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ことばを発する力は、正しい“もぐもぐ、ごっくん”が大切! 発語は口の発達と深いかかわりが【専門家】

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授乳
●写真はイメージです
szeyuen/gettyimages

子どもがことばを発する力は、口のまわりや口の中の筋肉など「口全体の発達」と深く関係しています。その発達は赤ちゃんがおっぱいやミルクを飲む動きからスタートしているのだとか。さらに、口の発達段階に合った離乳食の進め方は、「食べる」「飲み込む」といった動きを正しく育てるためにも大切です。こうざと矯正歯科クリニックの「ことばのきょうしつ」で診療を行う言語聴覚士 山田有紀先生に詳しく話を聞きました。

おっぱいやミルクを飲む力がことばの力を育てるスタート

――子どもの口の力はいつからどのように育つのでしょうか。

山田 赤ちゃんがおっぱいや哺乳びんを口に含んで、母乳やミルクを飲む動きが口の発達のスタートになります。口を開けてしっかり乳首をとらえる動きは、口のまわりの筋力を発達させます。赤ちゃんは口に乳首を含んだら、舌を前後に動かして乳首をしごくようにして母乳を飲みます。その動きで舌の筋力が育ちます。それをさらに飲み込むことでのどの筋力も発達します。赤ちゃんは、このように「哺乳」をすることで口のまわり、舌、のどなどを発達させていきます。この発達はおっぱいか哺乳びんかでの明らかな違いはありません。

また、低月齢のころ赤ちゃんは口呼吸がほとんどできず、鼻呼吸をしています。赤ちゃんはおっぱいやミルクを飲むとき息つぎをしないで飲みますが、それは飲みながら鼻呼吸ができるからです。大人は食べ物や飲み物を飲み込むときは呼吸を止めていますよね。ある意味、特殊能力ともいえる赤ちゃんのこの呼吸は、前歯が生えて離乳食が始まるころ、鼻や口の奥のほうが成長してくると徐々に消失し、口呼吸もできるようになっていきます。

――赤ちゃんの口の発達の面から見て離乳食の開始の目安はありますか?

山田 低月齢のころのおっぱいを飲む舌の前後運動は反射によるものですが、その反射が消えていくのが4〜5カ月ごろといわれています。
離乳食の開始時期は5カ月ごろといわれることが多いと思いますが、その反射がまだ残っていると、スプーンで食べさせようとしても舌が出てきてしまうので、スプーンを押し出してしまって食べられないことがあります。スプーンを下唇のあたりに当ててあげたときに、口に取り込もうとするか、は一つの目安になるでしょう。

あとは、大人が食べていると食べたそうにするとか、食べ物に興味を持って手を伸ばすとか、よだれが出てくる、などの様子が見られることも離乳食開始の目安です。月齢だけにとらわれず、子どもが食べ物に興味を示して、スプーンを口に入れられそうであれば始めてみるといいでしょう。

舌の動きの発達とともに、食べる力も育つ

――口の発達の面から見た離乳食の進め方を教えてください。

山田 離乳初期(5~6カ月ごろ)は、とろとろのおかゆやペースト状にしたいも類などをスプーンにのせてあげると、唇で口の中に取り込んで、舌が前後に動いて食材を飲み込む時期です。

離乳中期(7~8カ月ごろ)になると、舌が上下に動くようになります。食べ物を舌と口蓋(こうがい)で押しつぶして、前後運動でのどのほうに送り込んで食べられるようになります。舌と口蓋で押しつぶしができるようなよく煮た野菜ややわらかいゼリーやムースのようなかたさのものをあげるといいでしょう。

離乳後期(9~11カ月ごろ)になると、舌がさらに左右に動かせるようになります。舌が左右に動いて奥歯の歯ぐきのところに食べ物を運び、歯ぐきで押しつぶしてカミカミするようになります。

離乳完了期 12~24カ月ごろには、片方の歯ぐきでカミカミした食材を反対の歯ぐきに舌で移動してカミカミすることや、食べ物を飲み込みやすいように唾液と混ぜながらかたまり(食塊:しょっかい)を作り、のどまで送り込み、飲み込むことができるようになります。
2歳以降になれば、火を通した、大人の食事よりも少しやわらかめのものをたべさせるといいでしょう。

――昆布や小魚などのおやつはかむ力にいいと聞きますが、どうでしょうか?

