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子どもは未熟。大人が指示しないと…と思うママ・パパに見て欲しい。子どもが自身で学び育つ姿を描いたドキュメンタリー【監督インタビュー】

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©ガーラフィルム/ノンデライコ

約1万㎡の広大な敷地に、泥んこになって遊べるプレイパークエリア、音楽スタジオやゴロゴロできる部屋などがある「川崎市子ども夢パーク」、通称「ゆめパ」。子どもたちの笑顔や歓声が絶えない場所です。この「川崎市子ども夢パーク(通称:ゆめパ)」を舞台にしたドキュメンタリー映画『ゆめパのじかん』が製作されました。現代を生きる子どもたちの成長について感じていることを、監督の重江良樹さんに聞きました。

子どもたちがやりたいことを自由にやれる場所が「ゆめパ」

©ガーラフィルム/ノンデライコ

「川崎市子ども夢パーク(通称:ゆめパ)」は、「川崎市子どもの権利に関する条例」を実現する場所として、2003年に開設されました。乳幼児から高校生くらいまでの幅広い年齢の子どもや保護者たちが過ごせる場所として、年間約5万人(コロナ禍以前は年間約8万人※)に利用されています。

※川崎市子ども夢パーク 指定管理者制度活用事業 評価シート

――「子どもの居場所」をテーマにドキュメンタリー映画の制作を考えていたとのことですが、「ゆめパ」を選んだ理由は?

重江監督(以下敬称略) 子どもに関する悲しいニュースがあとを絶たない中で、子どもにとって安心して過ごせる居場所や信頼できる大人の存在の必要性を感じ、「子どもの居場所」について伝えたい、という思いが強くありました。
構想の段階では、ゆめパ以外の施設でも撮影をしてオムニバス的なものにしようかと考えていたんですが、ゆめパに何度か足を運ぶうちに、この場所だけで映画になる要素がてんこ盛りだと感じて、ここを舞台にしようと決めました。

ゆめパは川崎市の子どもの権利条例をもとに作られた場所。スタッフが、子どもたちのやることに余計な口出しをしないで応援する姿勢であることや、子どもたちとフラットな関係で接していること、子どもの声を大切にする居場所づくりをしているところにも感銘を受けました。

子ども同士のけんかも、子どもたち自身が解決していく

©ガーラフィルム/ノンデライコ

――ゆめパを利用する乳幼児親子の撮影からスタートしたそうです。小さな子どもと親の姿にどんなことを感じましたか?

重江 就学前の子どもを親たちが共同で保育する「自主保育」のグループに出会いました。「自主保育」という言葉をそのときは知らなくて、おもしろい取り組みだなあ、と。小さな子どもがはだしで泥だらけになって遊んだり、なたを使って木材を切ったり、火おこしをしたり…という姿を、親たちは「この先どうなるかな」という感じで見守っているようでした。

ゆめパでは曜日によって火と工具を自由に使える日があるんですが、日常では「まだ早い」とか「危ない」などとなかなか許されないようなことに、子どもたちが挑戦していく姿が魅力的でした。

――工具を使うときなどは、つい「危ないよ」と口を出してしまいそうですが…

重江 なたで木を切る子を撮っていた時には、僕もカメラを向けながらハラハラして(笑)。でも親たちは子どもがけがをしても、どんなことをしたらけがをしたとか、痛かったとか、やりたいことをやった結果の失敗から学ぶことが大切だと考えているようでした。ゆめパでは、子どもが失敗することを保障してあげていると感じました。
子ども同士がけんかになっても、大人が仲裁しないで見ていると、子どもは子ども同士で解決していくんですよね。自分でものごとを解決する力を身につけられるというところが、「すごくすてきやな」と、思いながら見ていました。

火おこしにしても、マッチをどう使うのか、どうやったら火が大きくなるのか、自分なりに工夫したりして。「それってすごい育ちやな」と。自然の摂理みたいなことを感覚的に覚えるんでしょうね。いろんな年代の子どもがいるので、大きい子たちがやっていることを見て学ぶというのもあると思います。

――そんなふうに見守る距離感って、親としてはなかなか難しい気もします。

重江 もちろん、日々の生活の中で「ごはんをしっかり食べよう」とか「早く寝ようね」とか、成長のために言わなきゃいけないこともあるんでしょうけど。子どものことを信じられる距離感も必要だと思います。あれこれ言い過ぎてしまうと、自分で考えようがなくなってしまうんじゃないかな。

ゲームや既製品のおもちゃや、テーマパークで遊ぶことを悪いとは言わないけど、子どもが自分で考えなくても楽しめるものがあふれてるな、とも感じます。草っぱらが広がる公園で「さあ、遊んでいいよ」と言われても何して遊んだらいいかわからない子どももいますよね。

子どもは社会のパートナーの一員

©ガーラフィルム/ノンデライコ

――近年、習い事などで忙しく過ごす子もいます。重江監督は子どもに大切なのはどんなじかんだと思いますか?

