その上履き、子どもの足に合っている?正しい上履きの選び方・履き方とは?【専門家】
新年度に必要な園グッズや学用品の一つに上履きがありますが、どんなデザインのものを選んでいますか?子どもの足にフィットしているものを選んでいるでしょうか?日本各地で靴教育の講演などを行う早稲田大学教育コーチ 吉村眞由美先生に正しい上履きの選び方を聞きました。
正しい子どもの上履き(靴)の選び方
――上履きの選び方にこれまであまり注目してこなかった気がします。上履きの選び方のポイントはありますか?
吉村先生(以下敬称略) 外靴に比べて上履きは注目されてきませんでしたが、子どもたちが1日の中で長く使用する上履きこそ、外靴と同じように足の成長に合わせて選ぶ必要があります。
乳幼児期の上履きのデザインは、スリップオンタイプ、バンドバレータイプ、ベルトタイプなどがあります。スリップオンタイプ、バンドバレータイプは、幅のバラエティーはほとんどないので、足長サイズ(かかとからつま先の長さ)で選びます。いずれもサイズが合っているか、かかとがずれないかを実際に履いて確かめることが大切です。
【Point1】足のサイズを計測し、靴サイズに直す
サイズは足長(そくちょう:かかとから最も長い指の先までの長さ)を測る方法と、中敷きで測る方法があります。
【足長の測り方は?】
空き箱などを使って、両足のかかとを箱の壁につけた状態で立ち、いちばん長い指の先端の位置にしるし(●)をつけます。箱の壁と並行線を引いて、壁から●までの長さを定規で測ります。
計った数値を靴JISサイズ(製品規格)と同じ0.5センチサイズに直します。
【足長から靴JISサイズへの置き換え方法は?】
計った数値を靴サイズと同じ0.5㎝サイズに直す基本的な考え方は以下のとおりです。
(測った数値)14.8〜15.2cm →(靴サイズ)15.0
(測った数値)15.3〜15.7cm →(靴サイズ)15.5
(測った数値)15.8〜16.2cm →(靴サイズ)16.0
靴のサイズは「捨て寸」(靴を履いたときのつま先と靴の間の空間のこと)が含まれ、あらかじめ1cmほどの余裕がある長さになっています。そのため、たとえば測った足長が14.6cmだった場合、15.0サイズの靴を選ぶと大きすぎてしまうことも。
靴サイズを中心に、足長が前後5㎜に入るように選びましょう。ただし、メーカーによって捨て寸などはまちまちで、足幅なども影響するので、必ず試し履きをして、足先に1cmくらい余裕があるかを確認してください。
【中敷きが外れる場合の測り方は?】
靴下を履いて中敷きに足を当て、つま先に1cmほどの余裕があるかを確認します。
【Point 2】実際に履いて歩かせてみて、かかとが浮かないか確かめる
上履きを履いて歩いてみて、かかとがパカパカと浮いたり、ずれたりしないかをチェックします。ベルトタイプの場合は、ベルトを締めてもかかとが浮くのは大きすぎるので、ワンサイズ下のものを履いてみて。
【Point3】ベルトタイプの上履きは、ベルトで足を固定し脱げないか確認する
靴と子どものかかとを密着させて履かせ、ベルトをしっかり引っ張りながらとめます。フィット感をチェックしましょう。
ベルトタイプの上履きの選び方のポイントは?
――市販のもので機能的な上履きを選びたいときに、注意するポイントを教えてください。
吉村 園や小学校で上履きを自由に選べるのであれば、幼児期〜小学校低学年では、面ファスナーのベルトがついた、足にフィットするものを選びましょう。以下のような点に注意して選んでみてください。
デザインは足の甲を覆ってベルトがついているものがベストです。そして、素材は甲の部分の通気性がよいものを。中敷きは取り外しができるものを選びましょう。サイズの確認もしやすく、汚れたら中敷きだけ洗えるので衛生面でも安心です。
また、かかと部分は折れ曲がりにくさを確認してください。かかと部分にある程度かたさがあると、幼児期のかかとの骨を支えてくれぐらつかず安定感が増します。
続いて靴底の硬さもチェックします。靴底はつま先から1/3あたり(親指のつけ根あたり)のみが曲がる屈曲性があるタイプを。かたすぎずやわらかすぎないものを選びましょう。靴底に適度に防滑機能があるもの、運動時の衝撃吸収性があるものだと、けが予防などにも安心だと思います。
足は春〜夏に成長しやすい?サイズアップの目安は?
――ではサイズアップの目安を教えてください。
吉村 中敷きを外せるタイプのものは外して足に当て、かかとをそろえた状態でつま先のズレの長さを見ます。余裕が0.5㎝以下になっていたらサイズアップ(0.5cm上のサイズに交換)します。
子どもの足は、0〜2才では3カ月で0.5㎝(1年で2cm)足長が伸びる、2才以降では6カ月で0.5㎝サイズ(1年で1cm)足長が伸びるとの研究結果があります。個人差はありますが、身長の伸びが止まるくらいまでだいたいこのペースの成長が標準と言われています。また、春夏のほうが少し成長スピードが速くて、秋冬のほうがゆっくりという調査報告(※)もあるので、夏休みの前後に確認してみるといいと思いますよ。
――子どもの成長によって選ぶべき上履きは変わりますか?靴ひもを結べるようになる学童期にはひも靴の上履きのほうがいいのでしょうか。
吉村 そうですね、できれば子どもの足にぴったりフィットする上履きを選んであげたいですが、市販品ではまだまだ種類も少ないのが現状です。
ひも靴の穴が4つあるものは、4本ベルトがあるのと同じと言われます。ベルトが多いほど、きめ細かく甲の部分がフィットして、甲が高い子も低い子もぴったり合わせて履けるので、運動のときはひも靴が理想です。
子どもたちは上履きで体育館やホールでの運動を行いますよね。適切な靴で運動すると、足元が安定して体幹のバランスも取りやすく、パフォーマンス向上につながると考えます。
――幼児期から学童期の上履きについて、どんなことが課題でしょうか。
吉村 上履きは子どもたちの健康を支えるものであるのに、情報や商品が少ない現状です。もっと外靴のように、上履きも多くの種類が作られてほしいと思います。これを変えられるのはママやパパたちの要望がメーカーなどに届くことが重要です。
以前、幼児サイズ(16~20㎝くらい)の靴は長い間1.0㎝間隔しか売られていませんでした。しかし、私たち専門家の指摘や提言と、保護者の声が届き、メーカーが0.5㎝間隔の靴も作るようになったと聞いています。ないから残念とあきらめずに、訴えることで現状が変わる可能性を信じて、発信し続けたいと考えています。
イラスト/杉井亜希 協力/日本靴医学会 小児の足と靴を考える委員会 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部
サイズが合わない上履きを使用していると、間違った歩き方が身につく、つまずいて転びやすいなどのデメリットも。上履きを選ぶ際には必ず試し履きをして、できるだけ子どもの足に合うものを選ぶことが大切です。
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