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ジェンダー・ギャップ指数世界第2位のフィンランド。「それでも女性の負担はまだまだ大きい」ママたちのホンネ

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大人のカップルを楽しむ冬
●写真はイメージです
SeventyFour/gettyimages

2022年7月に発表された「ジェンダー・ギャップ指数2022」(世界経済フォーラム)のランキングで、日本は146カ国中116位という、先進国の中でも最低レベルの評価となっています。なぜ、日本ではジェンダーフリーが進まないのでしょうか。ジェンダーフリー先進国に、ヒントが隠されているかもしれません。『フィンランド 幸せのメソッド』の著者でもある、ライターの堀内都喜子さんに、フィンランドのジェンダーフリーについて聞きました。

世界2位のフィンランドでも「まだまだ女性の負担が大きい」

――フィンランドはジェンダー・ギャップ指数で世界2位、国連の幸福度ランキングで5年連続世界一の国として、近年日本でも注目されています。ジェンダーフリー(ジェンダー平等)が進まない日本との違いは、どこにあると思いますか?

堀内さん(以下敬称略) わかりやすい例としては、国会議員の男女比率の違いがあります。フィンランドでは国会議員の約46%が女性です(日本は15.4%)。閣僚も男女で半々。ただ、男女比の数値目標を掲げているわけではありません。男女のバランスは考えますが、今はジェンダーフリーよりもLGBTQなどの多様性のほうに意識が向いています。

――民間におけるジェンダーフリーはどれほど進んでいますか?

堀内 私が通っていた大学では、学長、副学長2人のトップ3人が女性でした。また出産後もキャリアをあきらめずに教授にまでなった女性もいます。

こういった事例は多くありますが、国全体で見ると、企業の取締役の女性割合が3割ちょっとと、フィンランドでも「まだ少ないね」という印象で語られます。管理職で見ても、女性比率はまだ50%に達していません。また、業界によって男女の偏りがあり、プログラマーなどフィンランドでは平均賃金の高い業界に男性が多く、保育士や介護職員などフィンランドでは比較的平均賃金の低い業界に女性が多いという特徴もあります。そのため、同じ職種、役職では男女の給料が一緒でも、国民全体では女性のほうが平均賃金は低くなっています。

――ジェンダーフリーが進んでいる中でも、まだかたよりはあるんですね。フィンランドの人たちは、現状についてどう感じているのでしょう?

堀内 ほかの国よりは進んでいるといっても、「まだまだ」という声は多いですね。確かに子どもの面倒を見る父親は増えました。でも子どもが病気になったときのケアや家事に費やす時間などは、今も女性に集中しがちです。

実はフィンランドも、60年代、70年代ごろまでは、男性が外で働き、女性が家事をするのが当たり前という風潮でした。100年前に書かれたフィンランドの小説を読みましたが、そこでも女性の立場が弱く、対等に見られていない時代だったことがうかがえます。戦後、女性の社会進出が進むにつれ、女性だけでは家事や育児が回らなくなり、父親の育児参加を促進して、保育サービスも充実させていくことになりました。歴史の中でフィンランドも変わってきたのです。

サンナ・マリン首相は「女性」だから注目されているわけではない

――女性首相、サンナ・マリン首相が日本のメディアでもたびたび取り上げられています。フィンランドではどのような評価をされていますか?

堀内 これまでにも女性首相はいたので、女性だからということで注目されているわけではありません。それよりも34才という若さで首相に就いたことで注目されました。発足当時は、連立5与党の党首がすべて女性で、うち4人が35才以下。はじめは年配の人たちから、「こんな若い人たちに政治が務まるの?」といった声もありましたが、ベテラン政治家に比べて劣るという印象はありません。もちろん国民の間で好き嫌いはありますが、女性だから、若いから、という理由ではなく、政治家としてどうかということで見られています。新内閣が発足してすぐにコロナがありましたが、国民の7割がマリン首相の対応を支持していました。

――一方で、マリン首相がコロナ禍でのパーティーで踊る私的な動画がSNSに流出。世界中で報じられましたが、国民はどんな反応を?

