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家事も育児も夫婦で平等、”イクメン”という言葉が存在しないフィンランド。男性育休はどうなっている?

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家族の質の時間
●写真はイメージです
Suzi Media Production/gettyimages

2021年度の日本の男性の育児休暇取得率は、過去最高を記録したものの、13.97%にとどまりました。
一方、ジェンダーフリーが進み、国連機関発表の幸福度ランキングでも5年連続世界一のフィンランドでは、父親休暇取得率が約8割にのぼります。
なぜこれほど大きな差が開くのでしょうか。『フィンランド 幸せのメソッド』の著者・堀内都喜子さんに、フィンランドの男性育休の事情を聞きました。

男女平等でありながら柔軟性を持たせた育休制度

――日本では育休制度の改正により2022年10月から“男性版産休”とも呼ばれる出生時育児休業がスタートしています。男性の育児休暇取得率の向上が期待されています。フィンランドにも男性向けの育休制度はありますか?

堀内さん(以下敬称略) フィンランドにはもともと父親向けの育児休暇制度があり、父親休暇と呼ばれています。取得率は8割を超えていました。しかしその期間は2カ月しかなく、女性と比べて短いので不公平だという声もありました。そこで2022年8月1日、これまでの育休制度を改正した「家族休暇」がスタートしました。新しい制度は夫婦で320日(勤務日)分の育児休暇を均等に分けられるようにしています。

たとえば産後1カ月の休暇を1人または2人で取り、その後の休暇を均等に分けます。320日は勤務日で数えるので、休日などを合わせれば約7カ月ずつ休めることになります。


――いきなり均等になることに対して、男性側のとまどいはありませんか?

堀内 必ずしも均等に取らなければならないというわけではなく、最大63日を互いに譲ることができるようになっています。以前の制度よりも柔軟性があり、利用しやすくなりました。

フィンランドでは男性が育児をするのが当たり前で、ジェンダー平等も進んでいるので、公平になることには抵抗がないと思います。日本のイクメンに当たるような言葉はありませんし、育児する男性がかっこいいというイメージもありません。新しい育休制度でも、ママが仕事復帰すると途中からパパはワンオペになりますが、子どもの成長が毎日見られてうれしい、妻の大変さがわかった、自分が家計を支えなければならないというプレッシャーから解放された、といった声が聞かれるので満足度は高いと思います。


――男性の育児参加は当たり前ということですが、かかわり方としては積極的ですか? 受動的ですか?

堀内 フィンランドも以前は男女平等ではなく、家事と育児は母親側に負担がかたよっていました。ところが核家族化が進む中で、男性も育児をしなければ回らない状況になり、育児を手伝うようになりました。今の子育て世代は、父親が家事や育児をしている姿を見てきた世代なので、自分から積極的に育児にかかわりたいという人が増えています。今ではもう、男性が育児を「手伝う」のではなく、主体的にかかわることが求められている段階です。

また、フィンランドは離婚率が高いのですが、多くの場合は離婚後、共同親権になり、別れたあとも育児は均等にやるのが一般的です。これまで女性に育児を任せていた男性も1人でやることが増えるので、離婚後のほうが育児をしているという男性もいます。

フィンランドの男性育休は政治家から広がっている

――日本ではイクメンブームなどもありましたが、男性の育児休暇取得が根づいていません。フィンランドと日本の違いはどこにあるのでしょう?

堀内 フィンランドでは、いわゆる現役世代の若い政治家が多いことが関係していると思います。国会議員の平均年齢は46才で、70年代、80年代生まれが中心。90年代生まれもいます。子育て中の政治家が多く、サンナ・マリン首相になってからの3年間で、男女合わせて8人の閣僚が育児休暇を取っています。

こういったことが若い男女に対する、「育児休暇を取ることがキャリアのさまたげにならない」というメッセージになっています。子どもと一緒に過ごしたい、みんなのためにも時間を作っていきたいという政治家の思いとともに、男性の育児休暇取得も進んでいきました。


――日本では政治家が育児休暇を取ると、SNSなどでいろいろな意見を言われることがあり、賛否両論ある印象です。フィンランドの世間の反応はどうですか?

堀内 フィンランドでは、ただただニュース的に、誰々が出産します、育児で半年休みます、その間はこの人が代理を務めます、ということが伝えられます。男女関係なく、「おめでとう」と祝福される雰囲気があります。

ある党の女性党首は、党首選の出馬前に、「私は今妊娠しています。党首に再選されてから産休に入り、その後復帰します」と宣言しましたが、これといった批判もなく祝福されていました。そして実際に再選され、育休後に復帰しています。休む前に代理の人を指名していますし、長い目で見たらそれも一時的なことなので、政治家としての評価がマイナスになることはありません。


――一般企業で男性が育休を取る場合はどうですか?

