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子どものための臨時給付10万円。 本当に必要としている“ひとり親”家庭が受け取れない…!【専門家】

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※写真はイメージです
Masaru123/gettyimages

2021年12月に実施された「令和3年度 子育て世帯への臨時特別給付(18才以下へ10万円給付※)」(以下、臨時特別給付)が、必要としているひとり親家庭に届かない問題が起こっています。
「別居中・離婚前のひとり親家庭」実態調査プロジェクトチームは、経済的に困窮する「実質ひとり親家庭」でも受け取れるよう改善を求める提言を発表しました。提言はプロサッカー選手の長友佑都さんも賛同人として応援しているそうです。チームメンバーである福井県立大学名誉教授 北明美先生と認定NPO法人フローレンス 桂山奈緒子さんに話を聞きました。

離婚成立前のひとり親家庭に児童手当が届かない

児童手当制度を知っていた人のうち、児童手当を受け取れていないと回答した人の割合

長引くコロナ禍の影響を受け、経済的に苦しい状況に置かれているひとり親家庭。今回の臨時特別給付は、迅速な支給を重視して児童手当のしくみが利用されたため、別居中・離婚前で子どもと同居している実質的なひとり親家庭が受け取れなかったケースが相次いでいるそうです。

「DVなどから避難している実質ひとり親が申請をしたけれど、自治体によっては『すでに配偶者に対して給付決定がされたため受給できない』と断られてしまったケースが報告されています。また、申請するのに『住民票を別にしていること』という条件が壁になったり、それができないDV避難の場合は、『配偶者の健康保険の被扶養者から抜けており、かつDV被害にあった証明等があること』が条件となったりしていることも問題です」(北先生)

別居中・離婚前で子どもと同居している実質的なひとり親家庭は、今回の臨時特別給付だけでなく、そもそも児童手当を受け取れていない人が少なくありません。

「私たちが2020年9月に別居中・離婚前のひとり親家庭262世帯に実施した調査では、22.6%が児童と同居しているにもかかわらず児童手当を受け取れていないと回答しました。その理由は6割が『申請が受理されなかった』『手続きしていない』などで、4割は『受給者変更について知らない、よくわからない』と回答しています」(桂山さん)

児童手当は世帯の生計者のうち所得が多いほうが受給者となるため、離婚前別居のひとり親家庭が受け取るには「受給者変更」という切り替え手続きが必要です。しかし受給者変更をするには、住民票を移すこと、相手方の扶養から抜けること、などのさまざまな手続きが必要です。

「たとえば夫からのDV避難をして離婚前別居をしている母子家庭の場合、住民票の移動が困難なだけでなく、相手方の社会保険(健康保険組合や共済組合)の扶養から抜けることも容易ではありません。相手方の追跡を警戒し住所を知られたくない場合や、知人の家を転々と避難している場合などもあります。また、社会保険の扶養から抜けるためには、相手方の自主的な手続きが基本。保険制度の方の職権で母子を扶養家族から抜く手続きもできますが、その際は夫に通知がいく上に、夫はそれを拒否する申し立てができます。このようにDVから避難している家族にとって、夫の扶養から抜ける手続きは意外にハードルが高く時間がかかることもあるのです」(北先生)

いくつもの申請の必要や相手方の同意が優先される場面も少なくないことから、離婚前別居のひとり親家庭が児童手当を受給するまでには時間がかかります。フローレンスの調査では、離婚が成立するまでの別居期間が1年以上の家庭は63.0%とも(※2)。長期にわたって不安定な状態が続いているひとり親家庭が多いことがわかります。

国からの通知が自治体で誤認されている

児童手当の対象認定について、国は“同居親を優先”して行うよう自治体に通知しています(※3)が、実際に事務手続きをする自治体ではなかなか運用化されない現状があるそうです。

「国からの通知では、DV被害者の場合は『母子生活支援施設と婦人保護施設などに入所している場合など』は、住民票を移さず社会保険の扶養からも抜けていない状態であっても申請できるとなっています。そしてその2つの施設に入所していなくても、配偶者と、避難している申請者・子どもが生計を別にしていることがわかれば認めていい、としています。