堀内 フィンランドの政治家がセレブ的に有名になったことはなかったので、驚いた人が多かったと思います。サンナ・マリンとしてのブランドを確立した、とポジティブに評価をする人もいます。

マリン首相には4才の子どもがいますが、「首相としてどうなんだ」という批判の声はあっても、「子どもを置いて夜遅くまで遊ぶのはどうなんだ」といったことは言われません。たまには祖父母に子どもを預けて、遊んだり旅行したりしてもいいんじゃないか、というのがフィンランドの風潮です。マリン首相は普段から、インスタグラムでジョギングしている様子や、子どもと公園で遊んでいる様子を発信するので、とくに若い世代は親近感をもっているようです。彼女のポリシーに賛同する、しないは別として、自分たちと年齢の近い人物が活躍していることが励みになっているのだと思います。

キッチンを磨く父親の姿に感じるジェンダーフリー

――堀内さんがフィンランドに在住していた時に、現地でジェンダーフリーを感じたエピソードはありますか?

堀内 地方の友人の家に遊びに行ったときのことです。その家はお母さんが料理をする家庭だったのですが、毎日片づけをしてキッチンをピカピカにしているのはお父さんでした。その間、お母さんはテレビを見ながらソファで寝そべっている。そのお父さんは週末にはパンやケーキを焼くこともあるそうです。

フィンランドの男性は、料理好きで家事を積極的にする人も多いです。家の料理を必ずしも女性がやっているわけではないので、「母の味」という考え方も少ないです

――日本との文化の違いに、堀内さん自身がとまどったことはありませんでしたか?

堀内 フィンランドの紹介動画を作る仕事で、日本のテレビ番組のように、男性司会と女性アシスタントを立ててシナリオを作ったんです。するとそれを見たフィンランド人から、「なんで対等にしないの?」と言われて、私も無意識のうちに男女の役割を決めてしまっていたことに気づかされました。

――フィンランド人は多様性に意識が向いているという話もありましたが、どのくらい進んでいますか?

堀内 日本では、広告モデルやテレビドラマなどは、見た目もきれいな人、かっこいい人が起用されることが多いように思いますが、フィンランドでは見た目に関係なく起用されています。太っている人もやせている人も出ています。フィンランドでは出産に際して育児パッケージ(※)というものが支給されますが、そのモデルに障がいがある子が起用されたことも。きれい、かっこいい、ということよりも、「多様である」ということが優先されています。

※フィンランドの母親手当の一つ。出産に際して、1子170ユーロの現金、またはベビーケアアイテムやベビー服などの入った育児パッケージのどちらかの支給を選ぶことができる。

その役割、ママでもいいし、パパでもいい

――日本はフィンランドのどういったところからジェンダーフリーを学んでいくといいと思いますか?

堀内 フィンランドも、マイノリティの人たちが声をあげることで、だんだんと変わっていきました。日本でも、メディアがもっと多様性について取り上げて、私たち自身もそれに気づいてまわりの人たちに紹介することが大事だと思います。いろいろな生き方の前例をたくさん見て、それが許されるという事例を積み重ねていけば、女性の生き方もいろいろあっていい、という考えが広がっていくと思います。

家事、育児、キャリア、すべてを求める人が多いと思いますが、もちろんそれでもいいし、そうじゃない生き方もあっていい。日本でもそういった教育が広がればいいなと思います。多様性の教育が進んでいるフィンランドもまだ途上段階です。教科書の挿絵でママが赤ちゃんを見つめている絵があれば、「これ、パパでもいいんじゃない?」といったふうに話し合いながら進んでいる。フィンランド人も変わっている段階なのです。

お話/堀内都喜子さん 取材・文/香川 誠、たまひよONLINE編集部

フィンランドのジェンダーフリーや多様的な価値観は、最初からあったものではなく、長い時間をかけて徐々に積み重ねてきたもの。世界2位と116位の差はとてつもなく大きいようで、実はちょっと意識や視点を変えてみることで、その差は大きく縮まっていくのかもしれません。

●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

堀内都喜子さん(ほりうちときこ)

PROFILE
長野県生まれ。日本語教師等を経てフィンランド・ユヴァスキュラ大学大学院に留学し、修士号を取得。その後、フィンランド系企業での勤務を経て、現在はフィンランド大使館で広報の仕事に携わる。著書『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書)で「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」でイノベーション部門賞受賞。近著に『フィンランド 幸せのメソッド』も。

フィンランド 幸せのメソッド

2018年から5年連続で「幸福度ランキング世界一」を達成したフィンランド。世界から注目されているフィンランドのジェンダー平等や子育て支援、教育などの仕組みをまとめた1冊。堀内都喜子著/946円(集英社新書)

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