「ママに教えてくれてありがとう!」耳の聞こえない人気育児漫画家がムスメに望む1つのこと
ワーキングママとして働きつつ、「耳がきこえないママときこえるムスメ」の子育て漫画日記を描くうさささん。聞こえない夫婦のもとに産まれたきこえるムスメちゃんの子育てには驚きと発見と共感がたくさん! Twitterのフォロワー数は1.8万人を越えるうさささんに、今回は耳がきこえない中での妊娠・出産・育児とその工夫をお聞きしました。
プロフィール/うささ
会社員/エッセイ作家
わんぱくなムスメに振り回されながら子育てに奮闘する、うまれつき耳がきこえない白うさぎを主人公にした子育て日記、きこえないことに関するエッセイをSNSで発信中。
Twitter:@usasa21
Instagram:usasa21
blog:https://usasa21.napbizblog.jp/
「聞こえない私」がママになるということ
――妊娠がわかったときはどんなお気持ちでしたか?
長い不妊治療を経てようやく授かったため、妊娠できたとわかったときは涙せずにはいられませんでした。多くのママさんが共感してくれると思うのですが、つわりの症状が軽い日は「まだおなかの中にいるよね?」と不安で仕方がなかったです。
――ムスメさんと初対面したときの感想は……?
聞こえても聞こえなくてもいい。とにかく元気に生まれてきてほしいと願っていたので、大きな産声をあげて泣いているのがわかったときホッとしました。でもこんなに小さく弱々しい赤ちゃんを聞こえない自分が育てられるのか、コミュニケーションを取ることはできるのか、といった不安もありました。
ちなみに、産まれたときから「小さな体の割にやたらと足が長いな……?」と不思議に思っていたのですが、3歳半で19cmの靴を履くというビッグな足になると知るのはもう少し先の話です。(笑)
――うさささんが子育てをしていて幸せを感じるのは、どのようなときですか?
ムスメが「まぁま!!」と私を呼びながら抱きしめてくるときが一番疲れがふっ飛びます。また、ゆっくり話したり身振りをしたりしながら、がんばって私に何かを伝えようとする姿も愛おしく思います。
――うさささんが子育てにおいて心がけていること、ムスメさんに望むことは何ですか?
相手に感謝の気持ちを伝えることを心がけています。特に、ムスメが何かを聞き、自らそれを私に教えてくれたときは必ず、「ママに教えてくれてありがとう」と言うようにしています。ありがとうと言える優しい子に育ってほしいと思っています。
困ったときのママ友のサポートに感動!
――これまでの育児で困ったこと、逆にうれしかったことはありますか?
保健所での0歳健診のとき困ったことがありました。あらかじめ自分が聞こえないことを伝えてあったのですが、スタッフの間で共有がされていなかったのか、フォローしていただけず何を始めようとしているのかわかりませんでした。誰かに聞こうにもみなさんバタバタされていて途方に暮れてしまい……勇気を出して隣にいたママさんに自分がきこえないことや、今何が起ころうとしているのかを尋ねたら、笑顔で状況を教えてくださりすごく助かったのを覚えています。その後も大丈夫かどうか声かけてくださり感動しかありませんでした。
――うさささんの漫画はたくさんの方に読まれていますが、どんなリアクションがありますか?
ムスメを妊娠中のころからよく聞かれたのは、「どうやって泣き声に気づくの?」でした。これはきっとママさんに限らず、いろんな方が知らないことなのでは? と思って漫画を描きました。「泣き声を感知する商品があるんだ」と感動する一方、布団の音やパパ・実母のくしゃみの音にも反応してしまうというデメリットにびっくりする方が多かったです。
――特にママさんから共感のあった漫画はありますか?
子どもの病気に気づいて病院につれていったものの、良くなっていて肩身の狭い思いをする……これは本当に“ママあるある”だと思います。私も同じ体験があるのですが、病院の先生に謝ったら「いいえ、大きな病気につながることもあるので、どんなに小さいことでも来てください」という思いがけない言葉をもらって感動しました。
その時の漫画はたくさんの方に読んでいただけました。「こんなお医者さんに出会いたかった!」という声が多かったです。
子どもから学ぶ育児を楽しむ
――最後に、うさささん同様、育児に奮闘中の読者のみなさんにメッセージをお願いします。
子育てとは「ワケわからん」の連続でキーッとなることも多いのですが、子どもから学ぶことって本当に多いと思います。無理のない範囲で、共にゆるゆると育児をがんばりましょう。
うさささんの言うとおり、子育てはすべてが初体験で、「ワケわからん」と投げ出したくなることがいっぱいです。でも、初体験だからこその感動や喜びもたくさんあります。うさささんのように、見落としてしまいそうな小さな幸せもちゃんと拾い上げていけたら、毎日がもっと楽しくなりそうです。
取材・文/佐藤 文子