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身体・脳・心の発達とも密接に関連。ことばの力を伸ばす4つのポイント【専門家】

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笑う赤ちゃん
●写真はイメージです
hideous410grapher/gettyimages

ことばの発達には、子どもの身体や脳の全体的な発達が欠かせないのだそうです。ママやパパが積極的にことばがけをしても、子どもがなかなかことばを発しない場合には、生活リズムやコミュニケーションなどを見直す必要があるかもしれません。子どものことばの力をはぐくむために家庭で取り組めることについて、こうざと矯正歯科クリニックの「ことばのきょうしつ」で診療を行う言語聴覚士 山田有紀先生に聞きました。

身体、脳、心の発達と合わせてことばの力が伸びていく

――子どものことばの力はどのように発達するのでしょうか?

山田先生(以下敬称略) ことばの力はそれだけ単体で発達するわけではなく、身体・脳の発達と合わせた全体的な成長の一部として進んでいきます。首すわり、寝返り、おすわりなどの体の発達と、親とのスキンシップなどのコミュニケーションによる愛着形成を通した心の発達、それらが健康に育った上で、ことばの力が育っていきます。
さらにはずりばいやはいはいなどで自分で体を動かせるようになると、自分の興味のあるものに向かって行って、いろんなものを見たり触ったりすることで、たくさんの刺激を受け、さらに脳が発達していきます。このように五感で感じたことを基本に心も発達し、ことばの力も育っていきます。

――授乳や離乳食によるあごの力、舌の使い方の発達なども、ことばを育てるには必要でしょうか?

山田 食べることによって学ぶ舌や唇の動きは、ことばというより、発音のしかたの土台になります。離乳食を食べるという動作は、本能的に備わっているものではなく、学習していくものなんです。
離乳食はやわらかいおかゆから初めて、うまくごっくんできるようになったら少しずつかたさのあるもの、というふうに段階的に進めていくことが大事です。この順番を飛ばしてしまったり、子どもがまだ唇や舌の動きを獲得していないうちに、次の段階の大きさややわらかさの離乳食をあげてしまうと、誤った食べ方をしたり、丸のみしたり、かたいものを極端に嫌ったり食べられない、ということにつながることもあります。
発達の段階にあった離乳食を食べさせてあげると、舌や唇の動きが協調的に育ち、ことばを発するときの土台となります。

子どものことばをはぐくむ、4つのポイント

ことばの発達は個人差が大きいもの。「もしかして少し遅いかな…」と感じたら、日常生活の中でも子どものことばを伸ばすポイントがあるのだそうです。山田先生に4つのポイントについて教えてもらいました。

【ポイント1 生活リズムを整える】

身体と脳の発達に不可欠なことは「規則正しい生活習慣」だと山田先生は言います。
「朝決まった時間に起きて、3度の食事やおやつをしっかりとること、保育園や幼稚園に行くこと、外遊びで体を動かすこと、夜は決まった時間に寝て、しっかり睡眠をとること…このような生活リズムの中で、脳がいい刺激を受け取る土台を作ることがとても大事です。

最近は、大人の時間に合わせて生活をし、夜は22時、23時に寝るという子の話もよく聞きます。夜寝るのが遅くなると、朝はなかなか起きられないのは当然です。朝ごはんも食べられなくて、ぼうっとした状態で登園すると、午前中の保育園での生活でどんなにいいことをしても、脳が刺激を受け取ることができません。正しい生活習慣の繰り返しで、子どもの心身が育ち、ことばの力も育っていきます」(山田先生)

【ポイント2 子どもの「楽しい」を尊重する遊び・絵本タイムを】

ことばの発達を促す知育玩具や幼児教室などはありますが、それらを選ぶとき大切なことは子どもが「楽しい」と感じることなのだそうです。
「子どもがおもちゃを選ぶときなどは、まずは子どもが好きなもの、興味を持つものを選ばせてあげることが大事です。子どもが遊びたいものを『それもいいね』と尊重してあげながら、大人側から『こんなものもあるよ』と提案することで、さらに別の興味が広がるかもしれません。楽しんで一緒にコミュニケーションをとりながら遊ぶことで、自然と『お話ししたい』という意欲が育つでしょう。

