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子どもの学びを促す「冒険モード」の芽を伸ばすために、幼児期からできることとは?【俳優・加藤貴子が専門家に聞く】

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8歳と5歳の2人の男の子を育てる俳優の加藤貴子さん。子どもが自分で決めたことをやらなかったとき、つい「自分で決めたのになんでやらないの!」としかってしまうことがあるそうです。そんなとき子どもにどう伝えたらいいか、臨床心理士・公認心理師の村中直人先生が、アドバイスをしてくれました。加藤さんが育児にかかわる悩みや気になることについて専門家に聞く連載第16回です。

自分で決めたことも三日坊主で続かないときはどうすればいい?

加藤さん(以下敬称略) 前回先生には子どもが家庭のルールや約束を守らないとき、宿題をやらないとき、しかることは子どもの学びにはならないと教えていただきました。では、親はどういう方法を採ればいいんでしょうか?私は、子どもに「宿題をやりたくないなら出さなくてもいいんじゃない?先生に正直にやりたくなかったって話せば?」と言ったりもするんですが・・・。

村中先生(以下敬称略) 子どもが学び成長するのは、興味を持ってワクワクしながらチャレンジしているときです。私はそれを「冒険モード」と言っています。日常生活の中でも、子どもの小さな冒険モードの芽を伸ばすことができるはずです。そのために親がすべきなのは、子どもが「自分で決める」を促すこと。

加藤さんが「宿題を出さなくてもいいよ」と言ったのはすごくいいと思います。もう一歩踏み込んで、「宿題を出すか出さないかは、あなたと学校の関係だからあなたが決めていいんだよ」と話していいと思っています。
私は息子に「学校の宿題をするかしないかは自分で決めていいよ。でもすると決めたら責任を持ちなさい」と伝えています。そして「もし宿題をしないと決めるなら、お父さんはあなたの決断を応援してサポートするよ」と。結局息子は宿題をすると決めたようです。「宿題をやりなさい」と親が決めるのではなく、やるかどうかを子どもが決めて親がそのサポートをする、この順番が大事だと思います。

加藤 「宿題をしない」と言ったらどうしよう、と思いませんでしたか?

村中 正直、学校の先生からしたら児童の親に「うちの子が宿題しないと決めました」と言われたら困るだろうなと思いました(笑)。だからできれば避けたいなという気持ちもありつつ、でも息子がそれを選ぶならいいかなと思っていました。

「10回全部じゃなくて、その中で5回できたらOK」と、成功確率で考える

加藤 子どもが自分で決めたことでも、やらないこともありますよね。そういうとき、つい「ほらまたさぼった」とか「自分で決めた責任を取りなさい」と言ってしまうんです。

村中 そうですね。自分で決めたことをやらない場合、それがやらないのかできないのかを冷静に見極める必要があります。小さい子どもの場合はとくに、子ども自身ができると思って決めてもやってみたらできないことはよくあると思います。できるはずなのにやらなかったなら「自分で言ったことをなんでやらないの」としかりたくなります。でも、そもそもできないならしかっても意味がないですよね。できない場合には、子どもが決めたことはどうやったらできるようになるか、親子で考えればいいわけです。

このように問題が起きる前の段階で、どんな準備ができるか親子で考えることを、私は「前さばき」と呼んでいます。逆に何かが起こったあとにする行為を「後さばき」と呼んでいます。

加藤 やらないのかできないのかを見極めるのも難しいです。以前、朝8時に学校に行くために7時に起きよう、と子どもが自分で帰宅してから就寝までの計画表を書いたことがありました。やってみて1日2日はできたけど、3日目からはつらくなって、その後まったくやらなくなりました。続かなければ、できないこととみなしたほうがいいんですか?

