「うちの夫の家事能力、なんであんなに低いの?」妻の不満が止まらない、解決策は?【専門家】
今回のテーマは、夫の家事能力についてです。
もちろん、男性の中には家事を普通にこなす人もいます。しかし、家事にはノータッチで「うちの夫はなんで、あんなに家事能力が低いの!」とママがぼやく声も。
そんなママたちの声を口コミサイト「ウィメンズパーク」から紹介するとともに、父親の育児やワークライフバランスにくわしい大阪教育大学教授の小崎恭弘さんにアドバイスをもらいました。
うちの夫の家事能力、「なんでかなぁ」とハテナの山積み
「うちの夫の家事能力が低すぎます(涙)もちろん男性全体がというわけではなく、できる人もいます。できない人に共通していることって何なのでしょうか?
子どもの頃からしなかったから?
面倒くさいから?
自分がしなくても誰かがしてくれるから?
思いやりがないから?
思いやりがあってやってくれても『なんでかなぁ?』っていう家事レベルだったりします…」
この投稿に対して、夫の家事に対するスタンスや能力について反応する多くのママがいました。
■ 男性は狩りをして女性は家を守る。大昔からの性差では?
「大昔から、男性は狩りをして女性は家を守ると言いますよね。『桃太郎』のお話でも、おじいさんは山へしば刈りに行って、おばあさんは川で洗濯。もう、そういう生き物なんだと思います。今は男女平等と言われていますが、子どもを産めるのは女性だけだし、どう頑張っても、この身体の仕組みは変えられないから、100%平等にはできないと私は思っています」
■ 妻がやって当たり前、母がやって当たり前。そんな価値観だからでは?
「妻がやって当たり前、母がやって当たり前。そんな価値観が刷り込まれているのではないでしょうか。
調理師など、プロは男性がメインなことも多いですし、物理的にできない訳じゃないでしょう。ちなみに、我が家は夫の方が家事は上手なので、本当に助かってます…」
■ 能力差は男女関係なく、育ちでは?
「家事レベルだけで言えば、能力差は男女関係ないと思います。できる人もいれば、できない人もいる。そこらへんは、どんな能力でも変わりないのでは。
私も結婚当初はテキパキと家事をこなせなかったのですが、下手なりに、毎日やっていれば慣れるし、少しは上達しました。子育ても、そのあたりは同じですね。余談ですが、子だくさん家庭で育った男性は家事能力が高いように思います」
■ やらないで済む環境だから、やらないし、能力も上がらない
「やらないで済む環境だからじゃないですか?
これは良い悪いの話ではなく、仕事で頭の中が忙しいから、ほかにやってくれる人がいる部門まで頭を回さないってことではないかと。初めから、同じレベルで外で仕事をして、家事・育児も半分ずつやっていれば、そんなことにはならないと思います。でも、事情により子どもを産まないケースは別として、女性には出産があります。そのタイミングで仕事を手放す人はまだまだ多いです。家にいるとなると、自ずと育児のほか、家事もやることになります。その結果、夫のその部門の成長は止まる。こういうことだと思います」
■ 親の育て方や一人暮らしの有無などで違いませんか
「同居の義母が『息子には一通りの家事を仕込んでおいたから!』と言ってたんですが、結婚してみると、夫はお湯も自分でわかさないし、洗濯機の使い方も知りませんでした。
でも女性だって、子どもの頃から母親に甘えて、ずっと何もせずに結婚したら、何もできないのだと思う。結局、『必要に迫られて』やるしかないんですよね。結婚し、夫は仕事さえしてりゃ文句は言われないけど、汚部屋になったり、洗濯物が山になってたり、デリバリーだらけだと、悪く言われるのはまず妻じゃないですか。女性だって、面倒くさいのは同じだと思うんですけどね。つまるところ、『責任感』の欠如が影響してるのだと思います」
■ 家事も生活を担う大事な仕事だという自覚があるかどうかじゃ?
