ちゃんの重みで膀胱に圧力がかかることで、頻尿になることがあります。妊娠期特有の一時的なものなので、「今だけ」だと思って、乗りきりましょう。
尿意を我慢すると膀胱炎に
尿意があるのに我慢していると膀胱炎を起こすことがあります。めんどうでも、まめにトイレに行くようにしましょう。外出先でも、まずはトイレの場所をチェック! ただし、夜中に何度もトイレに起きるのはつらいので、寝る前だけは水分をとりすぎないようにしましょう。
残尿感が続く場合は要注意!
妊娠中期以降は、大きくなった子宮に膀胱が押され、尿を全部出しきれないこともあります。すっきりしない感じが残るのは生理的な現象といえます。
ただし、残尿感が続く場合や、排尿時に痛みがあるときは膀胱炎の可能性もあるので、受診しましょう。
妊娠中は尿路感染症になりやすい
尿路に細菌が感染して炎症が起きた状態を「尿路感染症」といいます。膀胱炎もその一つ。膀胱の中に大腸菌などの細菌が入り、炎症を起こす病気です。妊娠中はホルモンの影響で尿道を締める筋肉がゆるむため、膀胱に細菌が入りやすくなります。
膀胱炎になった場合は、赤ちゃんに影響のない抗菌薬を服用して治療します。
膀胱炎から腎盂腎炎になることも
膀胱炎が悪化し、細菌が尿管から腎臓に侵入すると、腎盂腎炎(じんうじんえん)を発症する恐れがあります。腎盂腎炎は高熱や腰痛を症状とすることが多く、悪化するとママは腎機能低下などになることも。また、流産や早産につながることがあるので、膀胱炎の段階で完治することが大切です。
監修/杉本充弘先生 取材・文/栗本和佳子
参考/『最新! 初めての妊娠・出産新百科』2021年
(ベネッセ・ムック たまひよブックス たまひよ新百科シリーズ)
尿もれや頻尿に苦労するママは多いでしょう。しかし、妊娠期特有のことなので、めんどうでもこまめにトイレに行って乗りきりましょう。
杉本充弘先生
Profile
東都文京病院院長。日赤十字社医療センター周産母子・小児センター顧問。
