【理学療法士に聞く】“うつぶせ遊び”が赤ちゃんの運動能力を高める!?
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前回記事では、首がすわる前からの「おすわりの練習」がもたらす弊害について、赤ちゃんの神経発達や骨や筋肉の発達を多く見てきた、理学療法士の中原規予さんに伺いました。今回は、赤ちゃんの体の発達や運動能力を伸ばすという”うつぶせ姿勢”について、詳しく解説していただきます。
うつぶせ姿勢で遊ばせると、赤ちゃんの体の機能が促進
近年、うつぶせ姿勢からの”寝返り”や”はいはい”をほとんどせずに、立っちに移行する子も少なくないとかいわれています。けれども、
「うつぶせ姿勢で獲得しておくべき能力が、適切な時期に身についていないと、あんよを始めてから転びやすいといった傾向も。ほかにも先々デメリットが生じる可能性がまったくないとはいえません」と中原さんは言います。
筋力の発達や運動能力の発達につながる
「うつぶせ姿勢にすると、首がすわる前の赤ちゃんでも頭を持ち上げたり横に向けたりしようとします。この運動が、首~背中にかけてや肩甲骨周辺の筋肉の発達や、体を支えるためにバランスをとる感覚にいい影響を与えます。
また月齢が進むにつれて、うつぶせ姿勢から寝返りをしたり、腕を伸ばして反ったり、はいはいで移動するようにもなりますが、このような動きが”立っち”や”あんよ”に必要な運動能力につながっていきます。
赤ちゃんが床の上を自由に動き回ることで、バランス感覚をはじめとした必要な能力を持って、次のステップに移行していけるのです」
呼吸にいい影響を与える
「うつぶせの姿勢の利点は、運動能力だけではありません。
背中が床で圧迫されないため、背中側の肺が広がりやすくなり、呼吸が促され、呼吸器の発達が促されるといわれます。
また、うつぶせ姿勢に慣れている赤ちゃんは、口をきちんと閉じて腹式呼吸を行いやすくなるともいわれています。この『口をきちんと閉じて鼻呼吸をする』というのは、口腔(こうくう)の正しい発達や感染症の予防をはじめ、発達面にも健康面でもとても大事なことといわれています」
あごの発達や歯並びにもいい効果が
「赤ちゃんの舌は上あごのくぼみに収まるようにできていて、きちんと収まることであごが正しく発達して、歯のかみ合わせも正しく育っていきます。
けれども、ベビーソファなどにいつも座らせている状態だと、あごが上がり、あお向けの状態となり、口が開きやすくなります。舌の位置が上あごのくぼみからずれやすく、結果、あごの発達やかみ合わせなどに影響を及ぼすこともあるといわれます。うつぶせ姿勢は、舌が上あごの正しい位置に収まりやすいので、口を閉じやすくなる、ひいては口呼吸に移行しにくくなるともいるでしょう」
うつぶせ遊びは怖くない
うつぶせ姿勢は、メリットがいっぱいなことがわかりました。しかし、近年、SIDS(乳幼児突然死症候群)が心配で赤ちゃんをうつぶせ姿勢にするのを怖がるママ・パパが増えているそうです。
畳ぐらいの固さの場所、ママやパパが見守ることが大事
「確かにうつぶせ寝は、SIDS(乳幼児突然死症候群)の危険因子の1つといわれます。けれどもそれは、寝かせるときにうつぶせ姿勢にすることや、やわらかい布団の上でうつぶせ姿勢にすることが問題なのです。赤ちゃんをうつぶせ姿勢にするときは、必ずママやパパの目の届くところで行うこと、そして、口や鼻をふさぐ心配のない畳程度の固さのところでうつぶせにすることが大事です。首がすわっていない赤ちゃんをうつぶせにするときは、とくに注意して見守るようにしてくださいね」
うつぶせ遊びのとき、おもちゃは近くに置かない
「赤ちゃんと遊ぶとき、基本、おもちゃは必要ありません。赤ちゃんはまず、自分の体を触って知ることを遊びとして行います。首を動かしてお部屋やお母さんの様子を観察したり、動きたいという気持ちから手足を動かしてみたり…そうやって自分の体を動かしているうちに、偶然に寝返りやはいはいのしかたを覚えたり、体の支え方、バランスのとり方を獲得していきます。
目の前におもちゃがあると、動く必要がないので、動きたいという気持ちが生まれません。動きたいという気持ちは、好奇心や意欲を育て、ひいては知能の発達を促します。おもちゃを片づけて、うつぶせ遊びをすることで自分から探したい気持ちや、遊びたい気持ちを培いましょう」
赤ちゃんの発育や発達に、メリットがいっぱいの“うつぶせ姿勢”。ママやパパの目の届くところでは、うつぶせでたくさん遊ばせてあげましょう!(取材・文/ひよこクラブ編集部)
■監修/中原規予さん
理学療法士。中央愛育園など療育施設に非常勤勤務。不定期で理学療法士向けや子育て支援者向けの勉強会講師も行っています。
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