読み聞かせは低月齢のころからでも始めてあげるといいと思います。抱っこしたり横で寝転んだりして読み聞かせをするのはスキンシップの一つです。また、内容がわからないとしても、人の声を聞かせることに意味があります。耳に人が発することばが入ってくることで、ほかの音と区別して、人の声を選択的に聞く耳を育てる意味でとても大事です」(山田先生)

【ポイント3 頭ごなしに否定したり、感情的に怒らない】

けがや命の危険につながるようなことは、親としてすぐにしかることが必要な場合もありますが、できるだけ感情的にならないようにしたほうがいいそうです。
「感情的に怒鳴ったり怒ったりすると、子どもには『こわい』という感情しか残りません。何がよくないのか、どうして親が怒ったか、ということがわからないと、また同じことをしてしまうことも。『ダメ!』というだけではなく、なぜ親が怒ったのか、どうしたらいいかを、ことばで教えてあげましょう。

とはいえ、親も余裕がないときや急いでいるときには、感情的に怒ってしまうこともありますよね。そんなときは『今はこんな理由で怒ったんだよ』と説明しながら、スキンシップをしたり、ぎゅっと抱きしめてあげるといいと思います」

【ポイント4 たっぷりのスキンシップ】

授乳やおむつ替えや入浴などのお世話、手遊びやこちょこちょ遊びなど、たくさんのスキンシップはことばをはぐくむ重要なコミュニケーションなのだそうです。
「スキンシップが大事なのは、いちばんには愛着形成のため。抱っこしてもらう、ぎゅっとしてもらう、などの肌と肌が触れ合う刺激を受けることで子どもの心が安定します。心が安定していると、環境からのさまざまな刺激を受けることができ、脳が発達します。

幼児期の子どもになると、親が料理を作っているときに足元にまとわりついてきたりしますよね。そこで10秒くらいぎゅっとしてあげると、自分から離れていくことがあると思いますが、それは短い時間でもスキンシップで安心が得られるからです。スキンシップによって愛情ホルモンが分泌されることで、リラックス効果、記憶力や集中力の向上作用などもあり、ことばの発達に欠かせない効果もあります」(山田先生)

落ち着きがなく動きが多かった子が、3カ月で座って話が聞けるように

――先生の「ことばのきょうしつ」に相談に来た子どもで、気になる症状が改善した例を教えてください。

山田 2021の年末ころ、保育園の年長さんの男の子で、少し動きが多い子が相談に来ました。落ち着きがないので、小学校に入学してから教室で過ごせるかどうか、という相談でした。
彼はなかなかじっとして話を聞くことができず、チョロチョロと動いたり、人の気を引いてみたりといった様子が見え、落ち着かない感じがしましたが、発達や知能に関する検査や言語の検査の数値的には問題がありませんでした。どうやら彼の動きの多さは特性によるものではなさそうです。私には、どうもママにかまってほしいアピールをしているように見えました。

ママは交替制勤務で夜勤もある仕事をしていて忙しいようでしたが、毎晩必ず2人っきりの時間を持ってもらうようにお願いしました。お兄ちゃんがいたのですが、お兄ちゃんとは一緒ではない、男の子とママと2人だけの時間を15〜20分くらいとってもらい、入浴でも抱っこでもいいので、スキンシップをしながらゆっくり話を聞いてあげてください、と話しました。そのようなかかわりを続けてもらった結果、3カ月ほどで男の子の落ち着きのなさが改善しました。2022年の春には小学校に上がりましたが、クラスではすっかり落ち着いて、きちんと座って先生のお話を聞けるようになったそうです。このように、スキンシップによる子どもの心の安定は、成長の上でとても大切なことなのです。


お話・監修/山田有紀先生 監修/上里聡先生 取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

子どものことばの力は、体や心の育ちと密接にかかわっています。生活リズムを整える、親子で楽しくコミュニケーションする、など、子育ての基本に立ち返ることが大切なのかもしれません。


●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

※当記事では“ことば”とひらがな表記にしています

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