「もしかして不適切保育かも?」入園後、保育士さんに不安を感じたら…どうすればいい?【専門家監修】
新しく始まった保育園生活。最初はなかなか保育園に慣れず、「預けるときに大泣きされて困る」という声もよく聞きます。虐待で保育士が逮捕される事件もあり、いわゆる「不適切保育」について不安を感じるママ・パパもいるのではないでしょうか。「不適切保育」とまでではなくても、保育士の行いに違和感があるときはどう対処するといいのでしょうか。「保育園を考える親の会」顧問の普光院亜紀さんに聞きました。
「子どもが保育園に行きたがらない!」困ったら、保育園に相談するといいでしょう
親子ともに気に入った保育園に入園を決めたとしても、実際に通園してみないとわからないことがあります。いわゆる「保活激戦区」では希望通りの園に入園できないこともあるでしょう。親の困りごととしてよくあるのは、入園後、子どもが保育園に行きたがらないケースです。
「子どもが保育園に行きたがらない理由はさまざまです。子どもをよく観察してみましょう。
入園して間もない場合は、行きたがらないことがよくあります。ママやパパと離れて寂しいということや、まだお友だちの輪に入れないということもあるでしょう。この場合は、慣れれば解決することがほとんどです」(普光院さん)
虐待事件として保育士が逮捕された事件以降、報道などで「不適切保育」という言葉を目にすることが増えました。子どもが保育園に行きたがらないと「もしかして不適切な保育があったのでは」と心配になる保護者もいるようです。
「問題のある保育園はごく一部なので、過剰に心配することはありませんが、もしも保育士におびえているように見えたら、気をつけて様子を見ましょう。
ただ、私が聞いた例では、“保育士本人”でなく、“保育士がしたこわい話”におびえていた、というケースもあり、何におびえているのかは判断が難しいところ。
子どもが保育園に行きたがらず、気になることがあれば、まずは保育士や園長に相談してみるといいでしょう」(普光院さん)
保育園に相談をするときは、どんなことに気をつけるといいのでしょうか。
「いきなり苦情を言うというのではなく、子どものためにどうすればいいか、一緒に解決策を模索するというスタンスで話し合うことが望ましいと思います。
もし、もめそうになっても、相手の言葉じりを挙げて糾弾するのではなく、『これはこういう意味ですか?』と相手の意図を確認しながら話す姿勢はとても大切だと思います」(普光院さん)
普段から保護者間の横のつながりを持っておくことも重要
はっきりした理由があるときは相談しやすいですが、「保育士の行いに違和感がある」というくらいでは言い出しにくいこともあります。
「遠慮なく相談していいと思います。『うちの子が保育園に行きたくないって言っていて・・・。何か保育園で気になる様子はありますか』など、子どもの様子や自分の不安を伝えて心配事を相談する、という感じで話せば、保育士側も受け入れやすいし、いろいろ情報を出しやすいと思います。担任に相談しにくい場合は、園長や主任に声をかけてみてください」(普光院さん)
保育士の行いに違和感がある一方、客観的に見ると「もしかしてこう思うのは自分だけ?」と思うこともあるかもしれません。
「ほかの保護者がどう感じているのかも聞いてみるといいでしょう。私もいろいろな相談を受けるのですが、相談者の主観だけでは判断できないことがあります。
保育園になんらかの働きかけをするにしても、一人だけでなく同じように思っている人が複数いるというのは心強いですよね。
普段から保護者間のつながりはできるだけ持っておいたほうがいいでしょう。
保護者懇談会や行事など、顔を合わせられる機会にクラスの保護者と面識をつくっておくのがおすすめです。父母会があれば参加することが望ましいですが、なければクラスの連絡用チャットグループなどをつくるだけでもいいと思います」(普光院さん)
一時はコロナ禍の影響もあり、保育園の保護者懇親会や行事が縮小傾向にありました。現在はだいぶ緩和されてきているので、機会があれば保護者同士で交流が持てるといいでしょう。
不満をためこむのは、結果的に子どもにマイナス
「子どもの預け先がほかにないので、意見を言いづらい」「親が保育園に不満を訴えると、子どもに何かされないか心配」などの理由で、保育園に意見を言えない、相談できないという保護者もいるようです。
「気になっていることを解決できないまま我慢していると不満がたまりやすく、子どもにとってもマイナスでしかありません。
また、何の相談もしないで転園を考えるのもおすすめできません。ほかにも困っている子がいるかもしれません。
思いきって相談したら保育士との関係がよくなったという例もあります。逆に、相談しても園の側が誠実に対応してくれず、不信感が募る場合は、自治体の担当窓口にも相談してみてください。保育の質は、自治体にも責任があります。転園という選択肢もありです。ただし、転園先の保育の質もしっかり見極める必要があります」(普光院さん)
ほかに保護者はどんなことに気をつけたらいいでしょうか。
「子どものためにどうしたらいいかを、保育園とともに保護者にも考えてほしいと思います。
保育園を“預かりサービス”と見なして保護者が『お客様』になってしまうのではなく、『ともに育てる』パートナーの関係をめざしたほうがうまくいきます。ときには、保育士が保育をスムーズにできるように協力することも必要です。たとえば、記名が必要なものには忘れずに名前を書くなど、保育園ごとの基本的なルールを守ることで保育士の負担を減らすことができます。
保育園と保護者が、子どもの健やかな育ちのために協力し合う関係が、質のいい保育のベースになると思います」(普光院さん)
監修/普光院亜紀さん 取材協力/保育園を考える親の会 取材・文/岩崎 緑、たまひよONLINE編集部
困ったことや気になることがあれば、保育園に相談を。同じ話をするにしても、「相談する」姿勢と「苦情を訴える」やり方では、受け取る側である保育士の気持ちも大きく違うでしょう。いわゆる「不適切保育」のニュースを目にすることもありますが、一般的には問題のある園が多いわけではありません。保護者は保育士を尊重し、困ったことがあれば相談をして、子どものための解決策を一緒に探していけるといいでしょう。
●記事の内容は2023年4月の情報であり、現在と異なる場合があります。