堀内 私のまわりだと、父親になったほぼすべての男性が育休を取っています。父親になった男性が育休を取らなかったら不思議がられるほど、育休を取ることは一般的です。そもそもフィンランド人は、夏休みを4週間取るなど長期休暇には慣れています。緊急の場合は連絡を取り合えるように準備もしていますし、必要なら短期雇用で代理の人が穴埋めします。

私の同僚は夏休みと合わせて1カ月半休みましたが、復帰後、彼は「子どもと一緒にいたくて、家をなかなか出られない」と言っていました(笑)。

「家事も育児も男女平等」のフィンランドでも少子化が進んでいる

――フィンランドは子育て支援が充実した国として知られていますが、出生率が低下し、少子化が進んでいると聞きます。なぜだと思いますか?

堀内 フィンランドでも少子化が進んでいて、2010年には1.89だった合計特殊出生率が、2019年には1.35まで下がっています。

制度や保育がたりないわけでもないし、結婚ができないわけでもありません。ただ、優先したいものがたくさん出てきたのだと思います。パートナーがいても子どもが欲しいとは限りません。キャリアも充実させたいし、旅行にも行きたい。子どもを持つことを後回しにしているうちに、欲しくなった時には現実的に難しいこともありますが、それでもフィンランドでは多くの人々が柔軟な働き方に満足しています。


――日本でももっと柔軟な働き方ができれば、育児においてもみんなが協力する雰囲気が高まりそうですね。

堀内 以前、フィンランド人の上司はこう言っていました。「自分の子どもの世代のいいモデルになりたい」と。いいお父さん像を、自分の子どもだけでなく、子どもの友だちにも見せることが大事だと思います。それを主体的にやっていれば、若い人たちにも子育ての喜びや楽しみが伝わるかもしれません。

育休の取りやすさを決定づける「雰囲気」

――日本とフィンランドの2つの国を見てきた堀内さんから見て、日本の男性が育児休業を取りやすくなるために必要なことは何だと思いますか?

堀内 雰囲気だと思います。フィンランド在住の日本人の知人は、日本とフィンランドどちらにも育児休暇制度があって、『どうぞ取ってください』と言われるけれど、「雰囲気が圧倒的に違う」と話していました。彼は日本では、まわりの雰囲気を見て何となく取れなかったそうですが、フィンランドでは「私、育休取ります」「私も取ります」という雰囲気なので、後に続くだけでよかったのです。

そして、雰囲気づくりで大切なのは教育だと思います。フィンランドの人たちは、学生時代から育休制度について学んでいるので、育休を取ることへの理解が広まりやすかった。日本でも育休への関心が高い学生が増えていますが、まだ前例が少ない。前例が増えれば、キャリアが中断しないか、まわりに迷惑がかからないかと心配する人たちも育休を取りやすくなると思います。

また、フィンランドでは、子どもがいるかいないか、既婚か未婚かに関係なく、みんな定時に帰るのが当たり前なので、子育てで早く帰る人がいても「なんであの人たちだけ?」とはなりにくい。育児休暇の期間が終わっても、子どもが熱を出したり、親の介護が必要になったりと、いろいろなことが起こります。個々のワークライフバランスを尊重する職場環境が、育休の取りやすさにつながると思います。

お話/堀内都喜子さん 取材・文/香川 誠、たまひよONLINE編集部

男性の育児休暇の取得率を上げていくには、制度改革だけではなく“雰囲気改革”も大切です。そのために必要なのは、育休を取る人だけが特別ではなく、みんなが公平であるということ。育児休暇だけでなく通常の有給休暇も取得しやすい、みんなが定時に帰りやすい、テレワークなど柔軟な働き方ができる、といった働き方改革全般を進めていくことが、結果的に男性の育児休暇取得率にもつながるのかもしれません。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

堀内都喜子さん(ほりうちときこ)

PROFILE
長野県生まれ。日本語教師等を経てフィンランド・ユヴァスキュラ大学大学院に留学し、修士号を取得。その後、フィンランド系企業での勤務を経て、現在はフィンランド大使館で広報の仕事に携わる。著書『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書)で「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」でイノベーション部門賞受賞。近著に『フィンランド 幸せのメソッド』も。

フィンランド 幸せのメソッド

2018年から5年連続で「幸福度ランキング世界一」を達成したフィンランド。世界から注目されているフィンランドのジェンダー平等や子育て支援、教育などの仕組みをまとめた1冊。堀内都喜子著/946円(集英社新書)

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