長男が「野球をやりたい」と言ったときは少し複雑な気持ちも。3人の息子たちとの向き合い方【横浜DeNAベイスターズ・大和選手】
親にとって、子どもをどう育てていくか、どう育ってもらいたいのか、ということは、常に考えていることの一つです。それは家族と一緒にいられる時間が限られているプロ野球選手も同じ。3人の男の子の父でもある、横浜DeNAベイスターズの大和選手に、息子さんの教育方針や家庭で話し合っていることについて聞きました。
3人の息子たちは、それぞれ性格が違う
――大和選手には息子さんが3人います。3人目の息子さんが生まれたときは、出産にも立ち会ったとか。
大和選手(以下敬称略) はい。長男と二男が生まれた日は、遠征中で立ち会えなかったんです。どちらも試合が終わって携帯電話を見たら、「生まれたよ」とメールが入っていたような感じです。3人目はたまたまシーズンオフだったので出産に立ち会えましたが、こんなに大変なことなのかと驚きました。それなのに、妻にかけてあげる言葉も見つからず、ひたすら見守ることしかできませんでした。大変さを知って、妻への感謝の気持ちが以前よりも増したように思います。あんなに苦しい思いをさせていたんだ(過去2回も)とわかったことはたいへん貴重な経験でしたが、立ち会いを経験するのは「1回で十分」とも思いました。
――3人の息子さんたちはどんな性格ですか?
大和 長男は真面目なタイプで、なんでもとことんやる。二男は活発でやんちゃ、すぐにどこかに行ってしまって、けがして帰ってくるような…。三男はマイペースでまわりの様子を見ているという感じですね。
子どもには「野球をやって」とは言わない
――親子で野球をすることはあるのでしょうか?
大和 私と子ども合わせて4人で、家の敷地内でも近所の公園でも野球をすることは多いです。子ども用の野球道具のようなものは、小さいうちから渡してはいました。
4人で遊んでいても、下の子から飽きて順番に抜けていきますね。まだ小さいのでいろんなことに興味が移っていくようです。最後まで残る小学低学年の長男は、地元の少年野球チームに入りました。
――本格的に野球をやることになったのは、親子どちら側からの希望ですか?
大和 私からは「野球をやりなさい」とはいっさい言ってはいないです。むしろ、いろんなスポーツに触れてほしいと思っていました。サッカーもやらせてみたことがあります。
それでも長男は野球に興味を持ちました。長男が「野球をやりたい」と言ったときは、自分自身が苦労してきたこともあったので少し複雑な気持ちもありました。ただ、本人がやりたいと言ったことなので、頑張ってもらいたいですし、私も練習にはつき合うようにしています。キャッチボール、ノックは毎日やりたいと言ってきます。
小児期から慢性腎臓病であったことを公表
――2022年12月に、慢性腎臓病であることを公表されました。いつごろから症状があったのでしょうか。
大和 全国の同じ病気に悩んでいる子どもたちに、自分の姿を見てもらいたいという思いもありました。実は私の慢性腎臓病は、病名こそ最近になってわかりましたが、症状は幼少期からずっとありました。病気のことを調べていくと、同じ病気に悩まれている人が多いことを知りました。症状の重さは個人差がありますが、私自身はこうやって、幼少期からスポーツに取り組んで、今もプロでやれています。そのことを、多くの人にメッセージとして届けたいと思いました。
――なぜこの時期だったでしょうか?
大和 もともとは引退するまで公表をしなくてもいいかな、と考えていたのですが、今病気と闘っている人たちにメッセージを届けるためには現役でいるうちのほうがいいのかな、と思い直し、公表しました。私は今35歳で、あと何年現役でいられるかわからない。自分が元気にプレーしている姿を、同じ病気を患っている全国の子どもたちに見てもらいたかったんです。
――普段はどんなことに気をつけているのでしょうか。
大和 塩分量やタンパク質をとりすぎないよう、食事制限はしています。また私はスポーツをやっているので、薬を飲んだときは脱水症状を起こさないように水分をとるようにしています。この病気に治療法はなく、基本的にはよくなることもありません。なので、うまくつき合っていくことが大事になります。
――家族のサポートも必要ですね。
大和 家族もそうですし、チームのスタッフにもサポートしてもらっています。野球ができる環境を作ってくれるまわりの人たちに感謝を忘れないように、1年でも長く現役を続けられるように頑張りたいです。
お話・写真提供/大和選手 取材・文/香川誠、たまひよONLINE編集部
プロ野球選手のパパは、遠征やキャンプなどのため、年間の3分の1しか家にいられません。その分、親子の時間は短く、子どもに直接教えられることは少ないかもしれません。ただ、子どもはそれでも親の背中をよく見ています。息子さんが自然に野球を始めたのも、パパへのあこがれがあったからでしょう。親が知らずしらずのうちに子どもに大きな影響を与えているということを気づかせてくれるエピソードでした。病気の公表は、全国の子どもたちに勇気を与える挑戦。その姿もまた、子どもたちの目に焼きつくはずです。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
大和選手(やまと)
PROFILE
1987年11月5日生まれ、鹿児島県出身。野手。右投げ右打ち。鹿児島県の樟南高校を経て、2005年高校生ドラフト4巡目で阪神タイガースに入団。2017年オフに横浜DeNAベイスターズに入団。2014年にゴールデングラブ賞を受賞するなど守備の名手で、勝負強いバッティングにも定評がある。