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「人間も動物。より良く生きられるように生まれてくる」信じてほしい、子どもの持つチカラ『まちよみ』の著者内田早苗さんにインタビュー

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内田早苗さんと食用バラを育てる横田敬一さん。『きいろいおうちfarm』の「はたけのほんや」の前で

サバサバと、はっきりした口調で、ときには辛辣な言葉を使って話をする内田早苗さん。あるとき、講演会を聞いたママのひとりが内田さんに駆け寄りました。「今日から子どもを叩くのをやめます」。その出会いが今の内田さんの活動へとつながりました。そして今、内田さんの活動は、子育て中のママだけではなく、マタニティ期のママへも広がっています。もっとたくさんの人に自分の想い、考えを伝えて、本当の意味でママたちが楽しく子育てができるような世の中になることをめざしています。

前編の「『マツコの知らない世界』にも出演、絵本講師・内田早苗さんに聞く子育てのコツ「どんなことが起きても、子どものもつ力を信じて、ただひたすら見守ること」に続いて、後編では、「子育てに悩まないためにママたちに心がけてほしいこと」を中心に話を聞きました。

心身の健康を保つためにお金を使うことに罪悪感を覚えない!

――― 子育てに悩まないために、自分自身でできることはありますか?

内田早苗さん(以下内田、敬称略):一つは、ママが心身の健康を損なわないように、しっかり寝ることですね。

そのための手立てを考えたとき、ご主人や近くに親御さんがいて助けてくれればいいんですけれど、難しいママもいますよね。

そんなときは、お金を使ってベビーシッターや託児施設を利用する。具合が悪いときは病院に行く。ママの心身の健康を保つためのお金を惜しんじゃいけないし、お金を使うことに罪悪感をもつことはないんです。貯金がゼロになったら、後でまた働けばいいんだから。

それも難しければ、「子育てが大変で眠れない。このままだと子どもをどうにかしてしまいそうだ」って、福祉に頼るという選択もあります。

そして、ちゃんと寝て、エネルギーが貯まって動けるようになったら、美味しいものを食べる、具合が悪いときは病院に行く。子育てするママの健康が何より一番大事です。

そして忘れがちなのが、ママ自身がきれいでいるために月に一度は美容院に行くこと。体だけじゃなくて、心も健康でいるためには、ママはきれいでいなくちゃダメなの。

妊娠中のママも同じ。心構えができていれば、赤ちゃんを楽しい気持ちで迎えられて、楽しく子育てができるようになりますから。

今はもう「髪を振り乱して子育てをする時代」じゃありませんよ。

人間の子どもも動物。より良く生きられるように生まれてくる

――― 最近、内田さんは妊娠中のママの相談にものっています。

妊娠後期になって本やネットで出産や赤ちゃんのことを調べるといろんな情報や事例にたどりつく。だから、多くのママは、出産が近づいてくると、一気に不安に襲われて、そのうちに赤ちゃんが生まれて、そこから眠れない日々が続いていく。

最近は、ネットやSNSに情報があふれていますからね。基本的にはネットの情報やよその子のことは気にせず、自分の子どもだけ見ていればいいんですけどね。

子どもってもうびっくりするほど賢くて、おもしろくて、すごく強い。親のポテンシャルとはあんまり関係ありませんから、生まれるまでも、生まれてからも、あれこれしなくても大丈夫なんです。

子どもは、自分がより良く生きられるように生まれてきます。だって人間も動物ですから。自分がより良く生きるために必要なものをわかっていて、必要なときに自分から親に要求してくるんです。

――― 親は子どもが望むことだけをすればいいということでしょうか?

そう子どもの望むことです。ただし、「ここまではできる、できない」「できなければお金で解決する」など、自分なりのルールを決めておくことが大切です。

特に、真面目で神経質な人ほど、「好きにしていい」と言われると、どうしていいかわからないので、ルールは必要です。自分で考えたことを自分で決めたとおりにできれば、自信につながりますから。

そして、妊娠中から、心身共に健康でいられるように、ちゃんと寝て、身なりをきれいにする。この二つに貪欲になれさえすれば大抵のことは大丈夫です。

『きいろいおうちfarm』は本来絵本があるべき姿で

広大な敷地、晴れた日には富士山も臨める『きいろいおうちfarm』には絵本がたくさん並んでいます。

――― 内田さんは農業にも関わられています。

神奈川県平塚市の『きいろいおうちfarm』という農園で、無肥料、無農薬の食用バラと野菜を育てています。

食用バラを育てているハウスの中には本棚を作り、私が選んだ約150冊の絵本を並べました。汚れた手で読んでもいいし、地べたに座って読んでもいい。本来絵本はそうあるべきだと思うのです。

『きいろいおうちfarm』にやって来た子どもたちは、自然のなかを駆け回っていたかと思うと、ベンチに座って絵本を手に取って食い入るように読んでいます。その姿を見るママもパパはとても楽しそうです。

『きいろいおうちfarm』を作った一番の理由は、いつもママたちに話している「子どものもつ力を信じて、ただひたすら待っていれば、子どもは必ず育つ」という子育てと、ここで実践しているバラや野菜の本来持っている力だけで育てるという農法がとても似ていたからです。

実際に『きいろいおうちfarm』に来た子どもたちを見ていると、絵本を見ていたかと思うと、いつの間にか農園を走り回っている。絵本に出てくる草花を実際に農園から見つけた子はそのページを開く。大人が働きかけなくても、子どもたちは自分でいろいろな遊びを発見しているんですね。それこそが子どもが本来もっている力なんですね。だから、ママたちも泥だらけになった子どもたちを怒らずにじっと見守ることが大事なんです。

内田早苗さんを訪ねて『きいろいおうちfarm』にお邪魔しました。ハウスの中で無肥料、無農薬で育てられている食用バラ。バラの害虫であるアブラムシを退治するために、その天敵であるテントウムシをハウスに放したそうです。また、ハウスにはバラとピーマンが交互に植わっています。ピーマンに害虫が集まってくることで、バラに寄ってくる害虫が減るというわけ。こんなことをしなくても殺虫剤を使った方が早いじゃない? とつい思ってしまいますが……。化学肥料を使って速く大きくしたい、花を咲かせたい、農薬を使って簡単に害虫を退治したい、というのは私たち人間の都合でしかありません。『きいろいおうちfarm』では、内田さんが言う「子どものもつ力を信じて、ただひたすら待つ」のと同じように、植物の持つ力を信じてただひたすらバラが咲くのを待っています。当然時間もかかりますが、咲いたバラの香りのなんと芳しいこと。これが本来のバラの香りなのかと感動しました。


取材・文/米谷美恵、たまひよ編集部 写真 / 米谷美恵

内田早苗さん

待ちよみ®絵本講師
絵本を使った子育てについて講演する人。
笑って笑って笑ってちょっと泣いて講演会のあとは子育ての重荷が降りて足取りが軽くなると評判。歌うのも手遊びも苦手、でも絵本を読むのは好き。外で絵本を読むのも好きで、自分の絵本屋「はたけのほんや」がものすごく好き。好きなものも多いが嫌いなものも多く、まあまあ毒舌。声も態度も大きい。身体が丈夫でなんでも食べられる。絵本を持ってどこまでも、どこまでも講演に行きます。

『まちよみ・またよみ 絵本を使った子育てのすすめ』(岩崎書店)

「待ちよみ絵本講師」の著者が提案する、絵本を使った子育て法。それは「ただ待つだけ」。親たちの悩みに答えながら方法を紹介。

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