乳児にも使える虫よけ剤 「イカリジン」なら安心です【小児科医】
暑くなってくると、そろそろ心配になってくるのが「虫刺され」。太田文夫先生も毎年ママ・パパたちから「虫刺され対策はどうすればいいの?」と相談を受けると言います。
「小児科医・太田先生からママ・パパへ、今伝えたいこと」#9は、乳幼児の虫刺され対策です。
蚊に刺された反応は年代で違います
毎年暑くなってくるとママ・パパから
虫刺され対策についての質問を受けます。おすすめしている虫よけ剤が“イカリジン”という成分を使ったものです。
その理由は、6カ月未満の子にも使える、使用量に制限がない(何度でも塗れる)のと、8時間程度効果が長もちするからです。市販薬なので薬局で購入できます。
虫にもいろんな種類があり、虫刺されにもいろいろありますが、大半の相談は蚊に刺されたときについてのものです。
刺されると蚊の唾液に対してのアレルギーが起きます、実はその症状は年代で違います。
【生まれたばかりの1年目の赤ちゃん】
蚊の唾液へのアレルギー反応が弱いのでそんなに困りません。
【2回目の夏~小学生ごろ】
遅延反応/翌日以降1週間くらい腫れます。かゆくてかきむしって“とびひ”になることもあります。
【ママ・パパ世代】
即時反応/すぐにミミズ腫れになってかゆいけれど、数十分でおさまります。
【ばあば・じいじ世代】
軽い/刺されても、ちょっとしかかゆくなりません。
さあて、質問にはどう答えましょう。
まずは赤ちゃんへの対応
「0歳の夏はひどくならないし、まあいいか」というわけにはいきません。赤ちゃんでも日本脳炎にかかってしまうことがあるからです。2015年に千葉県で1歳前の乳児が発症しました。
日本脳炎にはよく効くワクチンがあります。生後6カ月から接種できますが、運悪く今年の夏はワクチン出荷数が例年の五分の一だけと少なく、みんなが打つことはできません。接種できないならどうすれば安心かというと、蚊に刺されないようにするのがいちばんです。
長袖・長ズボンを着用することも効果がありますが、暑がりの赤ちゃんには不向きです。そこで選びたいのは安心して使える虫よけ剤です。50年前からずっと使ってきた虫よけ剤は“ディート”という薬が入った製品でした。しかし、生後6カ月までは使えず、独特のにおいがする、子どもに何度も塗るとけいれんを起こしやすくなるという不安材料があり、赤ちゃんにはすすめられませんでした。
虫よけ剤 イカリジンとは?
1986年にドイツで開発・販売され、欧米、アジア各国などでは既に使用されていた“イカリジン”が2015年から日本でも使えるようになりました。年齢制限も、塗る回数も制限なし。しかも8時間効果が続くという優れものの虫よけ剤です。もちろん蚊にも効きます。
今は数社がイカリジンを使った製品を売り出しています。エアゾールタイプ、ミストタイプ、塗るタイプなど種類も豊富。小さな子には、薬を吸い込まないで済むジェルタイプがおすすめです。
濃度15%の製品なら8時間程度効くので、保育園児も朝塗れば夕方までは大丈夫。でも、蚊は主に夕方から活動するので、保育園に迎えに行ったときか、おふろ上りにもう一度塗ると寝るころにも効いています。ワクチンが不足気味の今年こそイカリジンの出番です。
お兄ちゃん・お姉ちゃんの注意点
少し大きい子どもたちにも効きますが、刺されて次の日から1週間くらい腫れが続くのが遅延反応の特徴です。かゆみも強いので、ひっかいたり、汚い手で触ったりしているうちに“とびひ”にもなります。そうしないためにはかゆみ止めパッチを貼るか、ステロイド軟膏を塗るかなどで対応しましょう。(2歳以下の子は貼り薬を自分ではがして口に入れるので、使えません)
実家に行くと・・・
蚊が好きなのは体温が高くて汗かきなの人なので、家族といると若い順に刺されます。ばあば・じいじの家に行くと「蚊なんていないよ」って言われるかもしれませんが、ばあば・じいじだって刺されているかもしれません。ばあば・じいじはアレルギー反応が弱いので、いないと誤解しているだけ、とも言えます。とくに小さい子たちが来ると蚊は大喜びで刺しまくるので要注意です。
今年の夏は、こんな対策でどうでしょうか。
文・監修/太田文夫先生 構成/ひよこクラブ編集部
太田文夫先生(おおたふみお)
Profile
おおた小児科・院長。ワクチンで防げる病気から子どもを守りたい小児科医。B級グルメめぐりが趣味。広島生まれのカープファン。NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会副理事長。