村中 子どもの「できる・できない」は成功確率何%かというとらえ方をしてみるといいかもしれません。たとえば「朝7時に起きる」と計画を立てるとき、2週間の期間を設ければ、平日の朝に10回のチャンスがあります。10回のうち何回できそうかな、という成功確率で考えてみましょう。この予測する力も前さばきになります。

「子どもに10回のうち何回くらいできそう?」と聞いてみて、「半分できると思う」と言ったら5回の成功を目標にしてみます。息子さんは2回に1回は失敗してもいいことを保証されているし、2週間のうちにできない日があったとしても、取りあえず2週間は加藤さんはしからずにいられますね。

2週間たって、もし3日しかできなかったとしたら予想以下です。10回のうち予測は50%だったけど、実際の成功確率は30%だった。そしたらこの計画のどこに問題があったんだろう?と一緒に考えるんです。「50%できるようにするには計画のどこをどう変えたらいいと思う?」と話し合ってみましょう。

加藤 たしかに!今までは2〜3日頑張ってできなくなると心が折れて、やる気すらなくなってしまっていました。モチベーションがガクンと下がってやらなくなってしまっていました。

村中 結果として8時に登校できるようになればいいから、「朝7時に起きる」計画が絶対的なやり方でもないですよね。自分なら8時に登校するためにどういうやり方があるかを自分で考えてみよう、と。
でも、自分で考えて決めることって意外と難しいですよね。

今日食べるおやつを自分で決めることからでもOK

加藤 まさにうちの息子たちは、自分で決めて実行することってゲームくらいかもしれません。朝起きる計画のことも「どうしたらいいか一緒に考えよう」と提案しても「自分はどうせできないから」と話し合いにもならなくて、困っていました。

村中 自分で考えて決めて、決めたことを大人から尊重される体験を繰り返していない子どもが、急に「自分で考えて決めていいよ」と言われても、どうしたらいいかわからないことがあります。

だから、日常のできるだけ小さなことを子どもが自分で考えて決めて、決めたことを大人が尊重する経験を繰り返せるといいと思います。幼稚園児くらいの年齢なら「ハンカチとティッシュを忘れないようにするにはどこに入れる?」とか、「家に帰ってきたらお弁当箱を出せるようにするにはどうしようか」とか。おやつを決めるのもいいですね。「クッキーとポテトチップスがあるけどグミが食べたいなら買いに行かないといけない。この三つの選択肢でどれがいい?」と聞いて、子どもが決めたおやつを一緒に食べて「みんなで食べたらおいしいね」といった、こんな小さいことでOK。子どもができそうなことを一緒に考えてサポートしてみましょう。

自分で考えて決めて尊重される、この繰り返しの体験を積み重ねると、やがて朝どうやったら8時に学校に行かれるようになるか考えるときに、自分で方法を考え、失敗したら別の案を試してみる、といった考え方が身につくはずです。

加藤 子どもをしかる前にできることがいろいろとあるんですね。おやつを決めるくらいのことなら、小さい子でも始めやすいですね。先生のお話を聞いて、私は息子たちに注意するときにいつも後さばきだったなぁ、と気づきました。問題が起こったあとに、そういえばこれも伝えないと、ってどんどん尾ひれがついてしまっていました。

村中 加藤さんに限らず「うちの子、何回言ってもわからないんです」という人は多いです。そういう場合、いつどんなタイミングで子どもに注意をしているか聞いてみると、後さばきのことが多い。私自身も子育てに悩む1人の父親ですから、後さばきしてしまっていることはあります。

今、わが家で取り入れていておすすめしたいのは、家族会議です。問題があってもなくても、家族で定期的に集まって、親子平等に議題と意見を出して、家族みんなで物事を決める。家族会議が機能するようになると、「おこづかいの値上げ」とか「ゲームの時間を長くしたい」とか、子どもから議題が上がるようになります。会議の結果、必ずしも希望がかなうかどうかはわかりませんが、親が議題としてちゃんと取り扱ってくれる、自分の話を聞いてくれるという信頼を築くことができます。これが、子どもが自分で決めてそれが尊重される経験を繰り返す近道だと思っています。

お話/加藤貴子さん、村中直人先生

監修/村中直人先生

撮影/山田秀隆 取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

子どもが自分で決めたことを行動するときに、成功確率で考える方法に「それなら親子でチャレンジできそう」と加藤さん。子どもの冒険モードをうまく見つけ、伸ばす手助けができれば、いろんなことに挑戦するきっかけになるかもしれません。

●記事の内容は2023年6月の記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

加藤貴子さん(かとうたかこ)

PROFILE
1970年生まれ。1990年に芸能界デビューして以降、数々の作品に出演。代表作として『温泉へ行こう』シリーズ(TBS系)、『新・科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『花より男子』(TBS系)などがある。

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