「うちの夫は結構やっていますし、部分的には私よりも繊細に家事を行う人だと思います。
次に使う人は、きっとこうしておいたほうが助かるだろう、というような想像力を働かせた家事を行います。息子もいますが、それはそれは丁寧に食器を洗います。雑な私よりもはるかに熱心に、丁寧に。もちろん時間はかかるので、それが家事能力の低さというのなら、そうかもしれません。でも、この几帳面さ、丁寧さは私にはないものだ、すごいと思います。大事なのは、家事が本来自分の仕事ではなく仕方なくやっているものだという認識なのか、それとも、家事もまた大事な仕事であり生活を担うものであるという自覚があるかどうかじゃないでしょうか」
固定的な性別や役割の分業意識から「実行のためのチーム作り」へ
みなさんの声から、夫の家事へのスタンスについて不満を持っている人も多いことが分かりますね。これらの不満への解決策はあるのでしょうか。男性の子育て支援やワークライフバランスについて詳しい小崎恭弘さんに聞きました。
「社会にはまだまだ『男性=仕事、女性=家事・育児』という、固定的な性別役割、分業の意識化や価値観が根強く残っています。
例えば、私は男性保育士ですが、この言い方も変な感じです。一般的に『女性保育士』とはあまり言わないですね。男性の場合のみ頭に『男性』がつきます。他にも『ワーキングマザー』とは言いますが、『ワーキングファザー』とはあまり聞かないですね。
これは単に個人の意識だけではなく、広く社会全体に浸透しているものだと思います。このような意識・無意識を問わず、これらの文化が形成されていく中で、人々の行動様式や振る舞いが形づけられていくのです。
ママたちの不満の声の根源は、やはり前提としてこの『固定的な性別役割分業』の価値に基づくモノだと思います。
以前は、多くの女性が専業主婦であった時代があり、社会全体でこの役割分業を受け入れ、それらの生活スタイルが社会的に一致していた時代がありました。昭和の高度成長期です。いわゆる『専業主婦と片働きの男性』のご夫婦です。
多分、個々にはいろいろ問題や不平もあったとは思いますが、社会的な『幸せモデル』がとても単純化してパターン化していたので、それが多くの人の幸せモデルとなっていたのだと思います。残念ながら日本の社会はその時にできあがったモデルの影響を、少なからず今も受け続けているのです。
『家事・育児』は、本来、日々の丁寧な生活は人の営みとして、最も大切にされるべきものです。また同時に子どもを育てることも、次の時代を作り出すとても尊いもののはずです。
『仕事優先』『経済主義』から、そろそろ脱却しましょう。
今は、多くの女性もお仕事をされ、以前に比べ専業主婦は圧倒的に減ってきました。もちろん専業主婦がダメだということではないのです。単に家族のライフスタイルが以前と大きく異なっているということです。
つまり令和の新しいモデルを作り出す必要があるのです。
それは『男性≒仕事・家事・育児』『女性≒仕事・家事・育児』という、固定的性別役割分業のボーダーレス化です。別の言い方をすれば『夫婦でこれらにどう対応するかを考え、作戦を立て、実行するチームづくり』ということです。
当たり前ですが、男性にも家事・育児はできます。自分には関係がない、あるいは責任がないという思いや価値観が、何もしない、何もしなくてもいい、という間違った行動につながっています。
だから、いろいろなスタートのタイミングで、きちんと話をしましょう。『家事・育児』など全てに、無条件で誰かに押し付けて良いものは存在しません。
子どもとママが産婦人科から退院してきた、家に帰ってきた最初のうんちのオムツは誰が替えましたか?
もしかすると、ママがなんとなく洗っていたり、替えたりしていませんか?
そこから変えていきましょう。
それらは決して当たり前でも、当然のことではないのです。夫婦で、そして家族で、新しいモデルに即した生活ができれば良いですね。
家事・育児はなんとなく自分のやるものだと思ってやってきた人は、家族で話し合えるといいですね。(取材/文・橋本真理子)
※文中のコメントは「ウィメンズパーク」(2022年1月末まで)の投稿を再編集したものです。
※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
※記事内の表現等を一部修正いたしました。(2022年6月8日)
小崎恭弘さん
PROFILE
大阪教育大学教育学部教員養成課程家政教育講座教授。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。ファザーリングジャパン顧問。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をから「父親の育児支援」研究を始め、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて、父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修等で、講演会等を行うように。著書に『育児父さんの成長日誌』(朝日新聞社)、『パパぢから検定』(小学館)など。

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