「夫まるごと無理になった」「子どもをとられると本気で信じてた」「LINEの着信音に舌打ち」 今じゃ笑い話。敵対心&警戒心むき出しだった産後のガルガル期エピソード。専門家に聞く
「たまひよ」アプリユーザーに「出産後に“ガルガル期”はありましたか?」と、質問。すると約50%が「ガルガル期があった」と回答しました。そこでガルガル期のエピソードを募集したところ、夫や家族、親しい人にイライラしたという声が多数。そもそもガルガル期はなぜ起こるのでしょうか。ベテラン助産師の浜脇文子先生に聞きました。
ママの約半数が「いつもと違う自分」を実感
ガルガル期とは出産後、母が赤ちゃんを守ろうとして周囲に攻撃的になったり、感情の起伏が激しくなったりする時期を言います。学術的には認められていませんが、多くの母が「いつもと違う自分」を経験しています。
寄せられたコメントを分析してみるとイライラした相手は「夫」が一番多く、産前は仲良しだった相手ですら「小さなことで爆発していた」という声が寄せられました。
一番身近な存在だけにサンドバック状態の夫編
「夫まるごと、すべてにイライラしてました」(な)
「一時期だけですが、赤ちゃんだけでなく私に触ってきてもゾワッとしました」(あいちゃん)
「なぜかわからないけど夫に赤ちゃんを抱っこされると、連れ去られるかもという恐怖心に襲われたことがあります」(ゆあ)
「とにかくイライラしていました。夫の匂いが生理的に受け付けなくなり、近づいてくることさえ嫌でした」(MUGI)
「なんの痛みも経験しないで親になれた夫を憎らしく思うことがありました。もちろん夫は何も悪くない(笑)」(てそ)
「赤ちゃんを守りたくて過保護になりすぎて、夫が少しでも雑な扱いをしたり哺乳瓶の洗浄が甘かったりすると激ギレしてました」(さのまる)
「沐浴の際に夫が赤ちゃんをお湯に浸したら泣き出して、『なんてことしてくれるんだ』と、蹴りそうになりました(笑)」(きの)
「夫が仕事に行っているときは『早く帰ってこないかな』と、ワクワクするのに、帰宅するとなぜかイライラして八つ当たりしてました」(チャン)
仲の良かった相手に、小さなことでも激ギレしてた編
「育児の悩みを仲良しの母に相談しました。すると母が母の友人にその悩みを話していることが発覚。ぶちギレてしまいました。翌日も怒鳴り散らし、1週間思い出してはキレてました」(まこちん)
「里帰り中、おおらかに接してくれる実母に無性にイライラして、里帰りなんてしなきゃよかったとさえ思いました。でも里帰りしなかったら夫にイラだって、里帰りすればよかったと思ったんだろうな(笑)」(ぴよ)
「産褥期『からだを休めて』と、実母が赤ちゃんを連れていこうとした際に『私の子なのに』と、大泣きしました」(はちこ)
「夫と義両親が『赤ちゃん預かるからゆっくり休みなさい』と、赤ちゃんを連れて行こうとしたとき、赤ちゃんを取られると思い込んで赤ちゃんをぎゅっと抱きしめて拒否。それからしばらくは『赤ちゃんを奪われる』と、本気で信じてそばから絶対に離れませんでした」(ぷてぃこ)
「良好な関係だった義父の冗談にイライラ。いつもなら笑える冗談なのに1ミリも笑えませんでした」(ミーママ)
「先輩ママや親からのアドバイスにいちいちイライラしてましたね。『新生児期が寝ているだけだから楽だよ』って言われて『はぁ⁉』と、反発したけど半年たった今、その言葉は正しかったと痛感(笑)」(もも)
あの時の私はやばかった。感情がコントロールできなかった編
「何に対してもイライラ。LINEの通知音に舌打ちしてました(笑)」(な)
「とにかく些細なことでイライラ。『放っておいて!』と、言うくせに放っておかれるとまたイラつく(笑)」(ちっふぃー)
「何を言われてもイライラして、そのイライラを隠し続つけることに疲れて、隠れて泣いていました」(あーの)
「私以外の人に赤ちゃんが抱っこされるととにかくハラハラして『早く返して』が口癖でした」(かぐら)
「夫や実両親、友人には何とも思わなかったのに、同居の義母だけダメでした。義母は産後、家事すべてをやってくれて産後1ヶ月丸々床上げに専念させてくれた恩があるのに……です。
何をされてもイライラして、特に授乳が上手くいかず、全く寝ない子だったので、義母がよく代わりにあやしてくれたのですが『泣いてても可愛い』『何されても嫌じゃない』という発言にイライラ。『ばぁばの子になろうか』という発言には爆発寸前でした。
産後2ヶ月目で里帰りをして事なきを得ましたが、そうでなければどうなっていたことやら」(あーみ)
自覚ないけど、ガルガル期があったらしい編
「別の部屋にこもったりして、無意識に夫と娘を遠ざけていたらしいです。あとから夫に言われました。夫に娘を触ってほしくなくてイライラしていたことは覚えています。」(のののみ)
