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3児のパパである大学教授が語る「パパが主体的に育児にかかわるために必要なこと」

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●写真はイメージです
west/gettyimages

2022年10月から「出生時育児休業(産後パパ育休)」が始まり、パパの育休がより推奨されるように。ただ、中には「育休を取得しても何をすればいいかわからない」「仕事を休むことで社会から取り残されそうで不安」というパパもいると聞きます。双子を含む3児のパパである東京富士大学経営学部教授・鬼木一直先生は、「育児から学べることは本当にたくさんある」と言います。『パパだからデキる子育て術』著書もある鬼木先生に、パパが主体的に育児にかかわるために必要なことを聞きました。

「ママの手伝いをする」という考え方が、パパの子育てを阻害している

――『パパだからデキる子育て術』を執筆した理由を教えてください

鬼木先生(以下敬称略) 私は経営学部の教授ですが、教育論や幼児教育の研究者でもあります。

近年リモートワークをするパパが増え、以前はあまり育児に携わっていなかったパパたちから、「育児、家事をしたいけど、何をすればいいのかわからない」という声をたくさん聞くようになりました。一方、ママからは「パパが慣れない家事をすると、私の家事のリズムが狂って困る」という話も聞きます。パパが育児・家事に前向きになってきた中で、夫婦で楽しく子育てをしてもらいたいという思いから筆を取りました。 

――とくに思い入れのあるパートはどこですか?

鬼木 あえていうならば、第2章に書いた「(パパは)ママの代わりをしようとしない」でしょうか。
私は「ママの代わりをする」「ママの手伝いをする」という考え方が、パパの子育てを阻害する大きな要因だと考えています。パパは「手伝い」ではなく、「主体的」に育児にかかわる姿勢が非常に大切だと思います。「主体性」とは、自分の考えをもとに責任を持って取り組む力。経済産業省も「社会人基礎力」として重要視しており、ビジネスパーソンとしても伸ばしたいスキルです。

また、第3章に書いた「成功したときではなく、努力して失敗したときに褒めてあげる」も、とても重要だと考えています。ママからパパに対しても、その逆や、親子でも、できた結果ではなく、むしろ頑張ったけどできなかったとき、失敗したときに褒めることで、次の挑戦に結びつくと感じています。

パパが家事に主体的になるには、「協働」意識が大切

――「パパが育児に主体的にかかわる姿勢が大切」とのことですが、どうすればパパは主体的になれるでしょうか?

鬼木 育児・家事を「協働(きょうどう)」する意識に変えることが非常に大切だと私は思います。パパが「本来はママのタスクである育児・家事を手伝う」という意識だと、主体的に取り組めず、結果、ママ・パパそれぞれに不満がたまっていきます。

私が考える、パパが育児に主体的になるためのポイントは3つあります。

【ポイント1】「ゴール」を共有する

あるとき、私が洗い物をしたら、妻が不満そうなときがありました。一方の私も、妻が何に不満なのかわからず、ストレスを感じていました。話し合ってみると、妻は、私が洗い物をしたあとにキッチンに水しぶきが飛んでいることや、皿を同じ方向に並べていないことが嫌だったことがわかりました。お互いのストレスの原因は、それぞれの「ゴール」が違っていたことだったんです。私のゴールは「食器を洗って、しまう」ですが、妻のゴールは「食器を洗い、水しぶきをふき、皿を同じ方向に並べて、しまう」。このズレに気がつかなかったんです。

このようなズレを生まないために、まずは、夫婦で「どうしたい」「どうして欲しい」のかを話し合い、ゴールを共有してほしいと思います。

【ポイント2】やり方を押しつけず、「協働」する

ママが「パパは〇〇係ね。このやり方でやって」とママの手順を押しつけると、パパは「やらされている」と感じたり、思考停止に陥りがちです。そこで、前述の「ゴール」に向かって、「協働」することを意識してみてください。ここで重要なのは、ママはパパに「やり方を任せる」ということ。すると、パパは「もっといい手順はないか」などと自分で考えるようになり、主体性とやりがいがどんどん高まっていくと思います。
パパはママと同じやり方でやろうとするのではなく、夫婦でよりよい方法を一緒に考えることが大切です。それが、「協働」の本質といえるのです。

【ポイント3】夫婦でねぎらい合い、褒め合う

ママは、パパが頑張ったら「ありがとう」、そして具体的にここが良かったという言葉がけをしてあげてください。パパは大きなやりがいを感じ、ますます主体的になるでしょう。
パパもママに対して、「ありがとう」「頑張っているね」「すごいね」などと言葉にして伝え、お互いにねぎらい合うことで、よりよい関係性が築けると思います。

子どもの発想には、ビジネススキルを養うヒントがいっぱい

――鬼木先生が育児をすることで養われたと感じるビジネススキルはありますか?

