子どもに代わって謝ったら、夫に「なぜ君が謝るの?」と注意されたことも。自立した子どもにするフランス流子育てとは【体験談】
2012年にフランス人の夫と結婚した、レロちひろさん。レロさんには2歳、5歳、7歳の3人の女の子がいますが、子育てについてはフランスと日本では親の姿勢や考え方がだいぶ違うと言います。フランス式育児アドバイザーとして活躍する、レロちひろさんに話を聞きました。
子どもに代わって謝ったら、夫に「なぜ君が謝るの?」と言われたことも
ちひろさんは2012年にフランス人の夫と結婚。2015年11月に第1子となる長女が誕生しています。子どもが生まれて驚いたのは、パパが育児について高い意識を持っていることでした。
「夫は“自立した子どもにするための子育て”という明確な目的を持って、子育てをしています。そのため乳幼児期から、自立を促すようにかかわります。私が、子どもの自立の妨げになるようなかかわり方をすると注意されます。
長女が2歳半ぐらいのとき、家族で公園に遊びに行きました。長女が砂場で、お友だちのお砂場セットを奪って泣かせてしまったんです。
すぐに私が駆け寄って、お友だちに“ごめんね”と謝ったところ、それを見ていた夫が“なぜ君が謝るの? 君が謝って解決してあげたら、娘は自分が悪いことをしたことに気づかないよ! 娘に何がいけないのか教えるべきだよ”と言われました。
夫の考え方に納得し、私も子どもとのかかわり方を変えました」(ちひろさん)
自立を促すために、余計な手出しはNG! 子どもが求めたときだけ手伝う
自立を促すために、フランス人のパパは待つ子育ても徹底しています。
「子どもは靴を履くのに時間がかかるので、私はついつい手を出して手伝ってしまうのですが、それをしたら夫から“手伝っていたら、いつまでも自分で靴が履けないよ”と言われたことがあります。
夫は、子どもから“手伝って”と言われるまでは、ずっと横で見守っています。
せっかちな私からすると考えられないことで、“なぜこんなに気長に待てるのかな?”と疑問に思い、”待つ・観察する”子育てを調べた結果、モンテッソーリ教育に出会いました。
モンテッソーリ教育では“待つ”ということが大切にされています。それをフランス人の夫に伝えたところ、夫は“関係ないよ!”と否定していましたが・・・。ほかにも子どもたちの意見を聞く前に、私が意見を言ってしまったり、子どもたちがするべきことを、私が先回りしてやってあげたりすると注意されることが多いです」(ちひろさん)
幼いころから自分で選ばせるなど、個を尊重してかかわる
フランス人は個を大切にするイメージがありますが、ちひろさんによると、フランス人の夫は幼いころから個を尊重するようなかかわり方をすると言います。
「たとえば靴を買いに行くと、夫は必ず子どもに選ばせて、子どもが選んだ靴を購入します。二者択一で選ばせて、成長に応じて選択肢の幅を広げていきます。以前、長女が3歳のころ“青い靴が欲しい”と言い出して、私は心の中で“えっ! 青い靴? 女の子なのに”と思ったのですが、夫は子どもが選んだ青い靴を買ってあげました。子どもの意見を否定したりしません。
また“どうして、その靴がいいの?”などと質問して、幼いうちから自分の意見を言う習慣をつけるのも、フランスっぽいと思います。
夫もそうですが、フランス人は自分の意見を言ったり、“君はなぜそう思ったの?”など質問することが多いです。こうした環境が、夫の子育て観の土台になっているのでしょう」(ちひろさん)
フランスでのランチ
長女が1歳8カ月のとき、フランスに帰省したときの様子。長女が食べているのは、子ども用のランチメニューです。
ランチメニュー
右上の水色のメニューは8歳ごろまで。右下の深緑のメニューは12歳ごろまでと子どもの年齢を目安に、メニューが分かれています。
また個を大切にするフランスの文化は、食事にも表れているそうです。
「日本では、よく“子どもの食事は大人の取り分け”と言いますが、フランスでは考えられないことだそうです。
夫の兄弟に会いにフランスに行くことがあるのですが、カジュアルなレストランに入っても、ちゃんと子ども用の食事をオーダーします。日本のようなお子さまランチではなくて、大人同様に1品ずつ料理が出てくるコース仕立ての内容になっています。
日本でお子さまランチを見たとき、夫は“食事を楽しむことがメインなのに、おもちゃが付いている”と驚いていました。とんカツ屋さんでも、天ぷら屋さんでも同じようなお子さまランチがあることも驚いていました。とんカツ屋さんなら、子どもが食べられるとんカツのメニューがあるべきだと考えているようで、フランス人の夫には理解できないようです」(ちひろさん)
リビングは家族の憩いの場。おもちゃの出しっ放しはNG
日本とフランスには、子どもがいる家にも大きな違いがあります。
「フランスではリビングは、家族が落ち着いてゆっくり過ごす憩いの場とされていて、リビングに常に子どものおもちゃを置いたりすることはありません。リビングの雰囲気を子どもっぽくすることもありません。
フランスでは、子どもが生まれたらすぐ、できれば妊娠中から子ども部屋を作ることが一般的なので、おもちゃなどは子ども部屋に置いておきます。
もちろんリビングで、子どもが遊ぶことはありますが、おもちゃはかごなどに入れて持ち運ぶようにして、遊び終わったら子ども部屋に持って行きます。小さいころからそうした習慣をつけることで、お片づけができるようになります」(ちひろさん)
お話・写真提供/レロちひろさん 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部
レロちひろさんがフランス流の育児を取り入れるようになったのは、子育てに悩んだ経験からでした。「フランスの育児がすべて正しい訳ではないけれど、もし日本の育児に疑問を感じたり、育児が大変と思ったら、海外の育児に目を向けてみると視野が広がり、解決の糸口が見つかるかもしれない」と言います。またレロさんの夫は「日本の子育て環境にも、いいところがたくさんある! たとえば園の行事などで、学年の壁を越えて交流があるのもその一つ。フランスにはないことです。またフランスにも習い事はあるけれど、日本の学校のクラブ活動や部活のように、学校内で好きなスポーツや音楽などを楽しめる場はフランスにはない」と言います。
●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
レロちひろさん
PROFILE
フランス式育児アドバイザー。2012年にフランス人の夫と結婚。3人の女の子を育てる。会員制のオンラインスクールなどで、フランス式育児の講座を開く。著書『フランス人の赤ちゃんは朝までひとりでぐっすり眠る』(フォレスト出版)は韓国での出版も決定。
『フランス人の赤ちゃんは朝までひとりでぐっすり眠る』
寝かしつけや夜泣きの悩みをフランス流に解決! 親も子どももラクになるフランス式育児の考え方や方法がわかる本。レロちひろ著/1540円(フォレスト出版)