重江 子ども自身が好きで楽しくてやっているなら、スポーツや塾とかの習い事もすばらしいと思います。それもありながらも、子どもに大切なのは、子どもが過ごしたいように過ごせるじかんだと思います。思いきり遊んだり、好きなことに挑戦したり、友だちとのんびりしたり…。あとは、大人が子どもの意見を聞くじかんもあるといいんじゃないかなと思います。

――大人が子どもの意見を聞くじかんですか?

重江 子どもは未熟だから、大人が指示して導いてあげないといけないとか、そういう「子ども観」を持つ人がまだまだ多いんじゃないかな、と思うんです。新型コロナウイルスの流行で一斉休校した時に、子どもが家の前や公園で遊んでいることが批判されたりということがありましたが、子どもの育ちに対して大人たちが不寛容な面も多いと感じました。

子どもって遊んでいるだけにしか見えなくても、実はいろんなことを考えて成長していますよね。ゆめパのような安心安全と思える場所で、信頼できる人と一緒にいると、子どもは自分自身の力で育っていきます。自分で学び育つ姿は「すごいな」「かっこいいな」と感じるし、尊敬します。
だから僕は、子どもは大人と一緒に社会を作るパートナーだと思っていますし、子どもの意見・権利は保障され、尊重されるべきだと考えています。

子どもにも多様な生き方があって、いろんな選択をしていい

――映画では不登校の子どもたちが自分で生き方を模索する姿が描かれ、学校へ行かない選択肢もあるとわかります。

重江 ゆめパは、だれからも何かを強制されないし、気が合わないからって排除されないし、だからと言って仲よくする必要もないし、自分らしい姿を許される場所なんですよね。
小学校に入学してから、どうしても学校が合わないという子もいると思います。子どもがもしも「学校に行きたくない」と言ったら、きっと親はいろんな情報を探すんでしょうけど…子どもだから学校に行くのが当たり前ではなくて、世の中にはいろんな選択肢があると、親が知っておくことはとても大事だと思います。

子どもは遊んで考えて悩んで、疲れたら休んで、自分で成長する力があると思います。大人は、安心安全に過ごせる環境を用意してあげて、子どもを見守り信頼できる存在としてそばにいてあげる、そういうサポートが必要なんじゃないかなと思います。

お話・監修/重江良樹監督 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

「『ゆめパのじかん』をどんな人に見てほしいですか」と聞くと「子育て中の人、子どもにかかわるすべての人に、子どもの育つ力や子どもの権利のことを知ってほしい。そして子どもたちにもいろんな生き方があるよ、と知ってほしい」と重江監督。ゆめパでいきいきとした表情で遊ぶ子どもたちの姿を、ぜひ親子で見てみてはいかがでしょうか。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

※当記事では“じかん”とひらがな表記にしています。

重江良樹監督(しげえよしき)

©️ガーラフィルム/ノンデライコ

PROLFILE
大阪府出身。大阪市西成区・釜ヶ崎を拠点に、映画やウェブにてドキュメンタリー作品を発表するとともに、VPやネット動画など、幅広く映像制作を行う。子ども、若者、非正規労働、福祉などが主なテーマ。2016年公開のドキュメンタリー映画『さとにきたらええやん』は全国で約7万人が鑑賞、平成28年度文化庁映画賞・文化記録映画部門 優秀賞、第90回キネマ旬報ベストテン・文化映画第7位。

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『ゆめパのじかん』

©️ガーラフィルム/ノンデライコ

子どもたちの遊び場「川崎市子ども夢パーク」=通称「ゆめパ」。遊んで、転んで、立ち止まって…だれもが安心して自分らしく過ごせる居場所ではぐくまれる、子どもたちのかけがえのない“じかん”を情感豊かに描いた珠玉のドキュメンタリー。
2022年7月9日(土)より、ポレポレ東中野ほか全国順次公開

川崎市子ども夢パーク 公式サイト

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