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【小児科医リレーエッセイ 31】 なぜ妊婦健診だけ?出産後、赤ちゃんも超音波検査でチェックしたほうがいいことが【小児科医】

医療超音波スキャナークローズアップ。医師は超音波診断を行います
※写真はイメージです
smirart/gettyimages

「日本外来小児科学会リーフレット検討会」の先生方から、子育てに向き合っているお母さん・お父さんへの情報をお届けしている連載です。今回は、岐阜県・矢嶋小児科小児循環器クリニック院長の矢嶋茂裕先生から「乳児の超音波検査」についての内容です。

器械好きの医師のつぶやき

私は根っからの理系人間で器械好き、なにしろ大学受験は工学部志望でリニアモーターカーをやりたかった人間です。開業した今も医療機器はもちろん、日曜大工用品もいろいろ取りそろえて器械好きは相変わらずです。従って精神科にはとても不向きですし、子どもの心といった抽象的な分野もちょっと苦手意識を持っています。

さて、本題に入りましょう。器械好きな私のクリニックにはいろいろな医療機器があります。小児循環器を専門としているので超音波検査装置は必須ですね。開業小児科医で超音波検査装置を持っているのは半分くらいでしょうか。では産婦人科はどうでしょう。みなさん、妊婦健診では当然のように超音波の検査を受けてきませんでしたか?

動画をUSBに保存してくれるサービスもかなり普及しているようです。では、生まれてからお子さんは超音波検査を受けましたか?妊婦健診では何度も受けたことのある超音波検査、生まれてからは受けなくてもいいのでしょうか?

なぜ妊婦健診だけ超音波検査

確かに近年は産婦人科での胎児の超音波検査の精度が向上し、重度の心疾患は出生前に診断される例が多くなっていますし、腎臓の形態異常もかなり見つかっています。しかしそれでも生まれてから症状が出てくる病気の中には妊娠中にはわからず、生まれてからの超音波検査で初めて発見できる病気はあります。妊婦健診で繰り返し検査したのにどうして生まれてからはやらないのか、私は不思議に思っています。いっそのこと、妊婦健診の1回分を生まれた赤ちゃんに回したらという話もありますが、担当する課が違うため、予算上は流用はできないそうですが、それはお役所の都合と言いたいですね。

赤ちゃん全員に超音波検査を!と言うとそれはできない、という話が出ます。日本の超音波検査装置は世界のどこよりも普及しているのではないでしょうか。小児科医が不慣れなら、産婦人科医が赤ちゃんに不慣れなら、超音波検査技師さんにお願いすればできます。技師さんのレベルはとても高いんです。

私が理想とする乳児健診

器械の話ばかりしましたが、私は五感を大切にして診察します。心臓病で病院に通院している方の診察では聴診の印象を話すことがあります。エックス線検査も超音波検査も見ていないけど、「自分はこう思いますよ、主治医に聞いてみてください」と、話します。時にはそれを機に治療方針が変わったこともあります。聴診しおなかを触り手足の脈をみて考えることは重要です。しかし、時には超音波検査でしか見つからない病気もあります。むしろそのほうが多いでしょう。

赤ちゃんの超音波検査でチェックしたいのは、心臓、腎臓、股関節と考えています。一部の心疾患は出生後に初めて診断が可能であると同時に突然、重症化します。腎臓病で代表的なのは水腎症ですが、妊婦健診のタイミングによって見落とされていることがありますので、生まれてからチェックしておきたいです。股関節は妊娠中の検査ではチェックできないでしょう。股関節脱臼は少なくなったといわれますが1歳を過ぎてから診断される例があること、3~4カ月の乳幼児健診では見逃されていることがあります。今は問診票によりリスクの高い赤ちゃんは整形外科の受診をすすめる流れですが、全員に超音波検査をやればいいと思います。仙台市、新潟市などすでに取り組んでいる自治体があります。

目と耳もチェックしたい

1576人に屈折検査をして32名(2%)が眼鏡の治療に。

心臓、腎臓、股関節のほかにスクリーニングの対象としたいのは、耳と目です。耳に関しては新生児聴覚スクリーニング検査が普及していますので、多くの方がすでに受けていると思います。目については簡便な屈折検査機器が登場したことで多くの自治体で検査が行われるようになってきました。今は3歳児健診での屈折検査ですが、小児科でも普及してきましたので、1歳代でも個別に検査することが珍しくなくなってきました。目は1歳から3歳で急速に発達しますので3歳までには屈折異常を見つけてあげたいのですが、重症の場合は1歳代でも治療を始めることがあります。当院では受診された全員に無料で屈折検査を行い、約2%の子どもが眼鏡による治療を受けています。令和3年夏には日本眼科医会から3歳児健診での「屈折検査マニュアル」が発刊されました。すべての子どもが目の屈折検査を受けられるようになる日も近いことと期待しています。

最後に小児科医の仕事は感染症に罹患した子どもを待つことではなく、予防したり、心のケアをしたり、薬に頼らない医療をめざすことだと思います。得手不得手はありますからみんなが超音波検査をやる必要はなく、すみ分けして分担すればいいのです。病院も開業医も医者も検査技師さんもかかわってその地域に合ったやり方で健診方法を考えればすべての子どもが超音波検診を受けることはきっとできるはずだと思います。

“どうして妊婦健診で超音波検査するのに赤ちゃんは受けないの”という素朴な疑問を共有しましょう。

文/矢嶋茂裕先生(矢嶋小児科小児循環器クリニック 院長)

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