また、DV被害以外の理由による別居については、現行では住民票の移動は必須ですが、社保の扶養から抜けることは必須ではないのに、そのことを誤解して対応している自治体が多いので、国はあらためて通知してほしいと思います。
自治体は個別にその生活実態を見て、確かに申請者が子どもを育てていると確認すれば、本来なら手続きを進められるはずです」(北先生)

どうすれば本当に必要としている家庭に届くのか

離婚前別居のひとり親家庭では、利用できるはずの公的な支援があることも知らない、手続きもわからない人が多いことが課題、とフローレンスの桂山さんは言います。

「支援制度があることも知らない、相談しても解決しないと思うなど、相談前にあきらめている家庭も多い実態があります。困っているけれど表面化していない人が少なくないのでは、という印象です。さらにDV避難をしている人は時間的にも精神的にも余裕がないため、自治体の窓口でつらい対応をされたと感じ、もう相談したくないという人もいます」(桂山さん)

一方で、自治体によっては今回の臨時特別給付について、独自に同居親への支給を対応するところもあるそうです。

「徳島市では『離婚等(協議中を含む)が原因で、子どもを監護しているものの、今回の国の特別給付金の枠組みでは対象とならない方に対し、徳島市独自で、子ども1人あたり10万円を支給します』としています。地方交付金という独自の財源を使って、すでに別居親に支給してしまっていたとしても、同居親から申告があればさらに支払う、という方針を打ち出しています。

また、明石市は『給付金を支給する時点の児童の養育者に支給する』とし、さらに『給付金の支給要件に該当しないことや、他市町村からの受給を含め、二重に対象児童の給付金を受給していることが判明した場合には、給付金を返還してもらう』という措置を取っています。

子どものための給付金が、子どもを養育する世帯に届くよう、このような自治体の取り組みをぜひ横展開してほしいと思います。受給者変更が今回の臨時特別給付に間に合わない場合でも、さかのぼって支給する措置が可能になるようにしてほしいですし、将来的には給付金は世帯単位ではなく個人単位で支給されるべきと考えます」(桂山さん)

今回の臨時特別給付のみでなく、児童手当の制度そのものについて、必要な人に届く制度にするために次のような点を見直す必要がある、と北先生は指摘します。

「現在の日本の児童手当が所得が多いほうの親が受給者になるのは、『世帯主』に対する補助という発想からだと考えます。また所得制限があるのは、そのなかでも所得が低い『世帯主』に対する補助であるという考え方。これでは子どもの権利や子どものための手当という本来の目的から離れてしまいます。

欧州の多くの国は親の所得に関係なくどの子どもにも支給するということが基本になっていますが、これなら離婚や別居した場合もどちらに支給するかという問題も生じないわけです。両親が一緒に生活している場合には、話し合いで自由に決められますし、両親が別居していれば同居親にスムーズに支給されます。
けれど今の日本のしくみでは、所得の多い少ないが基準とされるため、子どもの権利が親の事情に左右されてしまいます。せめて子が生活している場に支給する同居親優先の原則を、広くかつ柔軟に認めるようにしてほしいと考えます」(北先生)

お話・監修/北明美(きたあけみ)先生

お話・監修/認定NPO法人フローレンス 桂山奈緒子さん 画像提供/認定NPO法人フローレンス 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

コロナ禍で経済的に苦しい状況にあるひとり親家庭にこそ、支援が届くべきではないでしょうか。離婚前別居のひとり親は誰かに相談するのも難しい状況かもしれませんが、万が一困っている人がいたら適切な支援につながるよう、子育て中の親としてこのような制度や支援について知っておく必要があるでしょう。


※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

(※1)内閣府「子育て世帯への臨時特別給付について(概要)」

(※2)「別居中・離婚前のひとり親家庭アンケート調査報告書」

(※3)内閣府子ども・子育て本部資料「児童手当における同居優先事例及び事例に係る事務処理について(再通知)」

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