鬼木 先入観を持たずに自由に遊ぶ子どもから、仕事のアイデアをもらっています。遊んでいる子どもをよくよく観察してみてください。「こんなおもちゃの使い方があるんだ」「アリの行動をそんな視点で見ているんだ」「砂場で砂をずっといじっているのは、粒子の感触を味わっているんだ」などと、感心することがよくあります。

実際に、子どもの絵の書き方から特許を思いついたことがあります。子どもが、三角、四角、丸などの図形を自由に書き足していたのですが、最終的には全体のバランスが整っていくんです。その頃、私は光電モジュールの開発で行き詰っていました。しかし、個々の部品の配置をもっと自由に並べても、最終的に機能すればいいということに気がつき、課題をクリアすることができたのです。
逆に、育児・家事にビジネス視点を取り入れることでよりいい方法が見つかり、楽しくなることもあると思います。

仕事で「どうしたら効率よくできるか」「どうしたら売れるか」と考えるように、育児・家事も思考を止めずに、自分なりのやり方を考えることは、自分の成長につながります。育児は、親も子どもと一緒に成長できるチャンスです。

パパの育休取得が当たり前になるといいなと思います

――少子化が進んでいるといわれていますが、今後日本の子育てにとって必要なことは何だと思いますか?

鬼木 子育てにはお金と時間が必要です。とくに、教育費が大きな負担となっていると感じます。文科省が発表した2022年度の大学進学率は過去最高の56.6%と半数以上が大学に進学する時代です。私は、少なくとも、高校までの教育費は国で負担できる体制が必要だと思います。

また、パパが育休を取得することも大切です。

育休の制度は整っていても、会社の雰囲気、上司の考え方などによって、まだまだ取得しにくい状況にあります。制度だけではなく、パパが育休を取りやすくする仕組みを、社会全体で作っていけたらいいと思います。

パパが育休制度をしっかり使って、少なくとも産後1カ月は、ママがゆっくりできる環境を整えてあげることが理想だと思います。産後のママは体が消耗しているだけでなく、ホルモンバランスが崩れて精神的にとても不安定です。「無理しないでね」「大丈夫だよ」というちょっとした声がけで、ママの気持ちが楽になると思うんです。パパはママの体を労り、心のケアもしてあげてください。
そして、会社としては急に休まれても困りますので、パートナーが妊娠したらその状況を職場に伝え、周囲に理解してもらうことが大切です。これから子どもが産まれるパパが育休を少しでも活用することが、今後パパの育休取得が当たり前な社会になるためのスタートだと思います。

パパの育休が当たり前になるためには、私たち一人ひとりの意識改革が重要です。私は、学生時代から今までで世界110カ国あまりを巡った経験がありますが、日本人男性の育児参加は世界的にみるとかなり遅れていると感じています。たとえば、私が子どもの保護者会に出席すると、パパは私だけということも少なくありません。海外では保護者会にパパが参加するのが一般的だという国も多いのです。
日本の常識が世界の常識ではありません。常識を疑って、パパが育休を取得できる土台を作っていきましょう。

お話・監修/鬼木一直先生 取材・文/大部陽子、たまひよONLINE編集部

「子どもと同じ目線で、いろいろなことを一緒に考えてみましょう。子どもの発想力がびっくりするほど高いことに気づかされるはずです」と鬼木先生。「育児は育自」ともよくいわれます。子どもを育てながら、親も育児をヒントにビジネススキルを磨けると考えてもいいかもしれません。

鬼木一直先生(おにきかずなお)

PROFILE
東京富士大学経営学部教授。教育論、幼児教育研究者。3児の父。東京工業大学理学部応用物理学科卒業後、同大学修士課程理工学研究科修了。ソニーで数多くの開発に携わり、その間出願した特許件数は43件。2014年にソニーを退職し、17年から現職。社会人基礎力を高める実践教育を積極的に推進している。 著書に『パパだからデキる子育て術~元ソニー開発マネージャが教えるはじめてでも楽しい育児の秘訣71~』『デキる社会人になる子育て術~元ソニー開発マネージャが教える社会へ踏み出す力の伸ばし方~』など。


●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

『パパだからデキる子育て術~元ソニー開発マネージャが教えるはじめてでも楽しい育児の秘訣71~』

「子どもの能力を大人が奪っている!?」。がん・難病と闘いながら双子を含む3児を育てた著者による、パパ視点の子育て本。元ソニー開発マネージャで、大学教授でもある著者が、体系立てて実践的に語る。鬼木一直著/880円(幻冬舎)

書籍紹介サイト

『デキる社会人になる子育て術~元ソニー開発マネージャが教える社会へ踏み出す力の伸ばし方』

双子を含む3児の父であり、元ソニー開発マネージャの著者による子育て本。「社会人基礎力」として経済産業省が提唱する、前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力が身につき、子どもの可能性を最高に伸ばす家庭教育メソッドを大公開。鬼木一直著/880円(幻冬舎)

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