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「5年生存率1.7%」と宣告されたパパ。家族を守るために選んだ仕事とキャンサーペアレンツで発信し続ける理由

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36歳の時に「すい臓がん・ステージ4」で5年生存率1.7%と告知された関直行さんは、現在、妻と13才の娘・5歳の息子の4人家族。がん罹患時、最初に考えたのが「仕事」のことで、それはつまり「家族の生活」をどうやって守るかということでした。
入院中から仕事を再開し、辛い抗がん剤治療を受け続けながら現在も仕事を続けている関さん。子どもを持つがん患者のオンラインコミュニティ「キャンサーペアレンツ」の一員として、がん患者が直面する問題などについても声を発信している関直行さんに、がん患者として、夫として、父としての思いを聞きました。

特集「たまひよ 家族を考える」では、妊娠・育児をとりまくさまざまな事象を、できるだけわかりやすくお届けし、少しでも子育てしやすい社会になるようなヒントを探したいと考えています。

体に異変を感じて受診し、告知は「ステージ4の膵臓がん」

「僕のがんは治るものではないので、共存して生きていくことを考えています。先の話をすると妻も辛くなると思うので、夫婦でほとんどそういう話はしません。ただ、妻はすごく芯が強い人。僕が前向きにがんと向き合って来られたのも、半分以上は妻の力だと思います」

そう笑顔で話す関直行さんが、がんと告知されたのは2013年の秋。36歳で念願のマイホームを購入し、ひとり娘も幼稚園に入園したばかりで、まさに生活の基盤を固め始めた時でした。

その1〜2カ月前から胃に異変を感じていたものの、仕事が忙しくて病院を後回しにしていた関さん。9月初めにみぞおちから背中にかけて激痛に襲われた時も「ストレスで胃かいようにでもなったかな」と、少し軽く考えながら救急外来へ行ったそうです。ところが、翌日から入院して検査することに。

「検査ですい臓のあたりに何かあることがわかり、すぐに大学病院へ転院。大学病院の先生から『手術するまで悪性か良性かわからない』と言われ、1カ月後に手術しました。12時間以上におよぶ大手術で、すい臓の3分の1と胆のうと脾臓(ひぞう)、胃と十二指腸の一部まで切除して、術後は体重が20kg以上減っていました」(関さん)

関さんの意識がはっきり戻ったのは、術後4日ほど経ってからでした。病理検査の結果、「すい臓がんでステージ4」であること、リンパ節にも転移があること、そして、5年生存率は1.7%であることを告げられたそうです。

「妻に話したところ、妻は術後すぐに医師から説明を受けていて知っていたそうです。でも、僕には言えなかったと。もし逆の立場だったら、僕は不安ですぐ話しちゃったと思うんです。でも妻は、僕が言うまで知っているそぶりさえ見せませんでした。僕の気持ちを考え1人で抱えていたと思うと、すごいというか、強いなと思いました」(関さん)

入院中、スマホですい臓がんについていろいろ調べた関さん。しかし、出てくるのは『すい臓がんはとても予後が悪い』ということばかりで、希望が持てるような明るい話しは全くありませんでした。

「先のことなど考えられず、ただ絶望の淵に立たされているような状態がしばらく続きました」(関さん)

職場復帰したものの約束の「時短勤務」は守られず……

入院中は子どもたちからの手紙が力に。

治療が始まって少し落ち着いてきた時、関さんの頭に最初に浮かんだのは「仕事」のことでした。関さんが仕事をしていた会社は、関さん曰く「一般的に言うブラック企業のようなところ」。入院前まで、朝は始発で会社に行き、土日も出社するような、仕事中心の生活を送っていたそうです。30代半ばという年齢から、責任ある仕事も任されるようになっていました。

「急に仕事を抜けた心配もありましたが、やはりいちばん気になったのは、今後の家族の生活です。娘が成長して行くにも、僕が治療を続けるためにもお金は必要です。それで集中治療室から一般病棟に移ってすぐ、仕事を再開しました。メールで見積書や報告書などを送ってもらい、細かな数字の修正などを指示したりしていました」(関さん)

しかし当然ながら、以前のようには働けません。そこで関さんは、会社に治療と業務を両立するための時短勤務案を提出。検査や抗がん剤の副作用が辛いためいつでも休んで良いこと、出社は通勤ラッシュを避けて10時からで基本的に残業なし、その代わり給与を10%減額することなどを提案しました。

会社も快く受け入れ、関さんは復職することに。しかし、すぐに部下3人が業務のハードさから退職。その穴埋め業務が、治療中の関さんに重くのしかかりました。復職3カ月後には時差通勤も時短勤務もなくなり、抗がん剤治療中であるにも関わらず、勤務実態は入院前に逆戻りしてしまったのです。

「友人からは『体がしんどいことをちゃんと伝えた方がいい』と言われましたが、それを言うと『しんどいなら休めば』『仕事は無理だろう』という話になってしまいます。生活のために仕事を辞めるわけにはいきません。となると、周囲と同じように頑張るしかなくなってしまうんです」(関さん)

