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ことばの発音がはっきりしない「お口ポカン」の子が増えている?!子どもの発音が気になったら【専門家】

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キッドくわえるリンス
●写真はイメージです
szeyuen/gettyimages

子どもが少しずつことばを話すようになるとき、ことばを理解する力とことばを発する力「構音力」が同時に育っています。「構音力」は口のまわりや舌などの筋力がしっかり発達することが大切です。子どもの発音が気になるときに、家庭でできることについて、こうざと矯正歯科クリニックの「ことばのきょうしつ」で診療を行う言語聴覚士 山田有紀先生に聞きました。

子どもにとっては難しい!ぶくぶくうがいの練習方法は?

――最近の子どもたちの発音の力はどのように変化していると感じますか?

山田 私たち専門家は「お口がゆるい」と表現しますが、口をポカンと開けていたり、舌にちゃんと力が入らない、筋力が弱くなっている子が増えていると感じています。そのため、おしゃべりはしているけれど、何を言っているのかはっきりしない、という子が増えている印象です。コミュニケーションは取れていても、発音がはっきりしない、言い間違いが多い、などの症状は構音障害の可能性もあります。

――子どもの口の力を育てるのに、家庭でできることはあるでしょうか?

山田 離乳食が進んで、1歳半〜2歳ころに子どもが自分で歯ブラシを持ちたがるようになったら、コップを持たせてうがいにチャレンジしてみましょう。ぶくぶくうがいは、実は唇・あご・頰・舌などいろんな顔の筋肉を使う運動で、子どもにとってはなかなか難しいんです。3歳で約50%、4歳で約75%の子どもができるようになるといわれています。以下のような手順で教えてあげるといいでしょう。

【1】 コップから口に水を移し、「ペーっ」と出す
【2】口に水を入れ、唇をしっかり閉じて、口の中に水をためてから「ペーっ」と出す
【3】口に空気を入れてほっぺをふくらまし、左右に移動してほっぺの筋肉を動かす
【4】3ができるようになったら、水を口に入れて、左右に動かして吐き出す
【5】水を上の前歯や下の前歯のあたりに移してクチュクチュする


初めのうちは、コップから口に水を入れても、唇を閉じることができないこともあります。まず水を口に入れて唇を閉じることができるかが第1歩です。
ぶくぶくうがいの動きは頰の左右の筋肉を使います。上のプロセスの【3】は、空気で練習するのもけっこう難しくてできない子も多いです。このときにちゃんと口を閉じてないと空気がもれるので、空気がもれていないかチェックしましょう。
空気の移動ができるようになったら水を入れて練習します。口に水を入れて左右の頰に動かせるようになって慣れてきたら、口全体に水を移動させてよくクチュクチュしましょう。

ガラガラうがいは「カ行」の発音の練習にも

――ガラガラうがいについてはどうでしょうか?

山田 ぶくぶくうがいができるようになったら、次は上を向いてガラガラうがいにチャレンジしてみましょう。ガラガラうがいはのどの洗浄という目的もありますが、「カ行」の構音を育てる動きでもあります。「カキクケコ」の発音は、舌の奥のほうを上あごのほうに持ち上げる動きをしますが、うがいをしているときの舌は「カ行」の発音と同じ動きをしているんです。

「ことばのきょうしつ」を「カ行が発音できない」ということで受診した子には、ガラガラうがいができるかどうかをチェックしています。4歳くらいで「カ行」が発音できない子は、ガラガラうがいができないことが多いです。口に水を入れて上を向くことができなかったり、口の前のほうに水を置いて「ダラダラダラ」と声で言ったりすることもあります。

――ガラガラうがいができない子にはどのように指導するのですか?

山田 口に水を入れて上を向くこと自体が、むせそうで怖くてできないという子もいるので、そういう場合は、まずは上を向く練習からスタートします。上を向いて口を開けてもらって、私がスポイトで1〜2滴の水を舌の下側に落とし「10数えるから飲んじゃダメだよ」と言って飲み込まない練習をします。だんだんできるようになったら、水を垂らす位置を舌の上にしてみたり、もう少し水の量を増やしたりします。そんなふうにガラガラうがいができるようになることで、「カッ」という発音ができるようになります。そこから「カキクケコ」の発音の練習につなげます。
4歳半くらいから始めて、早い子は1カ月くらいでできるようになってきます。
手洗い・うがいの習慣は衛生面や健康面でも大事ですが、口の発達を促すためにもぜひ取り入れてほしいです。

手遊びや歌遊び、他者とのリアルなやりとりが子どもの口の力を育てる

――そのほかに口の力を育てるために、家庭でできることはありますか?

山田 特別なことではないですが、0歳のうちから親子で楽しく手遊びや歌遊びをすることは、脳の発達とともにことばの力を伸ばします。親子で楽しみながら遊ぶことで、自然と口を育てることにつながります。たとえばにらめっこ。にらめっこをするときは、いろんな変顔を作りますよね。さまざまな表情を作るために顔全体の筋力を使います。遊びの中で顔全体の筋力を使うと口のまわりの筋力も上がっていきます。

「げんこつやまのたぬきさん」や、「むすんでひらいて」などの手遊び歌は、相手を意識しながら一緒に遊ぶことが大事です。他者と同じ時間を共有して楽しみながら、コミュニケーションの基礎的な力やことばの力が伸びていきます。

――外遊びなどで運動をすることはことばの発達と関係があるのでしょうか?

山田 体を動かす遊びによって脳の運動にかかわる領域が発達します。ことばを発するのも、口のまわり、舌、あご、のどの筋肉が強調して行う運動です。体を使った遊びは構音に直接的に影響するというよりは、遊びを通して体がいろんな動きを学ぶ中で、同時に口の力も発達していくと言えます。

コロナで外遊びの機会も減っていますが、そうでなくても現代は、小さな子どもにも動画やスマホなどを与えがちな状況にあります。そういうものに極端に早く触れてしまうことで、他者と体を使って遊ぶ、他者とやりとりをする、ことばを使って遊ぶ機会が減ってしまっていると感じます。忙しいときには便利な道具ではありますが、子どものことばの発達のことを考えると、できるだけリアルなコミュニケーションを大事にしてほしいと感じます。

お話・監修/山田有紀先生

監修/上里聡先生

取材・文/早川奈緒子、ひよこクラブ編集部

うがいの練習や親子の遊びなどは、家庭の中でも日常的にことばの力を育てる方法として取り入れられそうです。子どものことばの力に少し不安を感じたら、まずは楽しみながらこれらの方法を試してみてはいかがでしょうか。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

※当記事では“ことば”とひらがな表記にしています

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