新型コロナのワクチン、子どもは接種するべき?ママやパパは?小児科医の見解
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2021年4月から、日本でも新型コロナウイルスのワクチン接種が、高齢者からスタートしました。いずれママやパパにも順番が回ってくると考えられますが、漠然とした不安を抱えている人もいるのではないでしょうか。富山大学附属病院小児科 種市尋宙先生に、気になる副反応のことなど、2021年4月27日現在でわかっていることを聞きました。
新型コロナを防ぐmRNAワクチンは、日本では新しいタイプのワクチン。副反応も違う
日本国内で接種されている新型コロナウイルスのワクチンは、現在はファイザー社製のもので、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンという新しいテクノロジーを使ったワクチンです。
「mRNAワクチンは、ウイルスのタンパク質を作るもとになる情報の一部を注射します。予防接種を受けると、人の体の中では、この情報をもとにウイルスのタンパク質の一部が作られ、それに対する抗体などができることで、ウイルスに対する免疫ができ、新型コロナウイルスの発症を予防します」(種市先生)
社会を守るためにも新型コロナワクチンは必要!副反応は数日で治まります
日本では、新型コロナウイルスのワクチンは、医療従事者から始まり、4月から高齢者への接種がスタートしています。今、日本でワクチンが受けられるのは16歳以上です。時期は未定ですが、いずれママやパパも接種が受けられるようになります。
このワクチンの主な目的は、
1.自分が感染・発症しないため
2.感染しても軽症で済ませるため
3.まわりの人にうつさないため です。
まわりの人にうつさないということは、社会を守ることにもつながると種市先生は言います。
「私は医療従事者なので、新型コロナウイルスのワクチンは2回接種しました。
“副反応が心配”という声も聞かれますが、副反応についてもどんな症状が現れるか知っておくと、過剰な心配は防げます。新型コロナウイルスのワクチンに関しては、正しい知識を持って接種してください。確かにインフルエンザワクチンよりも、発熱や倦怠(けんたい)感、腕の鈍痛などの副反応はあり、若い世代のほうが副反応は出やすいようです。しかし、副反応は数日で治まります。また副反応が出るというのは、体が反応して抗体がついている証しとも考えられます。物事はポジティブにとらえると乗り越える力も出てきます」(種市先生)
2021年4月、厚生労働省が制作した「新型コロナワクチン接種のお知らせ」には、ファイザー社製のワクチンの予防効果は約95%。
接種後数日以内に現れる副反応は、接種部位の痛み、疲労感、頭痛が50%以上、筋肉痛、悪寒、関節痛、下痢、発熱、接種部位の腫(は)れが10~50%、吐きけ、嘔吐が1~10%と記されています。
またアナフィラキシーショックのことも報道されていますが、厚生労働省では、2021年4月18日までに国際的な基準で88件(1,930,111回接種中)がアナフィラキシー(ブライトン分類1~3)と評価されていると発表しています。
「アナフィラキシーショックの割合は低いですし、万一、アナフィラキシーショックを起こした場合でも、医師がすぐに接種会場で対応します。過剰な心配はいりません。逆に緊張し過ぎると失神などを起こす場合もありますので、体調を万全にし、できるだけリラックスして受けてほしいと思います」(種市先生)
副反応のリスクと感染したときのリスクを冷静に見極める目を持って
日本は世界の中で、ワクチン後進国ともいわれています。受ける側である、国民全体の意識にも問題があると種市先生は言います。
「たとえば子宮頸がんのワクチン(HPVワクチン)は、基本的には中学1年生になる年度に3回接種します。予防接種を受けることで、子宮頸がん全体の50~70%の原因とされる2種類のヒトパピローマウイルス(16型と18型)の感染やがんになる手前の異常を90%以上予防できることもわかっています。最近では、子宮頸部だけではなく、その周囲の組織にも入り込む浸潤子宮頸がんに対しても高い予防効果が海外で報告されました。
しかし接種後、ごく一部の人に失神、運動機能の障害などが起こったことで行政を含めて接種控えが起きて、接種率は1%未満となってしまいました。その後のさまざまな研究、調査で、この症状とワクチンとは関連性が低いと考えられています。
副反応のリスクと、わが子が子宮頸がんになったときのリスクをてんびんにかけてみてください。日本で、子宮頸がんになる人は年間1万1000人、亡くなる人は年間2800人と言われています。子宮頸がんは「マザーキラー」とも呼ばれ、若い年代の女性もわずらい、幼い子どもたちからママを奪う病気でもあるのです」(種市先生)
副反応と感染したときのリスクを考えることは、新型コロナウイルスのワクチンも同様です。
「乳幼児は、今のところ新型コロナウイルスワクチンは受けられません。小児については海外でやっと治験が始まったところで、いつ小児へのワクチン接種が始まるかは未定です。
子どもが新型コロナウイルスに感染する場合、多くが同居する家族からうつっています。自分自身のことはもちろん、大切なわが子を守るためにも、ママやパパはぜひワクチンのメリットとデメリットを理解した上で接種し、子どもたちへの感染を防いでほしいと思います。
子どもたちに関して、今は新型コロナウイルスのワクチンをどうするか、ということより、現在日本で受けられるほかのワクチンをしっかり受けて、さまざまな怖い感染症から子どもたちを守ることが大切です。病気は新型コロナウイルス感染症だけではありません」(種市先生)
取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部
種市先生が勤務する富山市では、子宮頸がんのワクチン接種率は12%だとか。
その理由を種市先生は「多くのかかりつけの医師が、1人1人にワクチンの必要性をていねいに説明しているためです。新型コロナウイルスのワクチンも不安なときはネットの情報などに惑わされたりせずに、かかりつけ医に相談してください」と言います。