1年後には、売り上げ規模が小さい支店への異動と降格を命じられた関さん。「会社の立場なら妥当な判断なのかも」と思いつつも、やはりショックだったそうです。そして何より、この先の生活へ不安が膨らむばかりでした。

2人目が誕生し転職した直後、がん再発と転移も……

不安を抱えつつ仕事を続けていたある日、関さん夫婦に2人目の子ども、男の子が授かったことがわかりました。

「2人目については、夫婦ですごく悩みました。でも、がん発症から3年ほど経過して病状も落ち着いてきていたし、娘にきょうだいをつくってあげたい気持ちもありました。妻のママ友にも2人目を産む人が増えていて、僕たちも自然に任せようと。ただ、それを決断してくれた妻は、やはり改めて芯が強いと思います」(関さん)

出産が近づいた時、関さんは奥さんから「2人目の子どもが生まれる以上、会社中心の働き方を見直してほしい」と頼まれたそうです。関さん自身も限界を感じていたので、転職して家庭中心の働き方に変えることを決断。幸い、取引先の会社とのご縁があり、スムーズに転職が実現しました。

ところが、第2子誕生の半年後、転職して3か月目に、関さんは突然の下血と立ち眩みに襲われ救急外来へ。即入院して検査した結果、すい臓がんの再発を告げられてしまいました。2017年10月のことでした。

「すい臓がんが再発し、腹膜にも転移していると説明されました。平凡な日常生活から、足を掴まれ一気に引き戻された感覚で、最初の告知以上の大きな衝撃でした。
長男はまだ生後半年ですし、転職して2カ月半。この先どうなってしまうんだろうかと不安でいっぱいでした」(関さん)

治療方法も選択肢が少なくなり、「生活の質を保ちながら比較的やさしい副作用の抗がん剤治療で様子を見る」か「副作用が重いけれど効果が期待できそうな抗がん剤治療」のどちらかを選ばなければなりませんでした。関さんは悩み、子どもを持つがん患者のオンラインコミュニティ「キャンサーペアレンツ」の仲間に相談したそうです。

「その中に、選択肢の1つである『副作用が重いけど効果が期待できそうな抗がん剤治療』を受けた人がいて、『トライする価値はある』と言われたんです。それで僕も、辛い治療に立ち向かう勇気を持てました。
経験者である彼らの言葉は、医師の言葉とは違う説得力があります。もしキャンサーペアレンツの会員になっていなかったら、いまだに知らない情報や出会えていない人がたくさんいたと思うと、本当に参加してよかったです」(関さん)

がんを体験したからわかる「一歩前に踏み出す」大切さ

キャンサーペアレンツの創設者・西口洋平さんとともにラジオ番組にも出演。

「5年生存率1.7%」と言われた最初の発症から9年。関さんは現在も家族と暮らし、仕事をし、笑顔でがん患者としての声を発信し続けています。

「今はがんが進行してないらしいのでなんとかなっています。ただ、抗がん剤の副作用で、こうしてお話ししている今も実は耳鳴りがすごくて、時々頭痛も。常に何らかの副作用の症状がある感じです」(関さん)

そうした辛い体調の中でも、がん患者として体験を発信し続ける理由を尋ねると、「それを喜んでくれる人がいるから」と照れ臭そうに笑います。

「すい臓がんって、がんの中でも生存率が悪いんです。でも僕は発症から9年になりますが、こうして生きています。その話をすると、たくさんの人が『とても参考になりました』『元気をもらいました』と言ってくれます。そんなふうに誰かに力を与えることができたり、一歩を踏み出すきっかけになれることが、本当にうれしく感じます」(関さん)

多くの人が喜んでくれることが、自身の力にもなると関さん。「キャンサーペアレンツに参加したことが、『体験を発信する』という新たな挑戦のきっかけになりました。がんになったのはうれしいことではないけど、それによって今までになかった出会いや感情、行動、経験を得ることができたと思っています」と明るく語ります。

「もし今、大変な思いや不安を抱えている方がいらっしゃったら、ちょっと勇気を出して足を前に踏み出してみてほしい。そうすることで、何か発見やチャンスを得られるかもしれません。生きている限りはみんな平等に、新たな『明日』を迎えられるはずですから。
今回の記事を見た方が、健康診断を受けようと思ったり、保険を見直してみたり、これからのライフスタイルや体のことを考えるきかっけになればうれしいです」(関さん)


写真提供/関直行 取材・文/かきの木のりみ たまひよ編集部

関直行さん

PROFILE
45歳。2013年、膵臓(すいぞう)がんステージ4Aと診断される。
会社員として仕事を続けながら抗がん剤治療を受け、いったん症状が落ち着いたものの、17年に再発。
以降も月1~2回通院して抗がん剤治療しながら、会社員として勤務。
妻と5歳の息子と13歳の娘の4人家族で、子どもがいるがん患者同士がつながることができるオンラインコミュニティ一「キャンサーペアレンツ」の会員としても活動している。

キャンサーペアレンツ公式ホームページ

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