「世間から取り残された」「自分を否定されている」感覚にも。夜中もまったく寝てくれない赤ちゃんのお世話での疲弊はどう解決すればいい?【専門家】
「たまひよ」アプリユーザーへの調査で寄せられた、夜泣きや寝かしつけで夜も十分に眠れないという悩みとともに、睡眠時間が削られ精神的にも辛い時期のママのケアについて、乳幼児睡眠コンサルタントのねんねママ(和氣春花さん)にアドバイスいただきました。
子どもの寝かしつけ事情
まずは、なかなか子どもが寝てくれないというみんなの悩みをご紹介します。
■夜は1時間ごとに起きて寝かしつけ
「病院でも新生児ベッドに下ろすとすぐ泣く、息子はもうすぐ7ヶ月になるのですがなかなか寝てくれません。今だにお昼は抱っこ、夜も1時間ごとに起きてきます」(はるまんま)
■抱っこで寝かしつけ、ツライけれどこれが一番!
「上の子2歳のお昼寝のさせ方が、妊娠9ヶ月の今でも抱っこでユラユラ…一番早く眠りについてくれるのでやめられない」(なつこ)
■ギャン泣きにイライラ
「退院して1週間ぐらいの時、寝る前にギャン泣きされまいってしまい、イラッとしてしまうことがありました」(yke)
■置くと起きてしまい、何もできない
「お昼寝は抱っこじゃないと寝つかないし、寝ついた後はかなり慎重にベッドなどに寝かせないとすぐに起きてしまうし、無事に寝かせても数分で起きてしまいます。抱っこしたまま寝かせていると、他のことが進められず悩んでいます」(うる)
■夜泣きがすごい!
「夜泣きで寝かしつけに毎度苦労しています。ゆっくり寝たいです」(saisai)
■抱っこしたまま寝ていました
「寝かせるのがほんとに下手くそで、産後しばらくはソファーの角に座って壁にもたれて抱っこのまま一緒に寝ていました」(いろかなまま)
■超敏感な背中にスイッチにまいった…
「背中スイッチが敏感な子で生後1ヶ月から本当に寝てくれず…。帰宅が遅い夫と、実家の母も働いていて頼ることができず、手探りで育児してたので、産後ノイローゼ気味になったことも」(まかろに)
■何をしても泣き止まない
「ワンオペで何をしても泣き止まないときがツラかった。30分以上泣き声を聞き続けたら気持ちが落ちるし、何もしたくないと無気力になってしまう。夫が帰ってきても、八つ当たりしてしまい夫婦仲が悪くなることも」(ももん)
■世間から取り残されている感覚に
「夜中に子どものお世話をしている時は、本当に世間から取り残されているような感覚に陥りました。子どもの泣き声を聞いていると自分を否定されているようで私も泣いていました。寝不足は本当に怖い…」(めろ)
■夜中の2時間の夜泣きは辛かった
「育児で一番大変だったのは夜泣き。夜中の1時頃から2時間くらい泣き続けられる毎日はイライラもするし疲れも溜まるし本当に辛かった。現在ではやっと夜泣きと言えるほどのものは無くなって、自分もしっかり睡眠を取れるようになり精神的にも身体的にもとても楽になりました」(あき)
■一緒に子どもと泣いたことも
「魔の3週間、魔の3ヶ月、が1番しんどかったと今なら思います。とにかく何をやっても泣き止まない、夜中であろうと、日中であろうと私自身メンタルが落ち一緒に泣いたことも」(ボン母)
疲れているときは、コンディションを整えることも大事
なかなか寝てくれない、寝てもすぐ起きてしまうという子どもたちの育児で、イライラや寝不足気味のママたちに向けて、ねんねママ(和氣春花さん)のアドバイスをお届けします。
「抱っこでないと寝られず、置けば泣いてしまうので、ずっと家にいるのに家事も何もできない。
1時間ごとの夜泣きで寝た気がしない。真っ暗な世界で自分だけがずっと立って揺れている気がする…。
乳頭保護器を使わないと授乳ができず、毎度授乳に搾乳にミルクに…と大忙し。消毒は大変だし、他の人のように授乳ができない自分は不出来な母親に思えてくる。
一人目の育児の時、私自身もこういった経験をしました。みなさんの声に『わかるわかる…』と思うばかりです。
『上手に寝られないならネントレをすればいいじゃない?』という声も聞こえてきそうなくらい、ねんねトレーニング(ネントレ)という言葉や文化も普及してきた昨今ですが、このねんねトレーニングもママ(パパ)が疲れてボロボロの状態ではできないのが現実です。