「些細なことで怒っていたらしく、夫は話題や話し方、接し方などかなり気を遣っていたそうです」(330)
「当時は自覚がなく今から思えば……なんですが。消毒しないで赤ちゃんに触ろうとしたり、ミルクの飲ませ方など、お世話の仕方に細々ときつい口調で注意していた気がします」(厚焼き玉子)
イライラする相手は自分以外全員だったり、夫と自分以外だったり、特定の相手だったり、さまざまなパターンがありました。そもそもガルガル期はなぜ起こるのでしょうか。ベテラン助産師の浜脇文子先生に聞きました。
「ガルガル期の原因は、産後のいろんな要素が絡み合っている」と、専門家
「みなさんのコメント素敵です。子どもを守るための動物的な本能がフル発動し、母として優秀な行動と言えるでしょう。ただ度が過ぎると周囲との間に亀裂が生まれますので、気を付けないといけません。
『ガルガル期』という表現は、医学的な用語ではありません。ママたちの気持ちを表現した言葉だと思います。産後、母が精神的に不安定な状態になることがよくあり、原因はいろいろな要素が絡み合っていると推測されています。
原因のひとつがホルモンバランスの変化です。その中でも『オキシトシン』というホルモンが影響していると言われています。
オキシトシンは別名・愛情ホルモンとも言われ、赤ちゃんと接することで脳から分泌され、愛おしい感情や幸せな感情に包まれるすてきなホルモンなのですが、一方で攻撃性も併せ持っているのです。
愛おしい=私が守らねば、という防衛本能が強くなりすぎて、周囲に必要以上の警戒心が生まれ攻撃性を強めてしまうのです。
さらに考えられる原因は『育児疲れ』です。
ガルガル期が一番出やすいのが産後1ヶ月と言われています。
妊娠中から『母としてがんばろう!』と、張り切っている方も多いはず。しかし思い通りにいかないのが出産・育児です。完璧主義の人ほど思い描いていた出産・育児ができないことに苛立ち、いつしか『自分はダメ人間なのか』などと何に対してもネガティブな思考になり、夫や家族の何気ない言動にいちいちカチンとしてしまうのです。
こういった色んな要素や感情が絡み合い、ガルガル期を生み出していると言われています。対策としては
①事前に相手や周囲に話しておく
自分の感情が不安定だな、コントロールが難しいかもと感じたら、早い段階で周囲にそれとなく話しておきましょう。自分の気持ちを素直に伝えられるといいですね。が、相手が理解してくれないなど誤解が生まれそうな場合は、ネットや書籍を見せるのも手段です。
②周囲と離れる
実母や夫など産前は良好な関係だった人であっても、容赦ない言葉を浴びせてしまうパターンをよく耳にします。相手に甘えている、信頼しているからだと推測できますが、一度口にしてしまった言葉は消すことはできません。
『失言してしまいそう』と、思ったら部屋を出て別室にこもる、トイレにこもるなど、とにかく相手から離れましょう。
③ガルガルする自分を許してあげることも大切
言いすぎてしまった時などは、私はダメな親だと過剰に悲観的にならず、そういう時期なのだと自分を許してあげてくださいね。勿論、その後きつく言い過ぎた人へのフォローは必要ですが、たまには友人やママ友などと楽しい時間を過ごして、行き場のない気持ちを発散させましょう。
そして赤ちゃんとの生活を見直して、イライラを減らしましょう。『大人の生活パターンに赤ちゃんの生活を組み入れよう』と、考えている方はあきらめてください(笑) 赤ちゃんをコントロールしようなんて、私でもできません。大人と同じ生活ができるのは、もう少しあとです。
0歳児は赤ちゃんのペース優先。母は疲れが蓄積しないよう、家族に協力を仰ぎながら長期戦でがんばりましょう」(お話:助産師 浜脇文子先生)
濵脇文子(はまわき ふみこ)
助産師・保健師・看護師。大阪大学招聘准教授。星薬科大学非常勤講師。総合病院・クリニック・助産院など様々な場所に勤務。母と赤ちゃんの笑顔が大好きで、数千人の母子のケアに携わります。産前産後ケアセンターの立ち上げに参加したり、民間企業での事業開発など多方面で活躍。自治体の講演や各種メディア執筆では、ひとりひとりのペースにあわせた母に寄り添う姿勢と、明るく軽快な語り口で人気を博します。
文/和兎 尊美
※文中のコメントは「たまひよ」WEB・アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※調査は2022年6月実施の「まいにちのたまひよ」アプリユーザーに実施ししたものです(有効回答数504人)
※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。