山田 短い昆布などが口に入ってしまうと、のどにつかえて窒息の原因になってしまうので気をつけましょう。小魚なども、奥歯が生えそろってしっかりかみつぶせるようになってからがいいと思います。

――いかやたこ、こんにゃくなど、歯ごたえがある食材を食べさせる時期の目安はありますか?

山田 すりつぶしたものなら2歳くらいでもいいかもしれませんが、あまり急がなくていいと思います。歯が生えそろって、幼児食がほぼ終わりのころならいでしょう。

そしゃくや嚥下(えんげ)機能はだいたい3歳ごろに完成するといわれています。3歳ごろには、大きなおかずを前歯で一口大にかみちぎったり、もぐもぐかんで食べられていることが目安です。奥歯が生えそろってしっかりかめる3歳ごろになったら、歯ごたえのある食材やいろんな食感のものをおかずに取り入れ、しっかりよくかんで食べることを大事にしてほしいと思います。

――よくかまないで食べると、どのような悪影響がありますか?

山田 ここ数年、受診する子で多いのは鼻呼吸ではなく、口で呼吸しているケースです。その原因の一つとしては、やはり日本人の食生活が変化したことが考えられます。しっかりかまなくても食べられる、やわらかい食べ物に慣れてしまったことが大きいでしょう。口呼吸をしている子は、口がぽかんと開いてしまっているため、発音に影響が出たり、歯並びが悪くなったり、風邪をひきやすかったり、といった影響が出ることもあります。

3cmのポテトを食べるのに40分かかっていた子が…

――「ことばのきょうしつ」にきた子に、食べ方の指導をすることはありますか?

山田 言語聴覚士は嚥下の指導もします。半年ほど前、小学校1年生の発達障害のある子が、食べ物を飲み込めないということで受診しました。その子は幼児期は食事に興味がなく、ずっと高栄養飲料を飲んで生活をしていたそうです。小学校に入学するころになって、やっと食事に興味が出始めたんですが、いざ食べようと思ってもかむこともできないし、飲み込むことも難しい状況でした。

嚥下指導をする際には、親にお弁当を持ってきてもらって、食べている様子を見せてもらいます。最初に受診したときには、3cmくらいのポテトを食べるのに40分かかったんです。どういうことかというと、ポテトを口に入れてものどのほうに送り込み、飲み込むことができないので、処理に困ってどんどん口の中にためこんで、ポテトのエキスだけをチューチュー吸って飲んでいる状態です。やがてそのポテトを水やヨーグルトで流し込もうとしていました。なかなか飲み込めなくて飽きてくると、口の中にポテトが入ったままおしゃべりをしはじめたりしていました。

そこで、離乳中期くらいの食べ方から練習をやり直し、半年かかって現在は離乳後期くらいのかたさのものを食べられるようになりました。また、当初はポテトを食べるのに40分かかっていたのが、1食分のごはんやおかずを30分ほどで食べられるようになりました。少しずつ食べられるようになってきたら、食事に集中できるようになり、途中で飽きておしゃべりをすることもなくなりました。
最近は、学校の給食でも食形態を工夫することで、食べる量が増え、食べる時間も早くなったそうです。

お話・監修/山田有紀先生

監修/上里聡先生

取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

大人は何気なく食べ物をかんで飲み込んでいますが、この動きがことばを発する力に深くかかわっているということは、わかっているようで意外に感じた人もいるのではないでしょうか。子どもの口の力やことばを発する力を育てるために、毎日の食事をしっかりよくかんで食べる習慣をつけることが大切なのだそうです。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

※当記事では“ことば”とひらがな表記にしています

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