私は赤ちゃんの睡眠の専門家として、ねんねトレーニングの方法についてアドバイスをすることも多々あるのですが、その前に大事だと言えるのは親のコンディションを整えることです。
産後の身体はボロボロ。それに加えて1日中、世話のかかる赤ちゃんの面倒を見なくてはならない。他のことはできなくて当然です。
でも、私たちはついつい『食器が出しっぱなし』『使った哺乳瓶がずっとそのままだ』と“できていないことリスト”を自分に突きつけてしまうのです。
そしてそのできていない事実を受け止められず、自分を動けなくさせている赤ちゃんや夫に怒りが向き、イライラしてしまう(そんな自分に失望する、母親失格だと感じる)という状況に陥ってしまいます。
大切なのは、まず“できない自分”を受け入れてあげることです。泣いてばかりで何をして欲しいのか言葉で話すこともできない赤ちゃんの世話に追われ、睡眠もろくにとれずいる間は、他のことができなくて当然です。できなくて当たり前だと、できない自分を(妻を)受け入れてあげてください。
そして、次にすべきことは、どうすればタスクを減らせるかの工夫を、夫婦で一緒に考えてみることです。
お皿洗いに手が回らないなら、しばらく紙皿と割り箸で暮らしてみるのはどうでしょう?
哺乳瓶が使いっぱなしになって消毒が間に合わないなら、もう1本哺乳瓶を用意してみてはどうでしょう?
夕飯の支度が満足にできないなら、ミールキットや宅配のお惣菜、作り置き代行などを利用してみてはどうでしょう?
寝不足解消のために、シッターさんを呼んだり、託児付きの整体院などを予約してみたりすることを検討してみてはどうでしょう?
『そんなお金はどこにもない』と、思うかもしれません。たしかに経済状況はご家庭ごとに異なりますが、ここも工夫次第な部分もあります。
ママはつい、自分の優先順位を下げがちです。5,000円のベビー用品は購入しても、自分のマッサージに5,000円を使うのはもったいない、贅沢だと思ってしまう…という思考回路になりがちです。
でも、ママをケアすることは、家庭にとって最優先事項と言っても過言ではないくらい大切なことです。ママの心に余裕があって笑顔でいられてこそ、パパの育児を(監視するような気持ちでなく)あたたかく見守ることができるし、怒らずにアドバイスすることもできるものです。赤ちゃんにも『早く寝ろ寝ろ寝ろ…』と、呪文を唱えるような気持ちではなく、心の余裕を持って接することができます(そしてその方が赤ちゃんも寝やすくなるものです)。
家計で見直せる部分はないか、払い過ぎている固定費はないか、見直してみて工面ができれば、先ほどあげたような負担を減らすための出費は決して無駄な出費ではないと思います。
こういったことをママが一人で考えるのではなく、何が大変だと感じるか、何がつらいのか、課題を紙やスマホに書き出して、冷静にパパと一緒に考える時間を設けることが大切です。
そんなふうに自分達をラクにする方法を考え、気持ちに余裕ができたら、ねんねトレーニングも検討してみてください。
まずは生活リズムを整えたり、睡眠環境を見直したりするところから取り組むことをお勧めします。
泣かせるだけがトレーニング方法ではありません。ご家庭の状況にあった方法で無理のないように取り組んでみてくださいね」(ねんねママ(和氣春花さん))
自分のことより赤ちゃん・家族優先になってしまうことが多いママたちが、少しでも自分ケアやラクになれる時間を作ることが大事なんですね。
(取材・文/酒井範子)
ねんねママ(和氣春花)さん
PROFILE)
乳幼児睡眠コンサルタント。株式会社mominess代表。慶應義塾大学卒業。自身が夜泣きに悩んだ経験から国内外の乳幼児睡眠に関する資格を取得。0〜3歳モンテッソーリ教師資格保持。YouTube「寝かしつけ専門学校ねんねママチャンネル」やInstagramなどで発信を続け、2022年現在、SNSの総フォロワーは10万人超。運営する「寝かしつけ強化クラス」では月間200問以上の睡眠に関する質問回答を行っている。著書に『すぐ寝る、よく寝る 赤ちゃんの本』(青春出版社)がある。https://mominess.com/
※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。