紙おむつの締めつけ力の違いは、赤ちゃんの睡眠に影響する!?【検証】

赤ちゃんの体形に合った紙おむつ選びに悩むママ、パパは多いのではないでしょうか。サイズに余裕がありすぎるとうんちやおしっこがもれそうだし、「少しきついかな?」と感じると太ももやおなかまわりのゴムのあとが気になったり・・・。また昼夜問わず、1日中つけているものだからこそ快適性も気になります。
そこで「紙おむつのおなかまわりの締めつけ具合が、赤ちゃんの睡眠に影響を与えることはあるのだろうか?」ということを花王 サニタリー研究所が検証したと聞き、取材しました。検証は、大阪大学大学院連合小児発達学研究科(谷池雅子教授、毛利育子准教授)の協力を得ています。検証に携わった、研究室長 奥田泰之さん、グループリーダー 福田優子さんに検証内容と結果について聞きました。
おなかまわりの締めつけ力が違う2タイプの紙おむつで、睡眠の違いを検証
紙おむつによるおなかまわりの締めつけと睡眠との関係性を調べる調査は、実は珍しいと言います。
「昼寝や夜の就寝時は、おなかまわりを締めつけすぎない衣類の着用が子どもには大切といわれていますが、おむつの腹部の締めつけに関する報告はありません。
おむつはもれないように、おなかまわりの締めつけが強いものがあったり、テープタイプだと、ママやパパがテープをきつく締めることもありますが、そうしたことが、育ち盛りの乳幼児の睡眠にどのような影響を与えているのかということは不明でした。そこで今回、検証してみました」(福田さん)
検証は、6カ月~12カ月の乳幼児14名を3グループに分けて2021年9月~12月に行いました。普段通りの睡眠を測定するため検証は自宅で行ってもらい、腹部への締めつけ力が異なるパンツ型紙おむつ2タイプ(サイズは、いつも使っているものと同じ)をはいてもらいました。
肌触りや吸収力など同じ条件で検証するために、すべて同じおむつを使用。おなかまわりの締めつけ力だけを変えました。
おむつは、それぞれ平日の夜に5日間連続で着用してもらい、そのうちの3日間の睡眠中に、子どもに活動量計と心拍数計を装着してもらい、体の動きの量や心拍数を測定します。また、睡眠中の様子を赤外線カメラで動画撮影します。
ほかにもママやパパには睡眠日誌やアンケートに協力してもらい、①起床時刻、②夜、寝かしつけ始めた時刻、③夜、実際に眠った時刻、④夜間のおむつ交換の時刻、排尿・排便の有無などをこまかく記入してもらいました。
また体調不良の子はデータからはずしており、最終的には11名の乳幼児が評価対象になりました。
検証のしかた
赤ちゃんは、心拍数計を胸に装着。おむつ前側の表面に、寝返りなどの睡眠中の動きを測定する活動量計をつけて、いつも通りに寝てもらう。また寝室に赤外線カメラを設置し、寝ているときの様子を動画で撮影してもらう。
おなかまわりがきつくないおむつだと、夜中、目覚める回数が少ない結果に
なかには「おなかまわりの締めつけって、商品によってそんなに違うの?」と思うママやパパもいるかもしれませんが、接触圧測定器で締めつけ力を調べたところ、今回の検証で使用した締めつけが強いおむつは、Mサイズでは締めつけが弱いおむつの2.7倍。Lサイズでは2倍の差がありました。また体動量や心拍数の結果にも差が出ています。
「検証の結果、寝かしつけ始めた時刻には差がないのですが、11名中8名が、締めつけ力が小さいおむつのほうが“寝つくまでの時間”が短い結果が得られました。また締めつけ力が小さいおむつのほうが、夜中、目覚める回数も少なく、起床時刻も早い傾向が見られました。子ども自ら目覚めた時刻を起床時刻として測定してもらっているので、夜中、目覚める回数が少なくなるなど、睡眠の質の向上により起床時刻が早くなった可能性が考えられます。
また締めつけ力が小さいおむつのほうが、寝ているときの寝返りや布団をはぐなどの動きが少ないこともわかり、深い睡眠が増加した可能性が考えられます」(福田さん)
検証に参加したママやパパからは、次のような声が聞かれました。
●締めつけ力が小さいおむつのほうが、リラックスして寝ていたような気がしました。
●締めつけ力が小さいおむつのほうが、目覚める頻度が少ないように感じました。
●夜中、必ず授乳があったのに、締めつけ力が小さいおむつだと、夜、一度も起きなくてびっくりしました。
締めつけ力の差によるゴムのあと
写真上は、締めつけ力が小さいおむつをはいたとき。下は締めつけ力が大きいおむつをはいたとき。下の写真は、おなかまわりにゴムのあとが強く残っていたり、赤くなっていることがわかります。
もれの原因はフィット感と吸収性。おなかまわりの締めつけは関係なし
「おなかまわりをしっかり締めないと、もれが心配」というママやパパもいるかもしれませんが、今回の検証では、おなかまわりをきつく締めつけなくてももれが増えないこともわかりました。
「ママやパパに記入してもらった睡眠日誌を見ても、おなかまわりの締めつけ力の違いによって、もれ率に差はありませんでした。
もれの原因は、フィット感と吸収性です。体にフィットしないゆるいおむつや吸収性が低いおむつだともれやすいのですが、おなかまわりのゴムがきついからといってもれを防ぐことにはなりません。
これはテープタイプも同様で、テープをきつく締めたからといってもれを防ぐことにはなりません。テープタイプの場合は、多少個人差はありますが、おなかまわりにママやパパの指が1本入るぐらいのゆるさが目安です」(福田さん)
また入り枚数と価格のバランスで選ぶなど、大人目線でおむつを選ぶこともあると思いますが、おむつを実際にはくのは子どもです。そのため子ども目線で選ぶことが大切とも言います。
「今回の検証では子どもにとって快適なおむつだと睡眠の質が高まり、よい睡眠がとれることがわかりました。
翌日の朝の起床も早くなった結果から、ぐっすり眠ってスッキリ起きるということにつながり、生活リズムを育む一助になるかもしれません。
おむつを選ぶときは、子どもの使い心地・はき心地も考慮していただけたらと思います」(奥田さん)
お話・監修・写真・図版提供/花王 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部
「夜中、何回も起きる」「寝つきが悪い」など子どもの睡眠で困ったときは、おなかまわりをチェックして、おむつがきつくないか確認してみてはどうでしょうか。今回の検証に協力した、大阪大学大学院連合小児発達学研究科 毛利育子准教授は「睡眠は脳発達に非常に重要です。とりわけ乳児期には脳が最も発達するため、十分な長さの良質の睡眠が必要であることが近年明らかになってきました。よい睡眠のためには環境も重要で、体に直接触れるおむつの装着感は、子どもにとって非常に重要な環境要因です。快適で負担がかからないおむつを選んであげてください」と言います。
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